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誰でも技術書の著者にはなれる

2010年: いつか技術書を書いてみたい

プログラマになる前、「本を書く」というのは自分とは関係ない「どこか遠い世界の話」のように思っていました。本を「書く」のはどこか違う世界に住む人々がやることであって、本は「買う」ものであると。ただ自分も本屋に並ぶ本の著者になれたらかっこいいなぁ、という「漠然とした憧れ」は持っていた気がします。

ところがプログラマに転身してWEB系企業に転職してみると、なんとまぁ、書籍執筆経験のある人の多いこと。本を書くことが違う世界で起きている非現実的なことではなく、すぐ近くで起きている「現実的な憧れ」に変わりました。

しかし、自分は30過ぎてプログラマデビューしたばかりの、技術力も経験もない、うだつの上がらないプログラマ。有名でもないし、本の執筆が舞い込むようなインパクトのある実績も特にありません。いつかは自分も、とは思うものの、それは「いつか」でしかありませんでした。

2011年: 会社の広報に「本を書きたいです」とメール

ある日ふとこう考えるようになりました。自分に技術書の著者になるほどのネームバリューがないからこそ、技術界隈でも名の知れている会社の看板の力を借りるべきなんじゃないの、と。

そうとなったら善は急げ、ということで、今の自分にも書けそうな企画として(当時まだあまり出揃っていなかった)iOS関連のライブラリカタログ本的な企画を考え、会社の広報に「本を書きたいので、出版社に繋げてもらえませんか」という趣旨のメールを送りました(当時実際に送ったメールの下書きを本記事の末尾で公開しています)。

ビジュアルがあったほうが伝わるだろう、と考え、本の紙面アイデアも添付しました。

(当時作成した紙面アイデア画像)

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もちろん自分で紙面デザインをするような高度なスキルは持ち合わせていないので、こちらの書籍の紙面をベースに、Macにデフォルトで入っている「プレビュー.app」で線や文字を切り貼りして作成しました。

2012年: Web連載開始

Ccに入れていたエースエンジニア陣から、いきなり紙の書籍の執筆は時間もかかるし書き上げる難易度も高いので、Web連載から始めるといいのでは、という意見をもらいました。ごもっとも。

その広報の繋がりで、技術評論社(gihyo.jp)の方に会うことになりました。

先の書籍のアイデアを連載用に練り直し、全6回の連載企画案(各回毎に違うテーマを設定し、お役立ちライブラリを紹介する)をつくって会食の場に持っていきました。

無事「いいですね、やりましょう!」とご快諾いただき、連載決定。1回1回、通常業務を終えた後に何日も徹夜してめちゃくちゃがんばって調べまくっては書いてました。会社の看板ありきの連載なので原稿料は自分には入らないし、残業代が出るわけでもないのですが、「Web連載」という新しい実績を獲得できると思うとそれが十分な報酬でした。

2013年: 出版社から技術書を出版

ブログでのアウトプットも続けていました。当時、ちょうどQiitaが出てきた頃で、自分が今までに書いた技術記事を100本まとめた記事を書いたらはてブのホットエントリー入りする程バズりました。自分のブログは全然有名でも人気でもなかったので、確かホットエントリーはこのときが初でした。

それを見た出版社の方より本を書きませんかと連絡をいただき、全力で書きたいですと答え、以前から温めていた企画案を提示しました。このへんは先の連載での経験が大いに活きたところだと思います。

無事その案が出版社の企画会議で承認され、2013年5月吉日、晴れて自分も技術書の著者になることができたのでした。

まとめ

タイトルは少々言い過ぎ感はありますが、本の著者になりたいという憧れを、まだ自分の技術力や実績が物足りない頃からアクションを起こし、数年越しでかなえることができた、という経験談を書きました。

まぁ書いてみて思いましたが自分で企画書を書いて広報にメールしたことと、最後に出版社の方から声をかけていただいたこととは明確な因果関係はありません。最終的に出版社の方から連絡がきたのは完全に「運」です。が、「人事を尽くして天命を待つ」というように、
・実力がないなりに書けそうな企画を考える
・自分からメールしてメディアの方につないでもらう
・技術ブログを地道に書き続ける
こういった行動の積み重ねによってその「運」の確度が高まっていったのも確かかと思います。

紙面案の画像を見て、「こんなのでいいのかw」と思われた方も多いかも知れません。広報にメールすることも、技術ブログを書くことも、ひとつひとつの行動に目を向ければスーパープログラマにしかできないようなことはひとつもありません。そう、一見自分には手の届かなそうなことでも、案外「こんなことでいいのか」程度の行動の積み重ねで実現できたりするものです。そういうことがこの経験談から伝わって、誰かの背中を押せたらいいなと思い、本記事を書きました。

付録:広報にメールを出す前に書いた下書き

今期、技術書を書いてどこかの出版社に寄稿したいと考えています。
で、今自分が考えているようなことが可能性があるのかどうか、
カヤックでの出版に数々携わっている◯◯さんにまずは相談してみようということでメールしてみました。

【考えている内容】
オープンソースのiOS用フレームワーク/ライブラリ/カテゴリ/サンプルコードを紹介する
(注:カテゴリというのはObjective-Cの機能で、既存のクラスを拡張することができるものです)

【紙面のイメージ】(添付画像)
・見開き2ページで1つずつライブラリを紹介していくイメージです
・UI/アニメーション/通信/メディア(音声とか画像とか動画とか)/データベース とかで分類
・紹介内容は、どんなライブラリか、そのライブラリを使用することによってどんなメリットがあるか、中身のソースコードについての解説等
・ライセンスや対応iOSバージョン、必要なフレームワークについても記述

【この本の価値】
・Objective-Cはライブラリやクラスの流用がしやすいわりにまとまったライブラリ情報は少なく、車輪の再開発が目立つ。
・gitHubやappleのdev center、個人サイトなど所在がバラバラなので、なかなか検索だけでオンタイムに欲しいライブラリやサンプルコードを見つけることはできない。
・githubやappleのdev centerは、サンプルを実行したスクリーンショットがないのでビルドしてみるまで実際にどういうコードなのかわからない。特にUIライブラリとかならスクショ見るまで有用性が判断できない。本ならパラパラとめくってよさげなのをさがすことができる。・そのプロジェクト自体に価値はなくても、中のひとつのクラスが有用だったりもする。そういうのは探そうと思って探せるものではない
・少なくとも日本語ではまだこういう本はない(知る限りでは英語でもない)

【ターゲット】
・中級者以上のiOSアプリケーション開発者

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