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花見〜騙されたと思って〜


生まれてこの方、ずっとインドア人生を送ってきた。
物心つくまえからファミコンで仮名文字と音楽の基礎を学び、なかなかアウトドアの恩恵を受けずにここまで歳を取ってきた。

「疲れたとき/病んだときは自然に触れるといいよ」という声を何度と無く聞いてきた。確かに、ふっ軽なときにそういうスポットに駆り出しては魅せられる景観や自然が持つ”呼吸”は圧巻なのだが、必ずしもそうでないとき、人生のスランプに陥ってるときは同じような効き目があるかどうかは猜疑心があった。

ある日、ドキュメント番組で福井県の伝統工芸「越前和紙」の紙漉きを追うという内容があって、普段そういうもに傾倒がない俺がなぜか2時間弱もの番組をじーーっと見入っていた。
そこには、長年インドア少年を続けてきた俺に足りない「これか!?」感が顔を出したり引っ込めたりしていた。
伝統工芸の紙漉き。悠久の時間をつかって古来から受け継がれ、「そこにしかない」ものを生み出す神聖とも言える工程。
それは今の俺が心を鎮めるために必要な「時間に囚われず」「競い合わず」「奪い合わず」の神髄でもあった。

その時、「疲れたとき/病んだときは自然に触れるといいよ」という圧倒的多数の声を少しだけ体得したような気がするんだ。自然が持つのはまさに「時間に囚われず」「競い合わず」「奪い合わず」の精神だ。

ふと思い立って、長年久しかった花見をすることにした。けして誰かとじゃれ合ったり騒いだり食ったり呑んだりのためじゃない。騙されたと思って少し自然の中に身を置いてみることにしたんだ。
若干の湿気とともに土の匂い、草の匂い、花の移ろいやらがゆっくりと鼻腔から胃に落ちてくる。

「たまにはいいかもな。」
アウトドア免疫のない俺にはこれくらいの感想が上々だろう。
季節的にも自転車行動に適する時期になった。
だいぶボロくて時々キーキー鳴る自転車なんだが、それは俺もお互い様だと思って今のネグラに越してきたからずっと使っている。
もう少し、夜も全くコートがいらなくなれば…そういう季節はもう目の前に迫ってきているだろう。

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