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田中畔道|歴史と創作
2022年10月12日 13:08
与五郎の細い目は、周囲の客と同様、舞台上の洋装に身を固めた男の手先に向いている。ただひとつ違うのは、客たちがその手先から繰り出される華麗な手妻に感嘆の声をもらしているのに対し、与五郎の表情はいかにも無感動で、声ひとつ上げず、腕を組んだまま石のように動かないことだった。与五郎の左横には、丹後縮緬の小袖に身を包んだ若い娘が座っている。着物には桔梗の花をかたどった小竹藩の家紋が入っている。その身