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フォトショートストーリー「夏の終わりに、流れる雲と…」


夏の終わりに仰ぎ見た、あの雲の先には誰かがまっているのかなぁ。
行かないでと切に願っても、季節は巡りゆく。
夏はまた来るはずなのに、あなたとは四角い画面の中で朝のおはようと、明日を送るおやすみなさい。


形を変え、去っていく雲が姿をけして消えてしまっても、女心と秋の空、なんて言って心変わりはしないからせめて夢の中だけでも、と今は夜空を仰ぐ。

ねぇ、聞いて?あの曲がり角の商店取り壊されるんだって。
流れる時間は思い出も流してしまうのかしら。あの四つ角を曲がった定食屋さんの隣のソフトクリーム屋さんは同級生のあの子のおばあちゃんがいつも笑顔でおまけを渡してくれた。

この世界に変わらないものって、あるのかな。怖くなってしまうくらいに、世界は加速しているように見えるけれど。あなたも遠くで、わたしもここで、天国のソフトクリーム屋さんのあのおばあちゃんがくれたような優しくってあったかくて誰かを思いやるこの気持ちは、夏の終わりの雲に想いを乗せて世界を包んでくれたらいいのにな。


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