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野田祥久郎
2018年7月1日 13:17
窓辺に置いた花瓶が西陽に透ける頃。いつも君はそっと水を注いでいた。僕は床の上に出鱈目に積み重なった文庫本を手に取ると、なぜだか井上陽水の「少年時代」をいつも口ずさんでいた。たいして読む気のないその本を1ページづつめくりながら、君の髪の端が綺麗に光っているのを眺めるのが好きだった。