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パラレルライン

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#詩

パラレルライン「5」

パラレルライン「5」

 新緑の頂きにまだ雫が残る季節、ぼくは愛車のハーレーで少しだけ北を目指した。一般道から高速道路に入り、後は道なりに進んで行く。この季節のバイクは最高に気持ちが良い。新しく宿した命の香りが、夏を迎える前の風を連れて、肌にその息吹を感じさせる。
 
 この一ヶ月ほど岩瀬から連絡はなかった。じめじめした季節だ。電線を見上げることも出来なかっただろう。ぼくは携帯のディスプレイを毎日確認しては閉じた。彼女か

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パラレルライン「4」

パラレルライン「4」

 一ヶ月程経ったある日、夕食の食材を買い揃えて家に帰り着いたとき、岩瀬から電話があった。
「なにしてるの?」
「食事を作ろうかなと思ってるところだよ」ぼくは答えた。
 彼女はそれを聞くと気を遣った口調で、一緒に飲まないかともちかけ、ぼくは少しだけ考えて承諾した。散歩をしているときに良さそうなバーを見つけて、一人で行くのもなんだか気乗りしないので、ぼくを誘ったそうだ。食材を冷蔵庫に入れ、指定された場

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パラレルライン「3」

パラレルライン「3」

クローゼットから取り出したくたびれた黒のスーツに袖を通す。アイロンを掛けて皺を取れば良いものの、結局一日終わればまた皺になるのだから、要らぬ労力を使いたくなかった。それに、これから赤の他人の披露宴に参列するわけで、ぼくに気を留める人なんていないと思ったからだ。上着のポケットから小さく三つ折りにされた前回の席次表を取り出して広げて見る。出席者は百名ほどだが面識のある人間はいなかった。唯一同じテーブル

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パラレルライン「2」

パラレルライン「2」

 ぼくたちはバーカウンターの高い椅子に座っていた。
 ウイスキーグラスの氷は半分解けたところで、彼女はグラスの氷を人差し指で転がしながらその中を見ている。丸く滑らかな氷は白熱灯に反射していた。

「なにしてるの?」ぼくは聞いた。
「光の反射を見ているのよ」
「光の反射?」
「そう」彼女は一言つぶやく。
「白熱灯の光が氷に反射するでしょ? 氷の表面を指で変えればまた新しい光が反射する。同じ氷なのに光

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パラレルライン

パラレルライン

世界のどこかで起こっている出来事に耳を傾けてみても、聞こえてくるのは虚構にも似た音ばかりで、日常はうねるように空間を振動させて、ぼくの鼓膜に一定のリズムで届く。目に映るものだってもちろん同じだ。息苦しさは感じない、それは現代の御伽話のように語り、ぼくは朝の支度やアルバイト先の休憩室、夜ベッドに入ったあとに携帯ゲームで遊びながら、無意識に情報をインプットしては淡く溶け出す意識と呼応する。
 
 大き

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