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パラレルライン

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パラレルライン「4」

パラレルライン「4」

 一ヶ月程経ったある日、夕食の食材を買い揃えて家に帰り着いたとき、岩瀬から電話があった。
「なにしてるの?」
「食事を作ろうかなと思ってるところだよ」ぼくは答えた。
 彼女はそれを聞くと気を遣った口調で、一緒に飲まないかともちかけ、ぼくは少しだけ考えて承諾した。散歩をしているときに良さそうなバーを見つけて、一人で行くのもなんだか気乗りしないので、ぼくを誘ったそうだ。食材を冷蔵庫に入れ、指定された場

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パラレルライン「2」

パラレルライン「2」

 ぼくたちはバーカウンターの高い椅子に座っていた。
 ウイスキーグラスの氷は半分解けたところで、彼女はグラスの氷を人差し指で転がしながらその中を見ている。丸く滑らかな氷は白熱灯に反射していた。

「なにしてるの?」ぼくは聞いた。
「光の反射を見ているのよ」
「光の反射?」
「そう」彼女は一言つぶやく。
「白熱灯の光が氷に反射するでしょ? 氷の表面を指で変えればまた新しい光が反射する。同じ氷なのに光

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