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消滅可能性都市のウソ、消えるのは地方ではなく「地方自治体」である。2024年度版

地方創生が始まる契機となった増田レポートと似たようなレポートが出て話題になっています。10年間で何を学んでいたのかと首を傾げます。まぁ再計算しただけ、ということですが、これを出して自治体に警告しても意味はないのです。その理由について以下で解説しておきます。

そもそも10年前にも解説しましたが、人口が減って再生産ではなくなっても、日本の場合には市町村合併など行政組織を改変して対応していくことで、いきなり地方の仕組みが破綻し、消え去るということはありません。

そもそも人がいなくなったらその地域の担当する行政が再編されても特段人々の生活に問題はなく、人口問題は各市町村で奪い合いをすることではなく、国全体で少子化対策を打つことです。そして今の日本の少子化課題は「未婚化」です。これは少子化社会対策白書にかかれている通りです。


◯ 子育て支援では人口回復せず、自治体ごとの出生率なども意味を持たない

子育て支援だけでは、未婚化は防げず、むしろ若い世代にさらなる負担を強いる医療保険を改悪して行う子育て支援政策は言語道断です。経済的理由で結婚しない若者たちが多いにもかかわらが、彼らの所得を減らしてなぜに結婚するのでしょうか。既婚者と未婚者の所得の差は歴然と存在し、既に子供の数を言えば所得が多ければ子どもの数も多くなる「金持ち子沢山」の現状です。

そのたろ、個別自治体が出産可能女性を今更予算を使ってとりあったところで意味はありません。ある自治体から所得がある男女が移動(=若い女性が減って)、別の自治体で所得のある男女が結婚出産するという流れを多く生み出した地域が数字上は少子化対策に成功したように見えますが、それは単に自治体で奪い合っているだけで、日本全体でプラスサムになっているわけではないのです。そんな 単に右から左に人が移動するだけという状態で一喜一憂するような、自治体ごとの数字のお化粧に税金を使うのはナンセンスです。日本全体での解決を政府が向き合わなければなりません。そしてそれは自治体の奪い合いに成功した戦略をそのまま日本全国でやればいいという単純な話ではないのです。

どちらにしても、既に団塊ジュニア世代すら50代を超えてしまい、日本が人口回復を根本的に既存の日本人だけで行うことは不可能です。今からベビーブームが発生したとしても、これから団塊の世代の自然死が大量に発生するため、人口回復に至るのには多くの時間を要します。が、そんな希望的観測は意味を持ちません。

団塊ジュニア世代が結婚適齢期とされた2000年前後にポイント・オブ・ノーリターンを超えてしまったと考えるべきで、2014年の増田レポートすら手遅れのときに騒いでいたのです。日本は2000年頃まではに第三次ベビーブームが訪れると政府も企業各社も捉えていて、当時の少子化要因は「晩婚化」と言われていました。しかしそれは間違っていて未婚化だったのです。

◯ 実態としては少子化対策ではなく、移民政策にシフトしている

むしろ今後の人口動態に合わせて自治体を再編していくことが現実解であることは、この10年の地方創生政策の結果をみても明らかです。そして今回の推計データをみても10年前から減少した地域の多くは外国人労働者の流入によって数字上改善されたように見えていて、日本としては実態として永住権をかなり多くの外国人に今認めるようになっていることが反映されています。

つまりは少子化対策ではなく、外国人労働者永住権によって人口問題を対応しています。国籍付与は日本は厳格ですが、既にインバウンドのみならず、就労ビザ、永住権についてはアメリカ、ヨーロッパよりも柔軟だという日本で働く外国人の方は多くいます。地方人口減少を煽ることではなく、政府は実態として移民政策をスタートさせている前提にたち、今の実状にあった日本の未来についての提言こそ必要です。つまりは国籍は認めないが永住権は認めるという形式での外国人労働力確保をしているわけですが、そこで生まれた子どもたちを含めて我々の社会を今後どうするのか、なし崩しではない政策が必要になっています。

◯ 人口動態をもとにした地方行政改革が本質

つまりはもう今後は人口推計をもとにした人口減少をもとに自治体をどのように再編するのか、「令和の大合併」を計画するべきであること。さらに言えば、マイナンバーを利用して地方行政の効率化、どこにいてもサービスが受けられる仕組みをネットを基礎にして形成していくという窓口と人力からの脱却を急速に進めるべきということです。

今回のレポートでも本質は消えるのは自治体であって、地方そのものではないのですから、消えるのがわかっている周辺自治体でどのように行政単位を組み換え、残る人々をサポートするか、という現実的な政策と向き合うしかないのです。正しい撤退戦が必要なのに、各自治体を競わせて消耗させるなんてのは、とんでもない方向です。負け戦が決まっているのに、全体の戦略に見直しなしに、各部隊に戦果を求めるようなものです。狂っています。

◯ 10年前に書いたロジックは今も変わらないので再掲しておきます。

以下は、2014年10月30日に当時のブログに投稿した内容です。

今年、増田寛也氏の「消滅可能性都市」のレポートが世間を騒がしています。中央公論新社からも「地方消滅」なるセンセーショナルな新書本が、出されたそうです。しかしながら、この論自体が大変乱暴な意見であると共に、その処方箋そのものは極めて危険である。ますます地方を衰退させかねないので警告します。

昨晩頭にきたので、連続ツイートをしてしまったのですが。その内容は以下に出してあります。

「消滅可能性都市のウソ。消えるのは都市ではなく、地方自治体である。」

このレポートが極めて世の中をミスリードしようとしているのは、2点あります。

(1)都市そのものは消えない、(今の)自治体が消える。「自治体破れて山河あり」

まずこの消滅可能性都市というのは、都市そのものが消えるということではない、ということです。このレポートで消えるといっているのは、女性が減少し出生数が減っていき、人口が1万人を切ると自治体経営そのものが成り立たなくなる、ということを言っているのです。→ 

http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf

つまりなくなるのは地方そのものではなく、今の単位のままの地方自治体であって、それは人口減少社会において当たり前な話で、むしろそのために行政改革があるわけです。従来の行政単位のやり方を捨てて、広域行政でサービスを回していく、複数自治体横断で居住・業務両面での立地適正化を図るという対応をしないといけないという、現実に沿って破綻しない社会を実現する行政議論をするのが当然です。このまま行くと自治体は破綻して行政サービスはできなくなりますよ、という何も自分達が変わるという前提がないのが驚愕します。「自治体破れて山河あり」。今の自治体を変えて、変化する社会に対応するほうが現実的です。

(2)処方箋がもはや夢であり政策ではない。

もう1つは、政府を批判している体でありながら、処方箋がこれまで何度も政府がやってきた話を焼きまわししているだけという点です。

「東京一極集中をやめろ」というのも幾度と無く叫ばれた言葉です。都市機能を分散移転するとかアイデアはいくらでも出てきますが、東京から奪うという発想事態がイケてません。地方が伸びて、東京以上に魅力的になる方策を独自に考えるのではなく、東京から何かをぶんどろうという発想です。伝統的な地方分権的発想と同じで、権力を地方に戻すという、小さな箱のなかの争いです。

そもそも地方自治体単位での社会減(東京とかにとられる発想からすれば、社会増減の指摘だろう)は、都道府県単位でいえばはるか遠い昔から発生しています。以下の一覧は、総務省統計局統計調査部国勢統計課「国勢調査最終報告書 日本の人口」からひっぱってきた都道府県別人口増減に関する資料です。赤くなっているのが減少している数字のところです。社会減(流入する人口より流出する人口のほうが上回っている)に至っては、戦前から真っ赤っ赤というところが少なくありません。今更これを変えるという案そのものが非現実的で、べき論と曖昧な見込みだけで巨額の財政支出をしたら、むしろ地方に沢山のインフラや医療福祉整備だけがなされて、その財政的重圧で地方の公共サービスが劣化し、さらに人が(特に若者が)住まなくなる可能性のほうが現実的です。そして、それらのツケは僕らの世代が払うことになるのです。

◯自治体のために人は住んでいるのではない

さらに、「地方に若者が戻るようにせよ」「子供を産めよ増やせよ」といったところで、人々はより好条件の職を求めたり、より良い教育を求めたり、より良い都市生活を求めた上で、東京を選択しているわけです。2000年代の10年だけでも首都圏では100万人クラスの社会増があるわけです。政令市一個分の人口が地方から首都圏に集まっているのです。それだけ地方に仕事も、教育も生活も相対的に見てないから、多くの人達は移動しているわけです。結局、厳しい言い方をすれば、地方自治体を主語とするこのレポートに則れば、これまでの地方自治体は地方の若者たちにとって何の魅力もないことしかしてこなかった、残るに値しない、可能性のない地域になっていたのではないでしょうかね。結局仕事作ると言っても、また公共事業を増加させ、公共資産を無駄に増加させてその維持費で将来の自治体がひいひい言うようになるだけでしょう。戦後高度経済成長期の公共ストック問題を今抱えてこんだけ朽ちるインフラ問題とかいっているのですから。ストックを作る間だけの仕事に自分の未来を託しませんよ。普通に。若者たちは馬鹿ではありません。そんなことわかっているからどんどん地方を抜け、政治・行政より相対的に経済が強い大都市へと移動し、戻りもしないのです。

その人達を地方に戻して、子供を産めよ育てよ・・・。それは国策だ。そういうこといっているから人が抜けて自分なりの人生を選択しているのではないでしょうか。若者たちは子供を産み育てるマシーンではありませんよ。どういう見方しているのでしょう。ほんと。

最後に外国からの移民政策については「高度人材に限る」とか言っていますが、そんなのは世界の高度人材の人たちが選択する側です。高度人材なんて世界各国が来て欲しいと思う人材なわけで、売り手市場です。買い手側である日本が「高度人材じゃないとあかんわ」とかいっている段階で、勘違いした上から目線も甚だしい。

◯既に政策のヒントは地方にある。

今までどおりやってたら地方自治体が潰れるという当たり前なことを「地方消滅」と称して危機感を煽り、結局は「国がどうにかしろ」「国難だから若者どうにかしろ」というご意見を見るに、全くもってこんな政策打たれたらますます地方から若者もいなくなるなと思わされるところです。

しかしもう政策のヒントは地方で起きています。それをみれば色々なことがわかります。

乱雑な拡大した公共施設を集約し、その集約した施設開発は公共事業ではなく、民間開発事業で実施させて、公共床はテナントとして家賃を支払って入るという方式に変えられるようにする。行政からの支援についても、補助金・交付金ではなく、金融支援策に切り替える。民間施設も同居して公共施設にくる年間のべ数万人~数十万の人たちを対象にした民間商業・サービスを考えて、持続的な仕事をつくる。既存の使われていない空き家などのストックをリノベーションして住める、職場を作れる、都市型産業の形成に向けた政策を考えて、持続的な仕事にしていく。
従来のなんでも税金でやるという地方の考え方を改め、経済開発的なアプローチを徹底しなければ、もちないわけです。さらに居住・業務に関しても立地適正化を図って効率化をし、行政サービスも自治体単位で実行せずに複数の自治体が相乗りする共同行政サービスの組合や会社をもっと効率的に走らせて、少ない財源でもサービスを保持できる方策を考えるのが当然でしょう。

もっとディテールをちゃんとつめなければ、全く話にならないわけですが、方向性そのものがこのレポートは全く今の実情、これからの未来に適合していません。むしろいま地方で成果をあげているケースをみればこれらの政策的ヒントはあると思うんですが、関係者のお耳にはどうしても届かないようです。

何より「べき論」ではなく、そのべき論を現実に導入・実現していく方策がなければ言って終わりだから、僕らは悩んで色々と全国各地で仲間と共にチャレンジし、小さな成果が出たら他の地域でも試したりをしている。自分達の身銭をきって。リスクを負って。

高みの見物でウソの地方消滅を流布するのはやめて頂きたい。
とはいえ、一市民にとっては、くだらない自治体の取り組みをみたら、その自治体を自らが変えることではなく、自治体を替える(自分が違うエリアに移住する)ほうがよっぽど簡単なのです。だからこそ人はダイナミックに移動しているのだと僕は思います。

10年経過して地方では人口推計よりも人口増加している自治体や、出生率が高くなっている自治体など個別解はたくさん出ています。しかしながら、国前提での少子化課題への向き合い方は大きくは変わらず、子育て支援をすれば皆が結婚して子供を生むと思い込んでそのままきて失敗しています。その全体の失敗をリカバリーしなければ、自治体に責任を押し付けて努力しろといっても無理なのです。結婚もしない、子供も産まないという中で、結婚しなくても子供を生み育てるようにしようとか、そういう柔軟性も「こども家庭庁」になんて名前にしてしまうあたりからも想像はできませんね。
政府が抜本的に日本人の出産育児に対する価値観を変えるなど本質的な少子化対策に乗り出さず、全体で少子化がますます進む限りは、局地的なミクロの取り組みは儚い抵抗に近いのであります。
だからこそ、できもしないことに期待して、結局だめでした、では困るので、今から現実解として人口動態に沿って自治体を再編、またはDXによる自治体業務の改善などを通じて、どうにか残る人々の生活をサポートしようとするのが政府の役割ではないのか、と思います。


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