見出し画像

【A-D】 600 HIPHOP VINYL RECORDZ -CLASSICS OF THE 90’s n 00’s- BY SHOTAHIRAMA

A-


Aboriginals “Chemistry” (1997)

ニューヨークの2MCが放ったアングラクラシック「Keep It Hot」に続く2枚目のシングルとなった本作。前作ほどの人気ではないが、スティービーの「You’ve Got It Bad Girl」ネタを使ったフロントサイドやブルックリンの人気者Mike Zoot (Rawkus周辺でしばしば登場) を擁したバックサイドなど聴きどころはそれなりに。

Abstract Art “The Anthem” (2002)

イギリスのトラックメイカーAimが「Ain’t Got Time To Waste」のネタとして使っていた漆黒のベルギージャズPlacebo「Humpty Dumpty」を遅まわしでメインループにする表題曲がマスト。このネタがたまらん、好き。ディラも「Love Jones」で使ってるね。さて、ドイツはミュニッヒのジャズヒップクルーが03年にリリースする唯一のフルアルバム「Abstract Art」からリード12。トラックはメンバーのDJ Chromeでスリーエムシーズによるサイレントでカームなマイクリレーがより一層"好き"を加速させてきてやばい。うまい。

Aceyalone “Moonlit Skies” (2003)

本人が立ち上げたコミュニティでもありレーベルでもあるProject Blowedから03年に発売されたアルバム「Love & Hate」に収録。切ないアコースティックギターに乗っかり哀しげに歌う表題曲がおすすめだが、A2の「Ace Cowboy」もカッティングギターが軸になっていて良い

LAニュースクールシーンを牽引してきた西の一大派閥Project Blowed創設者であり、看板グループFreestyle FellowshipのリーダーでもあったAceyaloneがソロで放った12インチ。注目はアコギを用いた哀愁系RnBな表題曲を、Def JuxやRawkusなど東のアングラレーベル周りで活躍していたRJD2(第2のDJシャドウなんて呼ばれてたらしい)がプロデュースしたという点。東西交流に積極的だったことがよくわかる。

Adagio! “The Obvious Joint / Ass & Benefits” (1996)

ジェフ・ベック「Goodbye Pork Pie Hat」で聴けるブルースとジャズがゆっくりと溶け混じり合う神様級メロウリフを使った驚愕ミディアムブーンバップのバックサイド。トラックやばすぎな。これが、ニューヨークとフィラデルフィアの無名エムシー2人がタッグを組んだ超絶マイナーユニット、アディージオによる最強1stシングル。ちなみにフロントはプリモの「Crooklyn Cuts」で聴ける、全ヘッズ沸騰のクラシック。

A.D.O.R. “Shock Frequency” (1997)

NYワシントンハイツ生まれのエディ・カステリャノスがマイクを握り、Diamond DやPete Rockをプロデュース陣営に迎えた98年リリースの2ndアルバムからシングルカットした12インチ。表題曲はハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのフィリーソウル名曲「You Know How To Make Me Feel So Good」を使ったスムージーなメロウヒップ。そしてバックサイドにはPete Rockプロデュース「Let It All Hang Out」が収録で、禁断のマリーナ・ショウ「California Soul」という大ネタ使い。メロウなソウルジャズヒップが存分に味わえる最高過ぎる1枚。ほんとに1秒たりともダレない、完璧な1枚。

Aim “Cold Water Music EP” (2000)

同タイトルのファーストアルバムで個人的には1番大好きだったYZ参加のFunky DL風味(Placebo「Humpty Dumpty」使い)香るジャズヒップ名曲「Ain’t Got Time To Waste」がリミックスで収録された12インチ。表題曲はアルバムの冒頭も飾っている彼の代表曲、冷たく物悲しくドラマティックな電子音が脳みそを斬り裂く的な言い回ししか思いつかないアブストラクトなUKブレイクビーツクラシック。ちなみにお父さんはジャズドラマーだったらしい、なるほどね。

Aim “The Force” (1999)

レーベルはマンチェスターのヒップホップレーベルGrand Central Records。ちなみにこのジャケはニューヨークのGrand Central駅だと思うんだ、僕がよく使ってた路線の終着駅がこの駅

イギリスのトラックメイカー、いや、最早電子音楽家とも呼べるサウンドをも作り出せる類稀な才能の持ち主。彼の1stアルバムからカットされた人気曲「The Force」はしっかりサンプリングでビルドアップされたジャズヒップ。67年にカリフォルニアで結成されたサイケバンドSpiritによる「Mr. Skin」のキャッチーなコーラスをフックに、ロングアイランドの2人組Q-BallとCurt Cazalがメロウなラップを披露。バックサイドはSteely Dan「The Royal Scam」ネタのメロウブレイクビーツ「Another Summer」が楽しめる。

Aim “The Omen” (2002)

“ダーモーンディーっ”って、”アイマ ライカ ライニングボルト”って、マイク握るは我らがレジェンド、シャインオンユークレイジーDiamond DフロムDITC。トラックは英国ブレイクビーツメイカAimで、アート・ブレイキーのバンドでも弾いていたジャズピアニストのシダー・ウォルトンによるご機嫌ジャズブルース「Precious Mountain」冒頭のテナーサックスをそのまんまループさせたメロディアスな重厚ブーンバップ。ネタが良い。

Aim “Sail” (1999)

UKマンチェスターのヒップホップマインド太め濃厚アブスト系レーベルGrand Central Recordsから看板アーティストAimの1枚。トランペット奏者メイナード・ファーガソン「Swamp」で聴けるアコギリフと、刹那な声が魅力的な女性シンガーKate Rogersのドリーミーヴォーカル(歌詞はMillie Jackson「It Hurts So Good」から引用)を重ね合わせたトリップホップスタイル。旅愁が込み上げてくるようなセンチメンタルな気分からしばらく抜けれない。

Ak Skills “Check Tha Flava” (1996)

リアルネームA.KellyのAKかな

90年代の東側を牛耳るブロンクスコミュニティDITCからLord FinesseとBuckwildが両面バックアップをしたマイナーラッパーAk Skillsによる名作。フィネスサイドで聴ける曇ったディレイがかかるホーンはBig Lの「Street Struck」から引用されてるっぽいね。ローフィネ王道のメロウは傑作「Game plan」やクラシック「Hip 2 Da Game」に劣らないレベル。それにしても豪華すぎるダブルサイダー、NYアングラど真ん中を直走るTru Criminal Records作品にハズレなし。

Ak Skills “One Life Ta Live” (1996)

Tru Criminal Recordsといえば囚人の足に鉄球の足枷がつけられたクリミナルマインドなレーベルロゴが印象的

Lord Finesseがバックアップした彼の代表作「Check Tha Flava」同様、僕らアングラ好きはお世話になっているTru Criminal Recordsよりリリースされた12インチ。ラテンジャズの祖Cal Tjader(カル・ジェイダー)「Leyte」ネタを使ったバックサイド「East Ta West」はメロウ傑作。正直、前述したトラックより個人的にはAK・スキルズ史上ナンバーワンかと。なんとなく夏の夕暮れどきを彩るサウンド。

All City Productions “Bust Your Rhymes” (1992)

King TechとMystermeによるユニット。そのMystermeは翌年にDJ 20/20とユニットを組み「Unsolved Mysterme」の別歌詞バージョンをリリース

とにかくバックサイドの「Unsolved Mysterme」が黒くてよい。オルガンとキックとスネアの純度100パーヒップホップ。JBの「Ain’t It Funky」が下地で、小気味良くカットアップされてる声はLord Finesseの「Funky Technician」から。フロントサイドも終始ファンキーなビートしゃかしゃか手拍子ぱちぱち腰ふりふりでよきよき。数年前まではオリジナルが10万を超えたりとからしいけど。

All Natural “Keep It Movin” (2004)

レイト90sを代表するシカゴ・マイナーヒップAll Naturalのヒット曲。ディスコ系のネタ(不明)が派手にかっこいいバウンシーなパーティチューンは初期コモンを支えたDug Infiniteがプロデュースしたもの。"バウンストゥザビートヨー!"って、あがるなー。確かにコモン好きはおすすめ。ちなみにニュージャージーのArtifactsからEl Da Senseiがゲスト参加していて個人的には倍に嬉しい。

All Natural “No Additives, No Preservatives (xtra phat)” (1998) 

弁護士の顔を持つCapitol D執筆のエッセイブックレットが付属

コンシャスな語り口と、細部まで作り抜かれたトラック、静謐で澄んだジャジー系からブルータルで不穏なハードコアまで、魅せるバリエーションに才能しか感じないイリノイ州シカゴのユニット(MC Capitol Dと、DJ Tone-B)による2枚組デビューアルバム。ピアニストのラムゼイ・ルイス「Julia」を使った「50 Years」が秀でて大名曲。マーヴィン「T Plays It Cool」ネタの「Underground & Independent」もハードコアで好き。

All Natural “Stellar” (2000)

A2に顔出ししているJ.U.I.C.E.もシカゴのエムシー

シカゴ音響シーンとも交流のあった彼らが、トータスやSea and Cakeらを輩出するThrill Jockeyからセカンドアルバムをリリース。んでこれが先行シングルかな(B2のインストがすこぶるジャズい)。ジャズとヒップホップとポストロックが交わる、ジャンル交流盛んなシカゴの地図がまんまジャケに。

Anotha Level “What’s That Cha Say” (1994)

メンバーのBanbinoは後にHimalayazでも活動

西海岸はLAから、Ice Cubeのプロデュースを受けてデビューした彼らのファーストシングル。ギャングスタでもGファンクでもない、これぞLAニュースクール、これぞサマージャム94、日焼けしちゃいそうだ。パトリース・ラッシェンの「Settle For My Love」を使った表題曲がおっしゃれなジャジーチューン。バックサイドには当時LAに留まらず全米でブレイクしていたスーパーグループPharcydeのみんなが参加したおふざけ系パーティーソング。

Antipop Consortium “Arrhythmia” (2002)

90年代後半、メンバーのPriest、Beans、M.Sayyidらはロシア出身のNinja TuneアーティストDJ Vadim、ロンドンのターンテーブリスト集団Scratch PervertsからPrime Cutsと共にThe Isolationistなるグループで活動していたというのも納得

アブストラクトにエレクトロニカからエクスペリメンタル、そしてストリートポエトリー出自の3人(Priest、Beans、M.Sayyid)のヴォーカリストが語らう前衛で詩的なラップ。アングラでも極めて稀な、ありとあらゆるオルタナティブ要素を持ち合わせたニューヨークの異端派集団アンチポップ・コンソーティウム。そんなAPCのキャリア3枚目にあたる2枚組LPはイギリスWarpからリリース。あのレディオヘッドの「アムニージアック」ヨーロッパツアーでDJ Shadowと共にオープニングを飾るなど、Mad LaddやCompany Flowらも体現してきた「アートフォームとしてのヒップホップ、アングラマインド、総じて逸脱したヒップホップ」なるものを地上の一般層にまで提示してみせたその実績は歴史的だったと思う。

Apani “Abracadabra” (2003)

ここ日本ではNujabes/Hyde Out関連の作品で知られ、我々アングラ好きにはDJ Spinna率いるPolyrhythm Addictsの初期メンバーとしてもお馴染みクイーンズフィメール・ラッパーが03年にリリースしたソロシングル。表題曲はSpinnaプロダクションで、ギル・スコット・ヘロン&ブライアン・ジャクソン「A Prayer for Everybody」を使ったエレクトリックなジャズファンクチューン。元ネタが既にスペーシーなのでスピナ特有の電子音感覚も相まって、最早インストの方をずっと聴いていたい。バックサイドはBeatminerzプロデュースで、こちらは所謂なホーンネタの真っ黒ファンク直球勝負。

Apani B-Fly Emcee “Laws” (2003)

DJ Spinna率いるPolyrhythm Addictsの初期メンバーとして我ら90sアングラ勢にはお馴染み、唯一無二のクイーンズフィメールエムシーApani。そんな彼女が、ジャパニーズジャズヒップを牽引した日本代表Hydeout Productionsよりリリースした人気の12インチ。ビッグボスNujabesがプロダクトした実に彼らしい清涼系トラックで軽やかに優美に歌い上げる表題曲と、こちらもNujabesがかつて彼女に提供したトラックをMonorisickが爽やかジャジンリミックス。Syuイラストレーションのジャケも良いねっ。

Apani B-Fly Emcee “Strive / Progress” (2000)

針を落としてすぐに彼だと分かるNujabesサウンドも凄いが、一言発しただけで彼女のものになってしまうApaniの存在感も凄い。フランスのプログレGongによる「Mandrake」で聴ける、チャイムみたいなそれこそゴングのような音色(どうやらグロッケンシュピールという金属製の音板を持つ鍵盤打楽器らしい)を組み替えたエスニックな雰囲気がとても落ち着く。バックサイドはApaniの意外にも個人的には初だったポエトリーリーディングトラック。この声でこれやられたらお手上げだっ。

Arcee “Super Educated” (2019)

大人気R&BシンガーMayer Hawthorne率いるユニットTuxedoの片割れで知られるJake OneがプロデュースしたトロントエムシーArceeの代表曲。もともとは01年発売の12インチシングル「The Exquisite」に収録されていた曲が、カナダの現行アングラヒップを支えるレーベルChuku Recordsによって新たに7インチ45回転用にミックスしなおされて(12インチには無かったイントロが付け加えられてる)再リリースされたもの。内容はヤング・ホルト・アンリミテッドによるカーペンターズカバー曲「(They Long To Be) Close To You」からのラインを、レトロフューチャーとでも言えばいいか、なんとも独特なサウンドに加工したもので、近未来ソウルジャジンな雰囲気とバネ感あるファンキンビーツでゆっくりと、だけど確実に決めにくるいなたい1曲。Jake Oneの手腕が凄まじい。ちなみにArceeがマイクパスしてるのはFatskiというエムシー。素晴らしい1枚。

Arsonists “Blaze / Geembo’s Theme / Flashback” (1997)

火曜サスペンスでお馴染み"ジャッジャッジャーン"をワンループにしたA1がよい。実はこのネタ、ウェルズの小説「宇宙戦争」をミュージカル化したジェフ・ウェイン「The Eve of the War」冒頭から。ゴシックホラーなトラックはメインMCでもあるQ-Uniqueによるもの。猛々しくスピットする総勢6エムシーズのブッシュウィックハーコーシット。

The Arsonists “The Session” (1996)

ビートマイナーズやFinsta Bundyを愛する者は見逃せない!聖地ブルックリン・ブッシュウィックから5人の "放火魔" を意味するArsonistsデビューシングル。The Honey Drippers「Impeach the President」ブレイクとウッディなジャジンベースライン(ベースネタ誰か教えてくれぇー)にbpm90そこらのブンブンバッってな。ヒップホップってこれだよな。ブッシュウィッククラシックはBobittoのFondle’Emより。

Artifacts “C’mon Wit Da Git Down” (1994)

スクラッチをしているのはDMCチャンピオンRockraider

ニュージャージーのグラフィティアーティストEl Da SenseiとTame Oneが結成したマイナーヒップグループ。彼らのデビューカットをニューヨークの職人集団DITCからBuckwildがプロデュース。さらにリミックスされた表題曲には12インチ限定でバスタライムスが参加。やっぱりバックワイルドのトラックはまじでかっこいい。ちなみにカップリングは赤鬼レッドマンがReggie Noble名義でプロデュース。

Artifacts “Dynamite Soul” (1995)

Artifactsの代表曲が「Dynamite Soul ll」と題されLip Service Remixなる12インチ限定ミックスで聴ける1枚。地響きよろしく強めのベースラインがキックよりもスネアよりも跳ねてついついうねうね踊っちゃう、トラックメイクはEZ Lpee。極めつけは当時フリースタイラーとして数々のMCバトルを制覇していた技巧派ラッパーMad Skillzがゲストに、さらにはスクラッチにDMCチャンピオンの故DJ Roc Raidaが参加してる。勿論オリジナルミックスもB1に収録。

Artifacts “Wrong Side Of Da Tracks” (1994)

ジャケに映っているこの電車、グラフィティートレインがミニチュアになって販売されてるのよ。これがまた可愛い。El Da Senseiのインスタで知った

ニュージャージーのグラフィティアーティストらが結成したユニットArtifactsのセカンドシングル。ジャケがとにかくかっこいい。クリームやマンフレッドマンで活躍したジャック・ブルースの「Born To Be Blue」で鳴るホーンセクションをサンプリングするほか、ナインス・クリエーションの「Bubble Gum」を使ってる。プロデュースはSoul Assassins構成員のT-Ray。因みにラリー・クラークの映画『KIDS』で終盤、スティーヴンの家でパーティーをするシーンに流れてる。

Arts The Beatdoctor Ft. Pete Philly “The Anthem” (2007)

"アー(ッ)ザービー(ツ)ダクター"のフックでぶち上がり間違いなし。ユトレヒトの新人トラックメイカーがドロップした特大アンセム級のフロアキラー12。マイクを握るのは同じオランダからPete Philly。巷ではオランダ版サウンドプロヴァイダーズと呼ばれているみたいだが、正直ヒップ度はそれを下回るもクラブジャズの切り口で入りゃそらこんな神曲、他に比べる対象はまじでない。驚愕のジャジンヴァイブス系ブレイクビーツ、日本限定盤です。

Asheru “Black Moses” (2003)

ブルックリンジャズヒップ最右翼7Headsレーベルより、The Unspoken Heardユニットでお馴染みAsheruが単独12インチ。Jazz LiberatorzからSound ProvidersやLone Catalystsまで、ジャズとヒップが付き合ってるような音楽には必ずしやAsheru在り。表題曲はアルバム「48 months」から、B1はSeven Headsコンピ「7Heads R Better Than 1: No Edge-Ups In South Africa Vol. 1」にも収録された人気曲。

Asheru And Blue Black of The Unspoken Heard “Elevator Music” (2001)

7人のレーベル創設メンバーからGabriel Ben(Asheru)と、リーダーのWes Jacksonその実兄であるRobert Jackson(Blue Black)が組むユニットからブルックリン7Heads人気作。ジャズピアニストOscar Peterson「The Shadow of Your Smile」の女性コーラスを使い、ビートはRawkusイラストレーターGE-OLOGY。さらにはギターやオルガンなど複数のミュージシャンが参加したジャズブルースなアンサンブルトラック。A2のインストが堪らない。

Asheru Featuring Talib Kweli “Mood Swing” (2002)

良質なジャジンヴァイブスヒップをリリースし続けてきたブルックリンのアングラレーベルSeven Headsから、看板アーティストであったAsheruと人気者Talibを掛け合わせた1枚。ジャズピアニストの巨人デューク・エリントンがモダン派最強コルトレーンとのダブルネームで62年に発表したジャズ史屈指と謳われる名バラード「In A Sentimental Mood」冒頭で聴けるあの印象的なピアノリフをまんまメインループに。タイトル通り情緒的、幻想的な雰囲気を持ったまるでネオソウル系メロウなトラックの中しっとり歌い上げる2人のエムシーが美しくて、尊くて、このムーディーさに思わずうっとりしてしまう。

Aspects “Best Music” (2001)

3人のエムシーにターンテーブリストからビートボクサーまでをも擁するイギリスはブリストルのヒップグループAspectsによる12インチ。ジャケといい、ブリストルといい、本作にはDJ Vadimがリミックス参加したりなどキツめのアブストラクトとダウンテンポを覚悟していたがムードはニュースクールすら感じる爽やか系でしっかりヒップホップ。電子音が多少混じるも、基本はサンプリングベースのトラックで、なんならネタもピアノ。ファーストアルバム「Correct English」からのシングルカット。

Atmosphere “Ford One” (2000)

SlugはRhymesayers Entertainmentというレーベルを運営している事でも有名ね。Atmosphereの作品は勿論、MF DoomやEvidenceなど錚々たるメンツの作品もリリースしており、恐らくみんな気付かずにここのレーベル作品をいくつも所持しているかと

カナダに接するアメリカ中西部の北、ミネソタ州のミネアポリスからMC SlugとトラックメイカーAntから成るユニットが00年にリリースしたEPシリーズ"Ford”の第1弾(同年に第2弾がリリース)。カナダアングラ寄りのミニマル系ブーンバップが基本スタイルだが、AnticonのオーナーJelがプロデュースしたダブとヒップホップを掛け合わせたノタノタブリブリにベースが這いずり回るA1「Free Or Dead」が全世界のアングラヘッズを震撼させたであろう神曲すぎて、これは何系の何寄りかどうかなんかどうでもいいレベルの格好良さ。ビートはエルトン・ジョンのバックバンドでもあったHookfoot「Is Anyone There」からというのは分かった。

A Tribe Called Quest “The Anthology” (1999)

音楽史だけに留まらずカルチャー含め90年代そのものに計り知れない影響を与えてきた彼等。そんなATCQが飛ばした数々のヒットシングルを余すことなくまとめたその名の通り"アンソロジー"ヴァイナル。所謂ベスト盤的なセレクションに今更感はあるが、個人的な狙いはアンカットだったトラックにあり。Q-Tipソロ作「Vivrant Thing」まで収録。

A Tribe Called Quest “Beats, Rhymes And Life” (1996)

4枚目のスタジオアルバムにはもう最早絶頂期の面影無し、故ファイフも発言した通りそれまでのATCQにあったメロウでリラックスな"ヴァイブスは死んでしまった"ほど、なんだか暗い作品。とはいえ、本作から正式にプロダクションへ加わった故Jディラ(チームThe Ummah)の影響なのか、イスラムだかムスリムだかに傾倒しはじめたQ-Tipの影響なのか、R&Bへとクロスオーバーしていくサウンドは嫌いじゃない。

A Tribe Called Quest “Check The Rhime” (1991)

アベレージホワイトバンド「Love Your Life」中盤で鳴らされるホーンセクションを大音量で流したら、ミニー・リパートン「Baby, This Love I Have」のウッディでソウルジャジンなベースラインを。間髪入れずにQさまが”Back in the days on the boulevard of Linden”ときて。何億兆回聴いたか。ちなみにYall So Stupidのリミックスを手掛けた事で個人的にはツボなSkeffのミックスが聴ける。”Rap is not pop, if you call it that then stop”ってとこがピーク。

A Tribe Called Quest “The Jam EP” (1997)

Howard Roberts Quartetの「Dirty Old Bossa Nova」を使ったメロウJazzボッサ風なATCQ、これ実はUK、ヨーロッパオンリーで発売された12インチ。裏面に関しては当時のアルバム「Beats, Rhymes And Life」には未収録。プロダクションはQ-Tip、AliそしてJay DeeらによるチームThe Ummah。A2「Get A Hold」はソフトロック寄りなのかな、The Cyrkleの「The Visit」を使ってる。穏やかで静かな2曲で、好きな1枚。

A Tribe Called Quest “1nce Again” (1996)

今更何を説明する必要もないスーパーグループによる4枚目のスタジオアルバム「Beats, Rhymes & Life」からカットされた12インチ。プロデュースがThe Ummah(Q-Tipとアリシャヒードによるユニット)とだけの表記で分かりづらいが、ユニットにJ Dillaが加わったトリオ編成として最初のシングルワークが本作らしい。ネタはヴィブラフォン奏者ゲイリー・バートン「I’m Your Pal」からで、シルキーなタミー・ルーカスの美声コーラスが入るあたり、あぁ、、4枚目の時のトライブだな、とか感じたり(この次に12インチカットされる「Stressed Out」にはフェイス・エヴァンスが参加したり)。

A Tribe Called Quest “Scenario” (1992)

MVにはカメオ出演としてスパイク・リーや、デラ、ブランド・ヌビアンらが登場する

当時まだ19歳だったバスタライムスをはじめとしたLeaders Of The New Schoolのメンバーがマイクリレーに参加したヒップホップ史上最高のポッセカット。ジャズオルガン奏者Brother Jac McDuffの「Oblighetto」中盤のブレイクパートで、ベースとオルガンのみが交わる緊張感高まる瞬間があるんだけど、これをまんま抜き取って嘘みたいにご機嫌なパーティーチューンに仕立てあげちゃう。うるさいビートはジミヘンの「Little Miss Lover」から。サンプリングって楽しいよねぇ。

Audessey The Sound Sci / Wordsworth “Gusto” (2003)

Yall So Stupidのメンバーが在籍することで知られるアトランタのジャズヒップクルーMass InfluenceからAudesseyがブルックリンのマイナーエムシーとダブルサイダーを組んだ7Headsメイドの12インチ。フロントはレーベルコンピにも収録されていた、西部劇の劇伴のようなアルペジオを引っ張ったエキゾチックなブーンバップ。対してバックサイドにはLone CatalystsからJ Rawlsがトラックメイク参戦した超ド直球なジャジンヴァイブビーツが。Seven Headsは裏切らない。

B-


Bahamadia “I Confess” (1996)

地元フィラデルフィアでは既に人気者だった彼女を、ギャングスターのGuruがスカウト。今やワールドクラスな歌姫に、フィリーヒップクイーン・バハマディアのデビューアルバム「Kollage」からメロウ人気曲。プロデュースはサザンヒップ功労者、N.O. Joe。マーヴィンの「Let’s Get It On」を一節引用する反則スレスレフック、一聴して分かる彼女独特の歌声、ふわふわのワウギター、多幸感ぱんぱんなグッドヴァイブスを味わえる。本作には未収録だが、Eric SermonやRootsによるリミックスバージョンもおすすめ。バックサイドにはプリモプロデュース「3 Tha Hard Way」収録。

Bahamadia “Pep Talk” (2000)

ギャングスターファウンデーションの紅一点として、そしてフィリーヒップを代表するエムシーとして、幾人ものスーパートラックメイカーを従え完成させたクラシックアルバム「Kollage」のリリースから時は経ち。ゼロ年代幕開けと共に発表された彼女の2ndアルバム「BB Queen」からシングルカットされた本作には、ミッド90sの面影は一切無くまさかのドラムンベース仕立てと攻め攻めの内容。レーベルはSlum VillageなんかもリリースするビバリーヒルズのGood Vibe Recordingから。

Bahamadia “Uknowhowwedo” (1995)

NIKE SBスケーターIshod Wair(アイオッド・ウェア)のビデオ”REAL presents Ishod”内にてこれが流れるパートがあり、おっ、となる

フィリーヒップクイーン・バハマディア(彼女はレコードコレクターらしい)がGuru総合プロデュースのもとリリースしたアルバムから、人気曲「I Confess」に比べるとやや地味目な1枚。だが、Jay-Zのデビューアルバム(同時期)にも楽曲提供していた当時新進気鋭のSkiがプロデュースしてることもあってスキー先生好きはマスト。ちなみにバックサイドにはプリモがトラックメイクした「True Honey Buns」も収録。

Bas Blasta “Dangerous” (1994)

結局2枚しか残せなかった不遇のエムシー

Godfather DonとV.I.CによるプロデュースチームGroove Marchantsが制作した刑事ドラマ感溢れるダークファンクな人気曲。ミステリアスでデンジャラスなピアノと、裏で薄く敷かれてるシンセはWeather Reportの「Mysterious Traveller」の冒頭部分をまんまサンプリング。このネタに引っ張られてまとまった感じかしら。バックサイドではDITCクルーからローフィネとFat Joe、ビートナッツからJujuなど匠のマイカーが結集した「The Rhythm」が収録。

Baybe / Forbidden Fruit “Ill Kid・Smooth But Rugged Sampler ‘95” (1995) 

ブルックリンのビッグユニットGangstarrから故Guruが全面バックアップした1枚は、実は彼のプライベートレーベルからサンプラーとしてリリースされていた12インチ。フロントサイドはフィーメールシンガーBaybeによる甘エロジャジーなRnBトラック、バックサイドではトランペッターのドナルド・バード「Think Twice」ネタが炸裂するいかにもGuruなジャズヒップが聴ける。

Da Beatminerz “Brace 4 Impak” (2001)

幾多もの名盤を送り出してきたブルックリンの最強プロダクションチームBeatminerz(弟DJ Evil Deeと兄Mr. Walt、実の兄弟コンビを代表にRich Blak、Baby Paul、Chocolate Tyを含む5人のクルー)。そんな彼等が01年に自らの名義でRawkusからリリースした2枚組ファーストアルバム。個人的にはD1の「Shut Da Fuck Up」でクイーンズのApani Bと、ブルックリンのNatural ResourceからWhat What(ジーン・グレー)が組んだフィメールシンメが活躍するトラックがツボ。

Da Beatminerz “Take That” (2001)

アングラでスモーキーなビートマイナーズを期待していると、わりかしゴリゴリブリブリなダンスホールサウンドに驚くかも。飛び出す系SEに、ダブい3連ディレイが両サイドの随所で聴ける。表題曲を歌うのはリーダーズ・オブ・ザ・ニュースクール解散後のバスタ・ライムスが結成したFlipmode Squadなるグループ。あからさまにラガっぽいバックサイドにはBlackhearted Skavangerzと、ブーキャン仲間Cocoa Brovazに改名したスミフンが登場。どちらもインストが最強に良い。

The Beatnuts “Hit Me With That” (1994)

JujuとPsycho Lesの2人はBeat Kingsって名義で活動してたんだよね。そこへAl’Tariq(当初はKool Fashionって名前)が加わってBeatnutsになる流れ

イントロからスモーキーなベースラインが最高にかっこいいジャジークラシック。クイーンズを拠点とし、ATCQにデラ、ジャングルブラザーズらと活動を共にした所謂ネイティブタン派閥。ちなみネイティブタン界隈では唯一のラティーノ・ヒスパニック系3人組。デヴィッド・アクセルロッドの「Holy Thursday」のベースラインをくもらせ、他にもウータンの「7th Chamber」をスクラッチしたり、個人的にはビートナッツで1番好きな12インチ。ちなみにジャケもウェイン・ショーター風で良きかな。バックサイドの「Get Funky」もかっこいい。

Bedroom Produktionz “S.E.L.F.” (1998)

K Recordsにヒップホップなイメージなんか全く無かったし、ギタポを漁ってた若かりし頃ですらこの名前には出会わなかったのに今になってしっかり出会えるのは不思議よね。レコードからこっちに声をかけてくるような感覚

ギタポやインディ通にはお馴染み、ビートハプニングのキャルビン・ジョンソンが運営するワシントン州K Recordsからリリースされたジャズヒップな1枚。Black Angerという2人組(Kendu ShabazzとDJ Sayeed)の別名義がこのBedroom Produkitonzてことで大丈夫みたい。因みにこの2人はシアトルのThe Silent Lambs Projectのジャズ/フルートヒップ名曲「Comrade」に登場していることを後々知る。要チェック。

Big Daddy Kane “In The PJ’s” (1994)

兎にも角にも裏面の「Show & Prove」が隠れた名作ポッセカット!Gang StarrのDJプレミアがプロデュースするハードなワンループトラックを、若き日のJay-Z(当時の表記はJ.Z.)、ウータンの奇人・故ODB、さらには声変りすらしてない子供ラッパーShyheim(当時15才?)など豪華すぎるマイクリレーが間髪いれずにたたみかける。特別この時のヤングJay-Zは神がかってて、笑うほど早口。すげえかっこいい。

Big L “Devil’s Son” (1993)

オリジナルがそもそもプロモ盤しか存在しないのだが、そのプロモ盤に非公式の再発と公式の再発が存在。ただ、見分けはめっちゃ簡単。ラベルが全然違う。これはUSの非公式再発盤

ブロンクスのアベンジャーズことDITCから最年少ラッパー・故Big L、彼のディスコグラフィーで今も高値がつけられるデビューシングル(これはブートかな)。ブンブン丸なベースラインにいかにもなホーンセクション、荒いブレイクビーツに唾吐きまくりフロウ、これこそブロンクス最深部リアルヒップホップ。プロデューサーに名を連ねるのはShowbizにローフィネ、そしてBuckwild。さすが秘蔵っ子。愛されてるなぁ。

Big L “Ebonics” (1998)

Jay-ZはLが亡くなる直前にRoc-A-Fellaと契約させようとしていた考えがあったことを明かしている。またNasもLには勝てないと多大なるリスペクトを公言してる

ブロンクスの最高機密DITCに所属し、地元ハーレムでは神童MCとして誰もが彼の将来を有望視していた99年に突然他界した故Big L。死因は銃殺。幼なじみによる犯行で顔や胸に9発も撃ち込まれたという。そんな彼が亡くなる1年前にセルフプロデュースでリリースした12インチは、死後に発売されるセカンドアルバムに収録される。バックサイドでは名曲「Size ’Em Up」が聴ける。この甲高い声が、この声こそが唯一無二の証。

Big L “MVP” (1995) 

Big Lの作品で1番最初に買った12インチかな

ブロンクスのディギンクルーDITCからカリスマMC・故Big L傑作12インチ。デバージの「Stay With Me」をネタに作り上げたのは盟友Lord Finesse。とはいえ、ハイライトはBサイドで聴ける"サマースムースMIX"で、極上のメロウトラックにエモさが光る何度聴いても震える中毒性たるや。タイトルは"Most史上最高にValuable価値あるPoet詩"の頭文字で"If rap was a game I’ll be M.V.P. The most valuable poet on the M.I.C"というフロウはダディケーンからの引用らしい。

Big L “Platinum Plus” (2001)

DITCの末っ子Big Lが男の中の漢Bigダディのケーンを引き連れ12インチ(リリースはBig L没後)。2人のBIGに華を添えるのがギャングスターのプレミア、とまぁなんだか豪華な1枚にも関わらずジャケが震えるほどダサいし、個人的にはBigとBigが合体したんだからスーパーBigを感じたかったが、いまひとつ、非常に地味でなんだかもう寂しい。ネタにはスタイリスティックスの「My Funny Valentine」を使ってる。

Big L “Put It On” (1995)

バスター・ウィリアムズは、ロイ・エアーズやハービー・ハンコック、Jazz Crusadersなどの作品にも参加してきた人気ジャズベーシスト。是非ロイ版とバスター版を聴き比べてみてほしい

ジャズベーシスト・バスター・ウィリアムズ「Vibrations」を使ってBuckwildがプロデュース。このネタはロイ・エアーズがオリジナルで、バスターはカバーをしているのだけれど演奏にはロイも参加してるのかな。どちらかというとヴィブラフォンがより際立つサイレントなバスター版を使うってのがいいね(Artifactsも使ってたし、因みにロイ版はRas Kassが使ってた)。フック部分でBig Lと一緒に歌ってるのはなんとKid Capriだったり。LとBuckのDITC黄金コンビが結実させた気合い充分な12インチ。因みにBig Lは確かこの時まだ二十歳。RIP。

Big Meal “Put It On ‘Em” (1998)

Godfather Don様主宰のHydraから、フロントはVICでバックサイドはJujuプロデュースと、Beatnuts布陣で堅めた勝ちしかないプロダクション。やたらと沁みるオルガンサウンドは、アルマンド・マンサネーロというメキシコのSSWによる「Esperare」なる楽曲をまんま使い(YouTubeでしか元ネタ確認してないけど)。ちなみに、99年にビートナッツがリリースした「Party」もまったくおんなじネタ。

Big Noyd “Episodes Of A Hustla” (1996)

日に日に中古価格が高騰してる印象

デビュー作がQBに名を残す名盤となった、プエルトリコとアフリカのミックスエムシー。ジャケ裏面のスペシャルサンクスで「すべてのクイーンズブリッジファミリーに」とあるようにこれぞクイーンズヒップな1枚。全曲モブディープが参加してるというか、Havocがトラックを作ってProdigyがラップして、なんならNoydはたまに顔を出すぐらいみたいな曲もあるぐらいほぼモブ。QB神曲「Usual Suspect」を真っ先にどうぞ。

Big Shug “Crush” (1996)

1800年代の作曲家リヒャルト・シュトラウスだか、知る由もないロマン派ネタを使うのは我らがプリモ。歌うはGSFからボストンMCビッグ・シュグ。注目はEd O.G.と、アングラ勢歓喜のScientificが"ボストン"ポッセを組むバックサイド。トランペット奏者Eddie Henderson「Movin’ On」で聴ける催眠エレピをネタにしたスロウブーンバップが収録。トラックはBless Oneによるもの。

Big Twan “One Time 4 The Lyricist” (1998)

スクラッチで参加してるTony VegasはUNKLEの作品にも参加してた強者

故Big Lの「8 Iz Enuff」に参加してたNYCラッパー・ビッグトゥヴァンが唯一ソロでリリースした1枚。表題曲はジャズギタリストEddie Fisher「East St. Louis Blues」のいなたいエレクトリックギタァなリフをフックにしたクソかっこいいトラック。ブルックリンからSpinna先生によるプロダクション。

Black Attack “Holdin’ It Down” (1997)

サンフランシスコのSSWスティーブ・パークスによる極上ウエストメロウ「Movin’ In The Right Direction」を使った猛烈爽やかトラックが好きすぎて倒れちゃいそう。歌うのはMissin’ Linxでお馴染みのブルックリンエムシー。クレジットがどこにも書いてないので調べてみたらプロダクションはGodfather DonとV.I.C.によるGroove Merchantzだと知ってびっくり。

Black Attack “My Crown” (1997)

腕相撲ロゴ?がインパクトあるGhetto Gold RecordingsからはArtifactsの別名義Brick City Kidsの12インチもリリースしている

RawkusレコーズよりMissin’ Linxでも知られるブルックリンMC、Black Attackによる12インチ。表題曲はイギリスのプログレバンドSpontaneous Combustion「Stone Shake」で聴ける渋いホーンを、バックサイドではNasの「It Ain’t Hard To Tell」から”Jam like a TEC with correct techniques”という声ネタを。とまぁ、一味違うサンプリングがアダルトなジャジーヴァイブスを演出しててかっこいい。プロデュースはビートナッツのJUJU率いるプロデュースチームGhetto Professionals。

Blackhearted Skavangerz “Poison Pill” (1997)

Beatminerzのアルバム「Brace 4 Impak」にも参加し、スミフンと一緒に歌っていた実はブーキャン系トリオ。そんな彼等によるラガなフックがだいぶ癖強いスモーキーブーンバップ12。ただ、ラガが苦手な自分としてはA1すっ飛ばしてA2のインストを聴いてみて欲しい。ダブっすね。ダブ好きは手を叩くほど。3連ディレイ最高。プロデュースはBiggas Gordという男で、さっぱり知らなかったが調べてみたら実はDJプレミアのツアーマネージャーだというからびっくり。ブルックリンはフラットブッシュのTape Kingzからリリース。

Black Maddness “Igpay Atinlay” (1993)

ジャケありはSelect Recordsからの再発

ブルックリン賛歌「Wild Brooklyn Bandits」を世に送ったフラットブッシュの2人組がその1年前にリリースしたデビュー作(むしろその2枚しか残せてない)。表も裏も基本的にはサイレンみたいなサックスが終始ワンループ、代名詞とも言えるバウンシーなボトムスに超ご機嫌なしゃべくりあいと、どこをとってもとにかくうるさい。ほんとはBreak Through Recordingsから発売されたオリジナルのグラデーションラベルプレスが欲しい。

Black Maddness “Wild Brooklyn Bandits” (1993)

セカンドシングルの本作がセールス的に不発でアルバム制作の話は延期になりグループは消滅

あまりのバネ感に天井つきやぶりそうなほど、弾みまくりなキックとバウンシーなスネアのゼログラヴィティワンループ。ビートはレアグルーヴRippleの「I Don’t Know What It Is But It Sure Is Funk」から。ばちボコマイナーでありながら、恐らく90年代最強のブルックリン讃歌じゃないかと。

Black Moon “How Many Emcees・Dj Evil Dee 96 remixes” (1996)

Evil Deeが1993年にグローバー・ワシントンJrの「Hydra」を使い発明した世界遺産級のヒップホップクラシック。世紀の大名曲を96年版へとアップデートさせた謂わば"セルフリミックス"を施し、バックサイドにもこれまたセルフリミックスした「Niguz Talk Shit」を収録した1枚。最早ブラックムーンを喰ってしまうほど、鬼才ビートマイナーズをたっぷり堪能しよう。

Black Moon “World Wind” (1999)

Buckshotに5ft、そしてBeatminerzのEvil Deeらによるブルックリン無敵艦隊が90年代最後にリリースしたドロッドロにスロードープな12インチ(セカンドアルバムからのリミックスシングル)。フロントサイドに収録されているリミックスはBeatminerz名義だが、バックサイドのオリジナルとの違いがほぼ無い。バロック調のネタはNEW YORK ROCK & ROLL ENSEMBLE「THE DAY」から。

Black Moon / Smif-N-Wessun “Headz Ain’t Redee!” (1995)

“Headz ain’t ready for this clik we got, Headz ain’t ready man I swear they not”ではじまる大合唱必至のBCC讃歌。JB「The Payback」ネタの燻し系ファンキービーツはBuckshotプロダクション。ヴィブラフォン奏者Gary Burton「Las Vegas Tango」で聴ける歪んだギター使いのA2はBeatminerzミックス。

Black Rob “Whoa!” (2000)

Diddy率いるBad Boyクルーの重要人物として一時代を築いたハーレムエムシー、故Black Robによるクラブヒッツ。ネタはフランスのSSWフランソワ・ヴァレリー「Joy」の怪しげなオーケストラサウンドを暗く黒く深く太く。トラックはDITCからBuckwild。リリックは終始ウォウ!だが、ウォウ以外ハマるワードが見当たらない。

Blade “Get A Load Of Me” (1991)

shotahiramaのアルバム名はここから拝借

キャリア的には本作を含めた3タイトルしか残しておらず、ことこまかな詳細がどこを調べても一切の情報があがってこない。イリノイのシカゴでAaron WhighamことエムシーBladeが恐らく自主でリリース(B-FY RecordsってのがBladeの作品しかあらず)したであろう1枚。キーボードやベースなど参加ミュージシャンのクレジットがあり、終始演奏感強めのランダムラップ。初期ヒップホップに想いを馳せながら、まぁとにかくジャケがすんばらしい1枚なので出会えて良かったな、なんて。

Blest “The Blessin’” (2004)

Dilated PeoplesやLittle Brotherなどをリリースするカリフォルニアンヒップの象徴ABB Recordsより。因みにABBはAlways Bigger and Betterの略

ジャケにデカデカと書いてあるとおり、サンディエゴのジャズヒップグループSound Providersが全面協力したエムシーBlestのデビューシングル、いや、最早サンプロの12インチだと思ってよい。というのも、04年は唯一のエムシーであったProfileが抜けてしまった時期で、残されたトラックメイカーJay Skillzと天才ターンテーブリストSouloはその都度ゲストエムシーを呼ぶ形式で作品をリリースし出す頃。なので、本作もその流れを汲んでいることからサンプロ名義にしたっていいのかもしれない。表題曲はブルーノート最後のオルガンヒーローことLonnie Smith「Spinning Wheel」から鉄板ブレイクを使ったこれぞサンプロサウンドといった仕上がり。そしてSouloのスクラッチが本作でも火を吹く。

BMF “Steel Contraption” (2002)

ブギーでジャジンなフュージョンブレイクビーツはフロリダのトラックメイカーBMF(Bad Mutha Fucka)で、マイクを握るのは同郷のSwamburger。エレクトロファンクなヒップでめちゃくちゃ良かったけど、もっと良かったのはA2のBeef Wellingtonによるリミックス。めっちゃメロウなダウンテンポになっててかっけぇ。ちなみにみんなフロリダEighth Dimension Recordsの主要メンバー。

Bone Thugs-N-Harmony “East 1999” (1995)

オハイオ州クリーブランド産ギャングスタ、通称ボンサグがEazy-E総合プロデュースのもと同年にリリースするファーストアルバム「E. 1999 Eternal」でリードを飾るトラックがシングルカットされた12インチ。今でこそ当たり前だが、文字通り歌うラップ、ハーモニーを奏でるようなメロディを持たせたラップスタイルを確立したのは彼等。そんなパイオニアを分かりやすく堪能できる本作だが、特別、プリモがプロデュースしたA3なんかはメロウなブーンバップトラックに合わせて強面のサグエムシー複数人がユニゾンで華麗に歌い上げていく楽曲で、なんだか心打たれるものすらある。めっちゃいい曲だし。ギャングスタハモネプみたいな。

Boogiemonsters “Recognize Thresholds Of Negative Stress” (1994)

ブロンクス4エムシーズが1stアルバム「Riders Of The Storm: The Underwater Album」に収録していた人気曲をシングルカット(ちなみに2ndでは2人編成なのかな)。Ohio Players「Love Rollercoaster」ベースラインを主軸にフワフワ、夢の中で遊泳するような不思議系サウンドはサイケデリアでアブストラクトな雰囲気が魅力の彼等を余すことなく表現しきったトラック。ラップもなんだかスピリチュアルだし。プロデュースは初期Roots作品で見かけるD!によるもの。

Boostin’ Kev “That Be Boostin’” (1995)

プリモが当時まわしていたことでも知られるアングラ人気盤。全身Poloラルフローレンで着飾る通称Lo-Lifes(ローライフズ)なるポロギャングクルーのブルックリンエムシー。癖ありの変化球系トラックメイクに、ラガありのマフィン系フロウが気分にハマる日がたまーにあるっちゃあるそんなあなたにA4とB1な。

Brainwash2000 “Funk And Dues” (1998)

オリジナルは自主レーベルNext Shi? Recordsから98年にリリースされてる。再発は比較的安いから買おう!

プリモの「NEW YORK REALITY CHECK 101」にミックスされていたことで名前を知ったんだけど、彼ら(Naut JaggaとトラックメイカーTROOKULAのブロンクス2人組)のカタログは軒並み高値だしまず見つからない。んでやっと手に入ったセカンドシングルの正規再発。ニュージャージーのIll Adrenalineから2016年に300枚限定(黒盤が150枚、白黒マーブル盤が150枚、ってほんとかなぁ)。おいおい、やっば。シリアス系悪夢寄りイルトラック、ひぃぃ、くそかっこいいんですけど。ブロンクスアンダーグラウンド、最高級レベルの品質を約束する。

Brassmunk “Live Ordeal!” (2000)

ブルージーなギターリフがループされるダーティなロックサウンドに、やたらと猛々しいつば吐き系のラッパー陣。3人のエムシーを擁するトロントのグループによるキャリア2枚目のシングル。ギターネタはジョン・メイオールのバンドなどで活躍したHarvey Mandelで「El Stinger」という曲から。バックサイドはまさかのジャジンヴァイブスでびっくりした。

Brick City Kids “Brick City Kids” (1997)

腕相撲?ロゴは60年代オークランドで設立されたBlack Jazz Recordsというスピリチュアルジャズを主とするレーベルロゴをオマージュしたもの。さて、Brick City Kids、なにを隠そうニュージャージーユニットArtifactsの別名義プロジェクト。唯一の作品が腕相撲ロゴGhetto Gold Recordingsからリリース。プロデュースはBeatnutsのJuju率いるGhetto Professionals。Kool & The Gangの「Little Children」を使ったRnB風スムージーなバックサイドが名曲。これをまずは聴こう。

Brokin English Klik “Hard Core Beats / Here Come Da Hoods” (1993)

西のあいつとは同姓同名のまるで別人、東側のMack 10と、ゴキブリラベルのRoach MusicからDa’ Mad ScientistことPhase。ドマイナー系2MCがタッグを組んだWild Pitchメイドのハーコーシット。腹を殴るようなバスドラに、悪夢のようなベースラインとリフレインする女性コーラス。なにかやばめなとこへのゲートウェイトラック。

Brothers Uv Da Blakmarket “Livin In Da Bottle” (1992)

91年にニュージャージーで結成されたユニットで、実質的には2年しか活動していない彼等唯一のアルバム「Ruff Life」から最初の12インチ。ネタがまったく分からないけどジャズファンクなピアノとギターと、地味だがこれでしかないブレイクビーツがなんだかお洒落で完璧。転調が無いワンループで引っ張る感じが臭くてよい。マイナーニュースクール、隠れた名曲。ちなみにサビの”people in the bottle, time after time”はギル・スコット・ヘロンの「The Bottle」からの歌詞を引用。

Brothers Uv Da Blakmarket “Not U Again” (1992)

Cool Money CeeとDJ Menalによるニュージャージーのユニットから、タートルズの「You Showed Me」で聴ける裏打ちのオルガンと、Honey Drippers「Impeach The President」という定番ブレイクを組み合わせたダンサー受けの良さそうな12インチ。冒頭のキック&ベースなローサウンドからスネアが入るハイな瞬間が最高にヒップホップ。

Buckwild “Still Diggin’ Composition” (1998)

Lord Finesseや故Big LにShowbiz&AGなど各々が大活躍をしていたブロンクスのスーパークルーDITCからバックワイルド。同じくブロンクスのKRS-ONEやクイーンズのNas、さらにはブルックリンのビギーまで東海岸のヒップホップを中心にプロデュース面で支えてきたバックワイルドが珍しく自身の名義のみを掲げた12インチ(近年はソロ名義でアルバムをリリースしているが、それでもほんと最近の話)。本作には仲間内からO.C.やKurrupt Moneyを参加させたブロンクス純度100のヒップホップ。

Buddha Monk “Gots Like Come On Thru” (1997)

故Ol’ Dirty Bastardによって結成された所謂ウータン協会傘下のクルーBrooklyn Zuからメインエムシー、ブッダモンクのソロ12インチ。ラベル表記に& The B’klyn Zuとある通りDa Manchuz(マンチューズ)という仲間内クルーからDrunken’ DragonとEspionageが参加するZu FamにしてWu Famマイクリレーを披露。ネタはBob JamesとEarl Klugh共作の「Winding River」から。フックの"Wu! Gots like come on through、Su! That’s the call of the wu”はODBの「The Stomp」からで、アンクレジットだがODBが冒頭でうっすら登場。Earl Klughの哀愁感半端ないアコギリフがたまらん。

Busdriver “Get On The Bus / Everybody’s Stylin’” (2001)

ネタについて補足。ジャズハーピストDorothy Ashby「Canto De Ossahna」はアシュビーのオリジナル曲では無く、本当はブラジル最重要ギタリスト、バーデン・パウエルが作曲でコーラスをクアルテート・エンシーが担うMPBを代表するクラシック。アシュビーはカバーしているだけだが、やたらとアシュビー版がサンプリングされる

Freestyle FellowshipのリーダーAceyaloneが牽引するカリフォルニアのアングラクルー(シーン)Project Blowedに僅か16歳で加わった高速スピッターBusdriver。度肝抜く早口ラップとは対照的に、AceyaloneとはA-Team?にてタッグを組むエムシーAbstract Rudeの落ち着いたライミングをゲストに迎えたテンションの高低差ありすぎて耳ブルンなるフロントサイドがおすすめ。Fat Jackプロダクションで、ジャズハーピストDorothy Ashby「Canto De Ossahna」で聴けるフルートとギターのアンサンブルを使ったジャズヒップ。まじ、トラック良い。

Da Bush Babees “We Run Things” (1994)

フックの裏側で歌う”We run things, things no run we, Anything we done, it haffi done properly”というラインはジャマイカのダンスホールアーティストFlourgonの88年作品「We Run Things」からの引用

ブルックリンはフラットブッシュ発ネイティブタン傘下の3人組グループ。アリ・シャヒードによるプロデュースでミックスがボブ・パワーと、チームATCQで放った12インチは94年発売のファーストアルバム「Ambushed」からのシングルカット。トラックの雰囲気やコンシャスなリリックの内容にはまんまトライブを感じるが、エムシー3人がジャマイカやトリニダード・トバゴで育ったこともあり、レゲエ要素を存分に堪能できるところに新鮮さがある。

Bushwackas “Caught Up In The Game” (1995)

エグゼクティブプロデューサーなる立ち位置にFab 5 Freddyの名前があったり

ブルックリンのちょうど中央らへんにフラットブッシュ(例えばフィンスタ&バンディは北寄りのブッシュウィック)なんて地域がありまして、そんなヒップホップのセントラル中のセントラルから現れたグループが、外れのブロンクスからDITC若頭Buckwildをプロデュースで呼び寄せたレイドバックメロウな1枚。グループにはTape KingzからソロでリリースしているFish B.Oneも在籍。

Bustin’ Melonz “Flippin’ Off The Tip” (1994)

同年リリースのフルアルバム「Watch Ya Seeds Pop Out」からのシングルカット

ことあるたんびにブルックリンスターイル!って煽ってくるサグっぽい掛け合いも、やたらバスタっぽい声質が1人いる感じも、ワンループで押し切るストロングスタイルにもなかなか聴き応えあるブレイクビーツ隠れてたりと、なんだか好感度しかない。ブルックリンはフラットブッシュのカルテットが残したマイナーヒップ良質盤。エモーションズの「Blind Alley」を使ったメロウなA2が好き。

C-


Cage “Radiohead” (1997)

栄光のFondle’Em唯一の闇作品、Ten Years After「As The Sun Still Burns Away」をまんまに、UFOみたいな効果音と、間の悪い3連ディレイ。薄気味悪いライミングと、なんだかとにかくおっそいビート。プロデュースはブルックリンの変態Necroで、マイクはエミネムとのビーフで知られるCage。癖強スカムを欲する日にどうぞ。

Cam Feat. Afu-Ra “Voodoo Child” (2000)

アブストラクトからジャズヒップにクラブものまで、フランスのビートミュージックシーンを長年に渡って牽引してきたパリジャンDJ Camが01年にリリースするアルバム「Soulshine」からシングルカットした1曲。Jeru The Damajaのサイドエムシーとしても知られるブルックリンマイカーAfu-Raをフィーチャーし、まさかのDJ Premierがプロダクションを担当。バックサイドにはアルバム未収録のDJ Cam本人ミックスをカップリングさせているも、プリモは伝家の宝刀フリップビーツを惜し気もなくかましているため、正直帝王の独り勝ちといった具合に。とにかくプリモがフルスロットル。

The Candy Store “Memories” (1997)

それなりの値段はするけど、買っても損はない。バッツバツのメロウを楽しみたい人へ

こんなにメロウな曲、他に知らない。ブルックリンの最下層からメロウの最上層へ、アングラディガー全員に頷いてほしいヒップのレアグルーヴ。キーボーディストのジョージ・デューク「Capricorn」をネタに使った表題曲はもう失神もの。甘すぎて蕩けちゃう、極上のスイートミュージック。バックサイドはFive Stairsteps「Danger She’s A Stranger」ネタで、こっちは渋くジャズに決めるとか。かつてビートマイナーズのEvil Deeが流しまくってたらしいとのネット書き込みがあったり。

Cash Money Click “4 My Click” (1994)

トータルセールス1600万枚のラッパー兼人気俳優とか、嘘みたいな一時代を築いたクイーンズエムシーJa Ruleが18歳!?の時に在籍していた3人組グループがリリースした最初の12インチ(結果的には2枚しか出せてない)。同レーベルからジェロニモも参加してるのよね、ジェロニモの声が好きな自分としてはそれだけで良いし、え、トラックかっこいいよね。みんな使う(Showbizの「Next Levelプリモ版」やローフィネ「Ya Better Recognize」など)鉄板ネタの、トランペット奏者メイナード・ファーガソン「Mister Mellow」をクイーンズっぽく。Irv Gottiの手腕が光る。

Caveman “I’m Ready” (1991)

アメリカ最大手のヒップホップレーベルProfileと契約した最初の英国産ヒップトリオが91年にリリースしたファーストアルバム「Positive Reaction」よりカットしたシングル。ジミヘン「Crosstown Traffic」での有名なギターリフをまんまフックに使ったUKミドルで、どうやら日本では車のCMに使われていたらしい。因みに冒頭の掛け声はエディ・ボーという50年代にニューオーリンズで活躍したRnBシンガーの「Hook and Sling」という7インチから。

Caveman “Positive Reaction” (1991)

イギリスはバッキンガムシャーにあるハイウィカムって街からきたMCM、The PrincipleとDiamond Jのトリオ

UKヒップへの偏見を覆し、きっと本国もビビったであろうバリバリナイスミドルなCavemanの1stアルバム。リリースはどうやらイギリス人アクトとしては初の契約だったニューヨークProfileレコーズから。JBにマーヴィンと、大ネタばかりが目立つ中、ジミヘンの「Cross Town Traffic」リフをまんま使った「I’m Ready」はやっぱり名曲。

Caveman “The Whole Nine Yards” (1992)

ブリットコンシャス決定盤、前作に引き続きこれでもかってぐらいどストレートなミドルスタイル炸裂2ndアルバム。さすがはイギリス人初の米Profile契約アーティスト。本場をも凌駕するセンス抜群の3人、その気になりゃこれぐらい出来ちゃうもんね。名曲「Streetlife」がシングルに収録されていたトラックとは別ミックスになっていて、オルガニストCharles Earland「Letha」を使った最強ジャズファンクに。これは必聴。

Cella Dwellas “Good Dwellas” (1995)

元ネタのレス・マッキャン「Go On And Cry」がまずかっこいい。本作でループされてるのは冒頭のピアノ部分だけど、ジャジーなのはそこだけで実はその後から泣きのギターにコーラスにマッキャンが叫び歌うソウルフルな展開になっていく。是非元ネタもゲットして欲しい

ブルックリンはフラットブッシュの2MCが行く手を阻む真っ赤なゴリゴリジャケとは裏腹にジャズピアニストのレス・マッキャン「Go On And Cry」冒頭ピアノパートをまんま使った色気たっぷりジャジーヴァイブスな12インチ。メロウな元ネタに心掴まれるも、それよりなにより雨が降り滴るような優美なハイハットに夢から醒めるスネアがなんだかもうさすがとしか言えないNick Wizプロダクション(Nick Wizはニュージャージー出身)にお手上げ。インストを静かに聴いてほしい。

Cella Dwellas “Perfect Match” (1996)

97年からはユニット名をThe Dwellasと短く改名

Nick Wiz印の2MCフロムフラットブッシュ・ブルックリン、UGとPhantasmが同年にリリースしたファーストアルバムからシングルカットされたクラシック。ネタは64年にオハイオで結成された泣く子も黙るソウルトレインKool & The Gangの「Winter Sadness」をスムージー仕立てに、さらにはGURUのIll Kid作品でお馴染み女性ヴォーカリストBaybeが華を飾るという丁寧に作り込まれた上質メロウ。Nick Wizが凄い、って話よね。

The Cenubites “The Cenubites” (1995)

オフィシャルの再発はそもそも字体がまったく違うというのと、大前提でユニット名がThe Cenobitesになっている(UがOになってる)。収録曲も2曲多いが、なにより問題はU表記のブート盤が2種類ほど?出回っていて、こればっかりは見た目がまったく一緒で見極めが困難。Runout部分にDCHARLESという刻印があれば一応オリジナルことらしいがMATもしっかり確認して慎重に買うことをおすすめする

90sヒップを東側で支えた伝説的ラジオ番組「Stretch and Bobbito」にてパーソナリティを務めていたボビート(ネトフリでこの番組のドキュメンタリーがあるよ)が運営していたレーベルFondle’EMから記念すべきカタログナンバー1番目。アングラの父Godfather DonとウルトラマグネティックなKool Keith(Ultramagnetic MCs)による濃すぎるジャイアントユニット。名前だけでお腹いっぱい。全曲ドンプロダクション。因みにオリジナルは7曲収録で、再発”Cenobites”には9曲収録。

Cesar Comanche “Miss You (Remix) / The Future” (2005)

Little Brotherのエムシー陣も所属するノースカロライナの人気クルーJustus Leagueを牽引するローカルエムシー、シーザー・コマンチ。地元のスーパースターでもあり、勿論クルーとも親しい間柄でいた9th Wonderをプロダクションに召喚し制作したアルバム「Squirrel And The Aces」からシングルカットされた2番目の12インチが本作。フロントサイドはPhonteとThe Foreign Exchangeなるユニットを組んでいたトラックメイカーNicolayがプロデュース、バックサイドにはBig Poohがマイク参加。両サイドともにスロービートだが、とにかくLittle Brotherっぽさを感じられて美メロ好きにはたまらんだろな。

Cesar Comanche “Up And Down” (2005)

ノースカロライナで15人ものクルーを擁するJustus Leagueを牽引するエムシー、シーザー・コマンチが同郷の星Little Brotherから9th Wonderをプロデューサーに召喚しリリースしたソロシングル。女性ジャズ(アシッドジャズ寄り)フルート奏者ボビー・ハンフリーが自らヴォーカルを務めるブルーノート作品「Just A Love Child」での男性コーラス部分"Up and down〜"をがっつり使ったこれぞ9th Wonderな美メロソウルが極上の高揚感を生み、なんだか気分があがる。コマンチがマイクパスするカナダの女性エムシーEterniaの太い声も魅力的。ちなみにEterniaはDef Juxからのリリースで知られるボストンエムシーMr. Lifの奥様。

Tha Chamba “Sayahlilsumthin” (2019)

セントルイスF5 Recordsのオーナーは僕が大好きなDJ Crucialなんです

シカゴアングラで誰の目にも触れる事なく人知れずタフにヒップしてホップしてハッスルしていた2MC1DJトリオ。95年にCDとカセットのみでリリースしていた彼等唯一のアルバム「Makin’ Illa Noize」をベルギーのTaha Recordsが18年に正規ヴァイナル化すると、翌年19年には、95年発売のハードコアクラシック12「Sayahlilsumthin」をミズーリ州セントルイスのF5 Recordsが7インチで再発。で、これがその7インチ。オリジナルには未収録だったアルバム曲「Da Lit.」がバックサイドに収録されていてファンにはたまらない内容。これからもヴァイナル化を続けて欲しいなぁ。

Charizma & Peanut Butter Wolf “Here’s A Smirk” (2003)

カリフォルニア・サンノゼの伝説的MCで93年に亡くなったCharizmaがとにかく好きで好きで。カリズマの相棒でもあるPBWが現在運営するレーベル・ストーンズスロウから発売された未発表音源(91年から93年の音源)アルバム『Big Shots』からのシングルカット。冒頭10秒ほどのサックスはチャーリー・パーカーのライブアルバムから「Shaw ‘Nuff」をそのままループ。アルバム未収録の「That’s Word」がめっちゃかっこいい。

Charizma & Peanut Butter Wolf “My World Premier” (1996) 

初期ストーンズスローはバイブル級のカタログばかりね。これカタログ1番だったのか!故カリズマを従えたビッグボス・ピーナッツの強行突破系ブレイクビーツがスピーカー切り裂いちゃう感じ、ハイがぐしゃんてなるのも承知で叩き続ける感じ、わかる?これが俺のベーシックなのよ。上ネタ一切無し、これが俺が好きなヒップホップ。とかいって、バックサイドは淡いジャジンな上ネタが揺ら揺ら煌めくお洒落トラック。

Citizen Kane “Raisin Kane” (2018)

Down To ErfやSic Senseらとカナダはトロントのアングラブーンバップを盛り上げてきたデュオエムシー(Jeff DukeとRob Paris)が、97年リリースの激レア12インチ「The Epic」に収録されていた曲を7インチで限定再発。ジャズ〜フュージョン系ピアニスト、ボブ・ジェームスの「Nights Are Forever With You(これイングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーのカバーなんだって)」頭出しで聴けるピアノを早回しでループ。そこへ歯切れのよいブーンバップ。最高。これ、トラックメイクはカナディアンヒップのゴッドMain SourceからK-Cut先生によるもの。

Citizen Kane “Soul Survivor” (2018)

トロントのアングラヒップシーンを支えてきたDown To Erfから、トラックメイカー2人WallとSteelによるプロダクションユニットErf Productionsが同シーンで活動していたCitizen Kaneをプロデュース。表題は95年リリースの、NasやBlack Moonなどが掻き集められた謎コンピ「...It's All Good」に収録されていた1曲。Jeff DukeとRob Parisによる気怠い掛け合いも良いが、咽び泣いてるかのようなアダルティなベースラインに耳が持ってかれる。バックサイドにはWall&Steel未発表曲のインストトラック「Scartown Beats」が収録。こっちはがっつりジャズヒップ。

Climber “Downtown Loop” (2004)

タイトルの”ダウンタウン”は2人が暮らしてきたマイアミ、サンティアゴ、シアトル、横浜、東京を意味する

兎にも角にもMPBクラシック、ミルトン・ナシメント「君がなれた全て (Tudo que você podia ser)」をがっつり使った涙腺系アコースティックギターが沁みるブラジリアンメロウ「Cafe con Piernas」がおったまげるほど良い(ボストンのMission:も「Contagious」のリミックスで使ったね)。ハイドアウト系のメロウインストが好みの方は悶絶級の大名曲。フロリダ州マイアミからやってきたチリのトラックメイカShiftと日本人DJ Tosh(トシヤ・フジイ)によるブレイクビーツ大名盤。アブストラクトからエレクトロニカリスナーにも自信を持っておすすめできる。

Climber “Second Hand” (2005)

ミルトン・ナシメントをネタに使ったMPB系ブーンバップ「Cafe Con Piernas」という隠れたクラシックを持つマイアミのアブスト系トラックメイカー2人組(チリ人Shiftと日本人DJ Tosh)。キャリア2枚目の12をリリースするのは、Five Deezをはじめとする電子ライクなヒップを扱うCounterflow Recordings。とはいえ、本作ではダブルサイドでゲストにマイクを持たせ、ネタもジャズやファンクっぽいブレイクスにスクラッチまで、わりかし真正面からヒップホップ濃度を上げにきた印象。なんにせよ、トラックがうまい。

CMA “The Best” (1999)

オークランドのユニットMystik JourneymenからPSCことエムシーLuckyiamと、Luckyiamと同じLAコレクティブに所属するLiving Legendsからトラックメイクも出来るエムシーThe Grouchが2人でタッグを組んだユニットCMA。99年にリリースしたファーストアルバム「Overall」からカットされた12インチでリリースは日本のMary Joy Recordings。ミステリアスなヴィブラフォンネタに、分厚いベースライン、硬いスネアにフィンガースナップ、スロービートにシックに。そう簡単にはジャズヒップとは言いたくないダークでハードコアな雰囲気が魅力的。バックサイドの「Why I Crew」にはオークランドのクルー、ハイエロからPep Loveがゲストエムシーとして参加してるうえトラックはThe Grouch。これもまたベースラインえぐい。

Common “All Night Long” (1998)

シカゴの英雄が飛ばした稀代の大ヒット3rdアルバムからフィラデルフィアのThe RootsがプロデュースしたRnB寄り12インチカット。ジャケにも写っているエリカ嬢(いつ聴いても萌える声)をコーラスに迎えたジャジーヴァイブスなクラシックは無敵感半端ない。US80’sガールズグループMary Jane Girlsの大ヒット同名曲から一節、エリカのコーラスとしてそのまま引用。(因みにMJGのこの曲はFGナイトでその昔、キックのKREVAが必ず流していたらしいとの情報を現場に足繁く通っていた人から入手)

パンクファンクなる奇抜なジャンルを聖地モータウンでひとり体現したリック・ジェームス、そんな奇人によるプロデュースでデビューしたLAガールズグループ世紀の大ヒットソング。オリジナルは83年で、これは95年にUKからリリースされたクラブ色強めのリミックス(ビートがだいぶバウンシー)。地に足ついたオリジナルバージョンがB2にしっかり入ってるので安心。コモンとエリカ・バドゥペアのネタとしてじゃなく、ダディケンやメリーJなど無数のヒップアーティストがカバーやサンプリングしている

Common “One-Nine-Nine-Nine / Like They Used To Say” (1999)

アングラからグラミー賞まで、ヒップホップの歴史を創り続けるシカゴの英雄CommonがNYCアングラを牽引したRawkus Recordsのレーベルコンピ「Sound Bombing 2」に提供した曲を12インチカットした1枚。Brand NubianのSadat X を連れ添って歌う、いかにもコモンらしい美メロトラックはRawkusお抱えトラックメイカHi-Tek。バックサイドにはシカゴアングラ(GravやAll Natural、Daily Plannetなど)を支えたDug Infiniteがプロデュースするカッツンカッツンのファンキンブーンバップが収録。最高に楽しいミニマルトラックの中で、一際目立つ激渋スクラッチ、犯人はデラソウルのMaseoでした。

Common “Reminding Me -EU-” (1997)

ローレルのアーバンソウルクラシック「Mellow Mellow Right On」を使ったコモンの大ヒット曲を、EU盤オンリーでフィラデルフィアの看板Rootsがジャム。オリジナルと変わらず超絶メロウなサビ部分はシャンティ・サヴェージが歌ってて、あぁ気持ち良き、ルーツの演奏もありナイトクラブ感が増したネオソウル寄りな仕上がりに。あり寄りのあり。これもシカゴ、これもコモン。ちなみに家族写真のジャケはUS盤(33回転)で、EU盤だとこの学校?ジャケ(45回転)。

Common “Reminding Me -US-” (1997)

シカゴのソウルシンガー、ローレル・サイモンことLowrellによる79年クラシック「Mellow Mellow Right On」からあの発明級ベースラインを使ったコモンの大ヒット曲。艶やかで高揚感半端ないサビ部分は、これまたシカゴから当時ビルボードでも結果を出したRnBシンガー、シャンティ・サヴェージが歌いあげる。キラキラした素敵な夜に、みんなでシャンパン片手に踊るやつ。この家族写真ジャケがUS盤(33回転)で、Rootsがリミックスしたバージョンが表題に入るヨーロッパ盤(45回転)は学校ジャケ。

Common Sense “Resurrection” (1995)

アーマッド・ジャマル・トリオの「Dolphin Dance」から零れ滴るようなピアノリフを魔法でループさせた夢みたいなクラシック。同タイトルのアルバムからのカット。誰しもが一度は聴いたことのあるシカゴヒップ決定盤はお馴染みコモン(因みに97年から"センス"を取除きコモン名義に)お抱えプロデューサーNo.I.D.によるトラックメイクで、"美メロ"なんて切り口のヒップに誰もが度肝を抜いたんだろうな。ちなみにこの12インチ、意外とハイライトはLarge Professor師匠によるリミックス、しかも2曲。こっちも負けないぐらいかっこいい。

Common Sense “Take It EZ” (1992)

コモンのデビュー作にあたる12インチ、なので表記も例のコモン"センス"(LAで活動していた同じ名前のレゲエバンドから訴えたらしい)。ネタはレアグルーヴ名作RASAの「Everything You See Is Me」から「When Will The Day Come」冒頭のギターでこれがそもそも感動級のメロウ。最早元ネタのRASAが良すぎてコモンどころじゃないので、是非A2とB1のインストを是非(Tony Orbachのサックスが火を噴いてる)。プロデュースは2pc. drk.というユニットで、何を隠そう片割れはNo I.D.です。

ジョージ・ハリスンやスティーヴィー・ワンダーらが当時傾倒していたヒンドゥー教系の新興宗派クリシュナ、その布教活動の為に制作されたAOR作品。って嘘みたいな話だが、わりかし本当の話。とはいえ、Common Senseが「Take It Ez」で使ったB3をはじめ(Kerri ChandlerもMixでまわしてたね) 、確かに全曲神がかった荘厳なメロウソウルに何も感じないとは言わせない。歌ってるクリス・マグダニエルズは当時16歳で、お兄ちゃんでギターのロンドン・マグダニエルズは17歳だったという記事を見つけた。お父さんはロバータ・フラックにも楽曲提供しているユージーン・マクダニエルズ

Company Flow “Eight Steps To Perfection” (1996)

この作品からBigg Jusが加入し、3人体制に

ブルックリン、いやヒップホップ史を代表する異端作と謳われる12インチに針を落とす。ロービットなマシンドラム、粗削りでロウなベースライン、ダブ処理が施された奇天烈な電子音は回路内を窮屈そうにループする。アナログ賛美のそれまでのヒップホップには存在しえなかったマシンライクなデジタル概念を感じ取ることが出来るだろう。当時は他を寄せ付けない孤高の存在だった彼らにも、その後数多くのフォロワーが生まれ、その1人に俺がいる。ヒップホップ名乗るならアンダーグラウンドかつオルタナティブであれ。

Company Flow “End To End Burners” (1998) 

70年代から活躍するグラフィティアーティストPHASE 2はフューチュラやラメルジーと並ぶほどのビッグネーム。彼が亡くなった時にはあのSupremeも公式で追悼コメントを出していたほど

アングラの言葉そのままにインディペンデントかつオリジナルなヒップホップを牽引してきたカンパニーフロウ。それまではLibra Recordsや、自分達が運営するOfficial Recordingsからのリリースがメインだったが、この作品あたりからRawkusと契約。群雄割拠のブルックリンで彼等が1番先頭を走っていた証がこの12インチに。ハードコアなのに、ヒップなのに、デジタルで変拍子でオルタナ。ビートメイカーEl-pの才能が爆発してる。ジャケは19年末に亡くなったブロンクスのグラフィティアーティストPHASE 2によるもの。

Company Flow “Juvenile Technique” (1994)

ブルックリンオルタナティブ、ご存知カンパニーフロウ。そんな彼ら(この時はEl-pとMr. Lenのみ。Bigg Jusはこの後のシングルから加入)のキャリア1枚目にあたる伝説的12インチ。El-pによる煙たくアブストラクトな空気感がなんたらなんたら云々もクソもスパンスパン切り裂くダウンビートはいつまでも唯一無二。後ろで鳴るディレイが効いたギターはジャズファンク〜フュージョン系キーボーディストBob Jamesの「I Feel A Song」冒頭からサンプリング。ちなみにオリジナル盤はラベル右上にバーコードがあり、もっと蛍光色っぽい黄色。

Company Flow/Cannibal Ox “Iron Galaxy/DPA” (2000)

El-pが運営するDef Juxレーベル(デフジャムに名前が似てるってんで訴えられてましたが)から、自身のブルックリングループCo-FlowとハーレムのユニットCannibal Oxがそれぞれ12インチまるまる1枚ずつ使った2枚組スプリット作品。El-p信者にはたまらぬストレンジブーンバップばかり。ジャケはDan Ezra Langというアーティストによるもので、スプライトやノキアの企業ものでも活躍している。

The Concept of Alps “Loudmouths / Check The Status” (2020)

通称Alps Cruとも呼ばれる彼等だが、AlpsはメンバーのDJ Alejan、P da Wicked、Shorty Livedそれぞれの頭文字を繋いで作られた造語。とはいえ、グループロゴがアルプス山脈を連想させるようなデザインなのが可愛い

キングオブ90sアングラ、ミズーリ州セントルイスに実在した神話級のレジェンドクルーThe Concept of Alps。95年収録だが08年にプライベートレーベルから限定300の12インチで初出しリリースされた激レア盤「Loudmouth」を、同じくセントルイスでF5 Recordsを主宰していたDJ Crucialにより2020年に7インチとして再発されたのが本作。ネタはセルジオ・メンデスの"星屑のボサノバ"こと「So Many Stars」で聴ける儚いオーケストラをまんまワンループ。フックではNasの「One Love」がスクラッチされる秋の夜長におすすめのスロウヒップ。

Consequence / Natruel “Nobody / Natruel On Top” (1999)

ドイツはケルンのGroove Attack傘下でUSヒップのみを取り扱うSuperrapinレーベル。レーベル名を冠した人気シリーズから派生した本作はQ-Tipの従兄弟にあたるNYCエムシーConsequenceを筆頭に、Rawkus系Shabaam Sahdeeq にMike ZootさらにはTru Criminal Recordsで馴染みのF.T.など、アングラヘッズ悶絶のマイカー陣が揃いに揃ってパスザマイクするバンギンチューンを収録。しかもプロデュースはCellar SoundsメイカーNick Wiz。個人的にはヒーローばかりで、クレジットだけで満足の1枚。

Cookie Crew “Secrets Of Success” (1991)

イギリスのガールズデュオがやたら上手なラップと、なんとなくハウス寄りのダンスミュージックを武器にヒップホップ本国へ。ブレンダ・ラッセルの「A Little Bit Of Love」をネタに使った彼女たちの代表作は一躍クラシックになり多くのDJに重宝されるまでに。Main SourceのK-Cutによるリミックスと、このUS盤にしか収録されていないプリモによるプロデュース曲が嬉しい。

The Creators & Ambivalence feat Mos Def & Talib Kweli “Another World” (1998)

翌年にリミックスが出るんだけど、アーティスト名はMosとタリブだけに変わってCreatorsの名前はクレジットのみに

我らがP-Vine発信の日本独占企画ヴァイナルとゆうことで、ワールドワイドなジャパンオンリー。イギリスのプロデューサーユニットCreatorsがトラックメイクし、マイクを握るは当時ブルックリンで最も勢いのあったRawkusコンビまたの名はチーム・ブラックスター。どことなくDJ Spinnaを彷彿とさせるスペーシーヒップなトラックに虜。A2にはNumbさんの作品で名前を見かけたことがあるジャパニーズトラックメイカーAmbivalenceによるリミックスも。

The Crooklyn Dodgers “Crooklyn” (1994)

ラリー・クラークの映画『KIDS』にて、公園で葉巻を崩してマリファナで巻きなおしてみんなで吸うシーン。あの場面でめっちゃくちゃクールに流れてる曲がこのインスト。ちなみに公園に向かうシーンではATCQの「Oh My God (Know Naim remix)」が流れる

1代目クルックリンドジャースの12インチ。ちなみに3代目まで存在するが、楽曲もメンバーも初代が一番かっこいい(ブーキャン派ブラックムーン総長Buckshot、ダディケーン率いるクイーンズのジュースクルーからはMasta Ace、そして孤高のリリシストSpecial Ed)。プロデュースはトライブだし、スパイク・リー映画から派生したプロジェクトでありながらその完成度は企画モノとは思えないほどにかっこいいし、最早クラシック。

CrossLakes “Blacksmith” (2019)

Solar Cはカナダ・トロントだが、トラックメイカーJon Rogersはオハイオ州コロンバスを拠点にしている。カナダとアメリカ国境付近には5つの湖、通称五大湖があり、レイクスをクロスしたコラボレーションであることがこのユニット名の由来ではなかろうか

90sカナダアングラを代表するトリオDown To Erfの中心人物であったMathematik、彼の従兄弟にあたるというSolar Cがエムシーを担う次世代カナダアングラユニットがこのCrossLakes。ハイをエグく削ったローファイサウンドなギターリフをしつこくループしたうえにさらなるギターを重ねるとか、字面にするとハードでうるさそうなネタも何故かめちゃくちゃメロウでソウルフルに聴こえるのは相方Jon Rogersのプロダクションスキルが為せる技か。とにかく心地よい。嘘みたいに心地よい。上にのっかるSolar Cと一緒に歌うRelicことRel McCoyも同じトロントで活動するエムシー。レーベルも勿論トロント、Chuku Records。

Crown City Rockers “Another Day” (2004)

Missionが改名後にリリースした最初の12インチ(メンバーMoe PopeがElectricへ移籍したことが理由なのか、拠点をボストンから西のベイエリアに移し改名)。アル・グリーンがカバーしたドアーズ名曲「Light My Fire」をネタに、中心メンバーのHeadnodicがトラックメイクした表題曲にはゲストとしてDJ Zephがスクラッチを披露。完全インストトラックのA3にはニューヨークのJazzバンドSouliveのギタリストEric Krasnoが参加する他、バックサイドには表題曲のリミキサーとしてPeople Under The StairsのThes Oneが。Mission期よりも遥かにバンド形態でのケミストリー感が強い、アンサンブル型ソウルジャジンなヒップホップを楽しめる。

Cypress Hill “Boom Biddy Bye Bye” (1995)

ラティーノヒップのパイオニア、サイプレスヒルが95年にリリースした3rdアルバム「III - Temples Of Boom」からシングルカットした1枚。ジャズピアニストのチック・コリアとヴィブラフォン奏者のゲイリー・バートンがタッグを組んで制作した「Song To Gayle」で聴けるヴィブラフォンをメインループにしたMuggsトラックの表題曲は当然かっこいいが(LPバージョンはバックサイドに)、いや、まじでそんなんよりもなによりもA1のFugees(Wyclef)リミックスがやばい。ジャジーめだったMuggsとは真反対の、ホラー感?ダークネス感?だかでまさかの鬱めなホラーコアトラックに。これがめちゃくそかっこいい。

Cypress Hill “Throw Your Set In The Air” (1995)

サウスゲートカリフォルニアにてラティーノSen Dog、チカーノB-RealにイタリアーノMuggsらで結成された非ブラッククルー。オリジナルは全然好きじゃないが、A4収録のMuggsセルフリミックスでMarshall, Donovan, Broomfield「That’s Love」をまんまループさせた極上Slow Rollバージョンがやばい好き。最高にチリンチリンメロウ!A5のインストはずーっと聴いてられる。バックサイドにWuのRZAプロデュース曲「Killa Hill」あり。

D-


Daily Plannet “Love It / Unfourgettable Force” (2003)

ヒップからポストロックまで、シカゴアングラを牽引したAll Natural Incよりキースとケヴィンの双子のバークレー兄弟から成るユニット。表題曲は同じシーンで活動する歌姫Rita Jとともに決めたソウルフルなブーンバップ。マイナーな曲だが、A2のリミックスはNYCスクラッチ神Roc Raida (X-ecutioners)なので是非。ちなみにA3にはカリフォルニア・オックスナードからWildchildとMEDが参加。

Daily Plannet “We Like To Party” (2002)

All Natural Incから01年にリリースされた所謂Capital D周辺のシカゴヒップ総まとめのような名盤「A Close Knit Family」にもしっかり参加していた2MC。プロデュースはNO I.D.と共にCommon及び初期シカゴヒップを支えたDug Infiniteだが、好みがはっきし別れそうな裏打ちのレゲエトラック。ちなみに05年にリリースされた「Triple Beam」がEl Da SenseiやWildchildが参加していて人気盤になっているので、まずはそちらを薦めたい。

Da Lench Mob “Planet Of Da Apes” (1994)

当初はTha Lench Mobと表記していて、若きデル(Del Tha Funky Homosapien)なんかも居たLA屈指のポッセ。92年からはShorty、J-Dee、T-Boneの3人で音楽グループとして活動

コンプトンからストレートアウトしてきたIce CubeニキをバックにつけたカリフォルニアンクルーDa Lench Mob。基本は裏方にまわるニキのプロデュース力で本作2ndアルバムも安定の超ド級ディープベースにブリブリシンセとヘラヘラニヤニヤしたようなマイクリレーでこちらもニンマリ。絵に描いたような大文字のGで盛大にファンク。ちなみにPのファンクからブッツィー・コリンズがベースを弾きにやってきたB1がまじで好き。

D’Angelo “Brown Sugar” (1995)

ネオソウルの立役者、みんな大好きディアンジェロ様。不朽のデビューアルバム「Brown Sugar」から表題曲を収録したバッツバツジャケでお馴染みの12インチ(これはUS盤ジャケで、UK盤だとジャケが差し替えられているうえ、そもそも別ミックスが収録されているなど内容に違いがある)。プロデュースはATCQのアリ・シャヒードということもあり、よーく聴くと意外と単純にループで成り立ってるヒップホッププロダクション。なのにどうしてこうもメロディが生まれては展開されていくように聴こえるのか。次元違いのヴォーカルがR&Bを新しい方向へと連れ去った瞬間。

D’Angelo “Lady” (1996)

歴史的名盤で、それが彼のファーストアルバムである「Brown Sugar」からカットされた12インチにはRaphael Saadiqプロデュースのアルバムバージョンではなく、DJプレミアがリミックスを施した"ストリート"バージョン他、全4種のプリモ・ミーツ・ディアンジェロ楽曲が収録されている(これはUS盤で、UK盤だとまったく収録内容が違うので注意)。極め付けはゲストにクイーンズブリッジからNasの右腕AZが参加しているなど、我々ヒップ勢にもファンが多い1枚。何気にバックサイドB3に収録されているロンドンでのライブ音源が良い。

D’Angelo “Me And Those Dreamin’ Eyes Of Mine” (1996)

ネオソウルムーブメントを一身に背負う事になった世紀の傑作アルバム「Brown Sugar」からの12インチカット。コモンの「I Used To Love Her」と同じネタ、ジョージ・ベンソン「The Changing World」を使った最上級にエレガントなDreamy Remixや、赤鬼レッドマンが参加したDef Squad Remix(どちらもエリック・サーモンがミックス)も気高く上品。だが、ハイライトはプリモミックスのバックサイド。誰しもが平伏す究極の完成度で、書く言葉も見つからない。

Dead Prez “It’s Bigger Than Hip Hop” (1999)

なんじゃこのトラック!小刻みハットにブリブリのワブルベース!?かのSupremeもコラボした、いわゆるカウンターカルチャー系の脱90s型完全ゼロ年製ブルックリンユニット。そんな彼等の代表曲「Hip Hop」をバックサイドに搭載し、フロントにはカニエ・ウエストによるリミックスを。トラップとダブステップを混ぜ込んだヒップホップを、カニエがチョコにして炙って吸って吐いたようなニュータイプのブーンバップがめちゃくちゃかっこいい。

Declaime “Enjoy Your Stay / Life” (2003)

カリフォルニアの下手ウマシンガー兼ラッパーDudley Perkinsが、お馴染みのDeclaime名義で04年にロングビーチUp Above Recordsよりリリースされる「Conversations With Dudley」からシングルカットされた1枚。Stones Throw期以前から、本名名義含め20年以上と長きに渡り相棒役にまわるMadlibが仕掛けるゆらゆらビーツと、ダドリーの相変わらず歌うでもラップするでもないようなあるような酔いどれハミング。カテゴライズが難しい唯一無二のジャンル感は、2人の抜群の相性によって未来永劫続いてゆくはず。

Declaime “Illmindmuzik” (2001)

Dudley PerkinsがDeclaime名義で99年にビバリーヒルズのGood Vibe RecordingsからリリースしたデビューEP(ミニアルバム?)で、オリジナルはインストも含めた2枚組だが本作は本編のみ全10曲(オリはクリーンだが、こちらはダーティーバージョン)でリイシューされたドイツ盤。ダッドリーといえば歌もののソウルジャジンなイメージが強いなか、個人的には本名名義含めDeclaime史上1番ヒップホップに傾倒している内容かなと。トータルのプロデュースは言わずもがなMadlib、ミックスがKut Masta Kurt。A1にはDilated PeoplesからEvidence、LootpackからWildchildが参加。名曲「Roll’em Right」はB2に。ちなみにVocalレコーディングはその後ストーンズスロウでお世話になるPBWのスタジオ。

Declaime “Never Ending” (2000)

Dudley Perkins名義でも、本作Declaime名義でもわりかし創世記にあたる00年リリースの12インチ。フロントサイドはカリフォルニア・オックスナードのレジェンドクルーLootpackにて初期メンバーだったKankick(Cankick表記)プロダクションのスロービートも良いが、やはり注目はMadlibのバックサイド。なにが注目って、みんな愛してやまない西海岸ソウル〜AORクラシックSteve Parks「Movin’ In The Right Direction」を使う反則技の爽やかメロウ、さらにはDJ Romesがスクラッチとかほんと大変。全編Lootpack印でなんだかグッとくる1枚。ちなみにこの曲は99年にリリースされたDeclaimeのデビューEP「Illmindmuzik」にも収録。

Declaime “Still Waters / Always Complete” (2002)

カリフォルニアはオックスナードで繁栄したMadlib一族及びLootpackクルーから、我が愛すべきヘロヘタウマ系シンガーDudley Perkins。この癖強な歌い手が選りすぐりのビートメイカーらとタッグを組み、謂わばライム特化型のスタイルへと変身したのが本作Declaime名義での1枚。代々伝わるヒューマンクオンタイズビートを展開するのはMadlibの実の弟Oh Noで、スクラッチはLootpackからDJ Romesが参戦。オックスナードファミリアな1枚。

De La Soul “Buddy / The Magic Number” (1989)

心臓の音ではじまるターナ・ガードナーによる特大ディスコブギークラシック「Heartbeat」をまんま使いしたデラ最強ヒットシングル。頼れる兄貴達ジャングルブラザーズを先頭に、妹モニーラブから姉さん時間ですラティファ、さらには最強末っ子ティップまで家族総出のネイティブタンポッセ。ちなみにこのジャケはUK盤で、カップリングにはChad Jacksonによるミックスで聴ける「The Magic Number(1-2-3 Mix)」と「Ghetto Thang(Ghetto Ximer Mix)」の組み合わせで3曲収録されている。

De La Soul “4 More” (1996)

同年リリースの傑作アルバム「Steaks Is High」からシングルカットされた1枚でフィラデルフィアの人気RnBデュオ、ジャネイががっつりフィーチャーされた人気チューン。ジャズドラマー、チコ・ハミルトンの62年作品「A Rose For Booker」で聴けるスムージーなベースラインをメインループにした滑らかジャジンヴァイブス。ネタの雰囲気をそのまま継承した静謐でスムージーな1曲は彼女たちのコーラスもあいまってSteaks Is High期のデラを象徴する見事なRnBテイストなメロウサウンドを魅せてくれている。

De La Soul “Ring Ring Ring” (1991)

ロングアイランドから世界へ、ネイティブタン派閥特攻隊長デラソウルの大ヒットシングル。ニュージャージーのソウルグループ・ワットノウツによるディスコガラージ傑作「Help Is On The Way」をフルに活用したデラ唯一無二の代表曲でありながらヒップ史に残る最強曲。誰もが聴いたことのある宇宙で1番有名な"ベースライン"を引用した発明的12インチ、ジッとしてられるはずがない。踊ろう踊ろう。因みにこれはUK盤で、USに収録されてるミックスと違いディスコ感強め。

De La Soul “Stakes Is High” (1996)

デラ史上最も上品で秀逸な音楽感を魅せる彼らの4枚目。デラサウンドを共に作り上げてきたプリンス・ポールを離れた初のセルフプロデュースアルバム。表題曲の「Stakes Is High」にはゲストとして故Jディラがプロデュースで参加(JBの「マインドパワー」をサンプリングして作ったやつ)、さらには「The Bizness」にはシカゴからコモンが参加。

Del Tha Funkee Homosapien “Sleepin’ On My Counch” (1991)

Ice Cubeの親戚ってことで彼がプロデュースしていたDa Lench Mobからキャリアをスタートして、今やオークランド最強クリークHieroglyphicsを率いる一族の長に。そんなデルの初々しいソロシングル1枚目。総合プロデュースは叔父Ice Cube。女性が歌ってるコーラスは歌詞こそ違えど、パーラメント「Rumpofsteelskin」とおんなじメロディライン。

Del The Funky Homosapien “Catch A Bad One” (1993)

Souls Of Mischiefなどを擁し西側で一大派閥を形成していたハイエログリフィクスのリーダーで(Da Lench Mobのオリジナルメンバーでもある)今やアングラ界の重鎮ラッパーとなったデル。ファーサイドらと共にLAニュースクールと呼ばれてたが、Good Life Cafe出身のフリースタイラーだった事に由縁がある。何はともあれ、そんな彼の傑作2ndアルバムから12インチカット。天才マルチ奏者エリック・ドルフィーの「Mrs. Parker Of K.C.」で聴けるウッドベースをギシギシギシギシただひたすらループ、これがめちゃくちゃアイコニック。ラップも上手いし、さすがIce Cubeの従兄弟。

Del The Funky Homosapien “Wrong Place” (1994)

ダレンチモブの初期メンバーであり、ハイエロの首謀者であり、アイスキューブの従兄弟でもある。西海岸で彼を知らない人はいない、オークランドの奇才デルによる人気シングル。カーティス・メイフィールド「Don’t Worry If There’s A Hell」ネタを使ったヨレヨレご機嫌なスローファンク。バックサイドのB1はDominoがプロデュースでスクラッチにSoul of MischiefのA-Plusが参加、さらにはB2にQ-tipが参加。

Digable Planets “Where I’m From” (1993)

KC&The Sunshine Band「Ain’t Nothin’ Wrong」をまんま使いした名曲12インチはブルックリン発の3人組ディガブルプラネッツ、デビューアルバムからのセカンドカット。ビートよりもベースラインっていうジャズのロジックに最も忠実だった所謂ジャズ寄りのアプローチが特徴的で、ジャズヒップの元祖にあたるグループ。同期組のジャズアプローチ勢に比べるとオシャレすぎて地味で静かめに聴こえるかもしれないが、これが生粋のジャズヒップホップ。

Dilated Peoples “Live On Stage / Clockwork” (2001)

セカンドアルバム「Expansion Team」からアルケミストプロデュースのウェッサイアングラクラシック「Live On Stage」をシングルカットした1枚。はるばる東からTalibがマイク持ってやってきたアルバム未収録ミックスも聴ける人気の12インチだが、個人的にも世間的にも注目されるのはやはりプリモとEvidenceの相性の良さが色濃くでるA2「Clockwork」で。Babuすらいつも以上にスクラッチしてる気がするし、グループの一体感にブチ上がる。プリモのプロデュース能力の高さはアルケミストさえも霞むほど。

Dilated Peoples “Rework The Angels” (1999)

サイプレス及びソウルアサシンズ系統のヘヴィファンクなヒップ好きはマスト。Evidenceという突出したカリスマ性を持つエムシーに(SlackのSick Team作品に参加してたね)、相棒Rakka(ラッカ)、そしてBeatJunkiesの代表格DJ Babuを加えた3人組。彼等が飛ばした大ヒットシングル「Work The Angel」のリミックス(原曲と同じKutmasta Kurt仕上げ)にあたる本作には東のD.I.T.C.からAG、絶頂期XzibitにLikwit CrewのDefariが参加。EvidenceとはStep Brothersを組む真打ちアルケミストがミックスした「Guaranteed」も収録。

The Dismasters “Black & Proud” (1989)

マーティン・ルーサーキングの演説から、極上に分厚く軽やかで華やかなダンサブルの極みのような黒ファンキーブレイクビーツが雪崩れ込む。ベーシストからアレンジャーへと転向するJohnny Pate「Shaft In Africa」を土台に、上に重ねられるのが最早バイブルと化している神ブレイクMagic Disco Machine「Scratchin」という鋼の二重構造。ファンキーミドルクラシック此処にあり。プロデュースはブロンクスのDJ Chuck Chillout。

D.I.T.C. “Dignified Soldiers / Themes Dreams & Schemes” (1998)

ディオンヌ・ウォーウィック「For The Rest of My Life」冒頭のオーケストラサウンドをループするA4がやばい。Showbizメイドの哀愁ドープシット。暗くて遅くて超かっこいい。A1からA3まではネタ違いで仕上げた別ミックス。因みに本作のマイクはBig L、ローフィネ、A.G.にO.C.の順でリレー。

D.I.T.C. “Get Yours” (1999)

ソウルアサシンズも泣いて隠れる、ヘッドがバッキバキに折れては弾けてなにかが飛び跳ねる驚愕のギターリフ。ブルックリンのファンクバンドMandrill「Don’t Mess With People」でのリフを使ったヘヴィファンクチューンはShowbizプロデュース。歌うはグループ最年少の故Big L、みんな大好きO.C.に、創設メンバーのひとりDiamond D。00年発売のアルバム「D.I.T.C.」にやがては収録されるが、当時はプロモオンリーだった人気曲。

D.I.T.C. “Thick” (1999)

NETFLIXオリジナル「ヒップホップ・エボリューション」のシーズン2だったかな、ニューヨークにフォーカスする回でのバスタの発言

バスタライムスがNETFLIXの番組で"まるでアベンジャーズのようだ、プロデューサー版のね"と形容した当時最強のトラックメイカーたち(インタビューではピート・ロックやラープロ、プリモやローフィネを指していた)が同時代に集結していた黄金期のニューヨークでも、一際異彩を放っていたプロデュースチームがこちら。ブロンクスのスーパーグループD.I.T.C.から、彼らを代表する1曲(この曲はAGにBIG L、O.C.がマイクリレー)。ジャズピアニストのチック・コリアと、ヴィブラフォン奏者ゲイリー・バートンがタッグを組んだECM作品「Lyric Suite for Sextet」冒頭の「Overture」からヴァイオリンとヴィブラフォンを抜き取ってスロウにドープにループさせたトラック。ちなみに本作のプロダクションはDITCクルーではないが、先のバスタの言葉を借りれば同じ"チーム・アベンジャーズ"からプリモ。この時代の最高品質が楽しめる。

D.I.T.C. “Thick” (1999)


ブロンクスディギン讃歌、バージョン違いを収録するTommy Boy盤もあるけどオリジナル派は是非こちらのDITC Records盤を。ジャケがこっちのがいいもんね。チック・コリア&ゲイリー・バートンのECM作品「Lyric Suite For Sextet」1曲目オーバーチュアで聴けるバイオリンとヴィブラフォンをプリモがあれして、Big LとA.G.とO.C.があれして。最早なにしてもいいほどのクレジット。

D.I.T.C. “Way Of Life” (1999)

Lord Finesseを筆頭にBuckwild、O.C.にDiamond Dなどブロンクスの最高傑作とも呼べるプロデューサー達で結成されたアベンジャーズ系グループDITCがプロモオンリーでリリースした名曲(翌年00年発売のアルバム「D.I.T.C.」に収録)。ネタはフルート奏者Joe Thomasのジャズファンクチューン「Polarizer」冒頭のイカれたシンセリフを使用。これ聴いたらジョー・トーマスかDITCか、よね。今作のメインプロデューサーはShowbiz、ラップはBig LとFat Joe。

Diverse “Certified / Build” (2002)

ちなみにデトロイトのLawless Elementが05年にリリースした12インチ「High」のバックサイドでもマイクを握ってる。ラップスキルはお墨付きね

Prefuse 73名盤「One Word Extinguisher」内の楽曲でもマイクを握っていたことで知られるシカゴのエムシーKenny JenkinsことDiverseが、同じくシカゴ(もともとはフロリダ)にて電子音楽へ傾倒するヒップホップマインドなビートメイカーどもを束ねていたレーベルChocolateインダストリーズからリリースした12インチ。所謂チョップやマシンドラムなエレクトロニカテイストを含んだサウンドだが、兎にも角にもラップが強めにヒップ(Mos Defともマイクをまわした実力者だし)。変にアブストラクトでもないからそれが潔いし、なんだかとにかくかっこいい。表題曲のトラックはオハイオからThe Megahertz(Mhz)のRJD2。なるほど、そりゃあ良いわ。

Diverse “Move” (2001)

エレクトロニカやアブストラクト経由のヒップホップ好き(その逆も然り)の心を掴んで離さないシカゴ・Chocolateインダストリーズから、同じくシカゴのソロエムシーKenny Jenkins aka Diverseによる12インチ。Prefuse 73との絡みもあり、しっかりと電子音楽テイストなカットアップやマシンドラムが楽しめる彼の作品群だが、デビュー作にあたる本作はわりかしオーガニックなジャズヒップが堪能出来る。スクラッチとベースプレイヤーによる演奏スタイルで表現する00sっぽいジャジントラックがなんとなくLone Catalystsっぽいなぁとか思った矢先、B1にJ Rawlsリミックス在り。個人的には歓喜、ありがとう。

Divine Mind “Forever / My Walkman” (1999)

肝心のDivine Mindなる3人組をよく知らないのだが、とりまゲストが俺得すぎて最高な1枚。BUDS傘下Bronx Science Recordingsからのリリースで我ら90sラバーを虜にしたCelph Titledや、Rawkusからのリリースで知られるワシントンハイツのエムシーL-Fudge、さらにはSpinna率いるPolyrhythm AddictsからMr.Complexなどなどなかなか良き良きなマイクリレーが聴けちゃう。表題曲をCelph Titledがリミックスしたオルガンとフルートが交わるソウルジャズネタのA3が最高に調子良い。

Divine Styler “Ain’t Saying Nothing” (1998)

ブルックリンMCマーク・リチャードソンがDivine Styler名義でIce T率いるRhyme $yndicate Recordsから89年にリリースした究極のダンサーズアンセム(これは再発)。世界遺産認定のドラムブレイクBanbarra「Shuck Up」を下地に、モータウンクラシックJr Walker&All Stars「Shoot Your Shot」冒頭で聴ける咽び泣くサックスをしつこく被せ続ける、永遠に終わらない無限サイレン系ファンク。鍛えられたダンサーでもない埼玉のお父さんはワンループでぜぇぜぇする。ちなみにHouse Of Pain「Jump Around」でMuggsが使ってるのはこれ。そういや、あれもお父さんはワンループで倒れる。

Double X “Money Talks” (1995)

MC Sugar Rayが率いるニュージャージーヒップの人気ユニット(元々はDouble XX Posseという名義)を、DITCのローフィネがプロデュースしたクラシック12インチ。モダンジャズ・カルテット「Three Little Feelings」を使ったアゲまくりニュースクールに、それしかないフックはコテコテ過ぎるほどが丁度いい。メイクマネマネ、メイクマネマネマネーってみんなで大合唱できるやつ。

Down South “Southern Comfort” (1994)

後にモスデフやArtifactsなどを手掛けるスーパープロデューサーへと転身するShawn J. Periodが所属していたブルックリンの伝説的トリオによる唯一のシングル(唯一のアルバム「Lost In Brooklyn」に収録)。いきなりチャーリー・パーカー「Cool Blues」で聴けるサックスを癖強めにループして掻き回す。高揚感高まってからサビ部分はロイ・エアーズの「The Memory」をしっかり使うとか、なんて贅沢なんだぁ。勿論Shawn J本人がプロデュース。

Down To Erf “To Each His Own (Remix)” (2019)

トロントのアングラファイネストMathematikが99年にリリースしたアルバム「Ecology」に収録されていた人気曲を、トラックメイカーSteely DanとWal(Wall&Steel)ら2人が自らセルフでミックスを施した秘蔵リミックス7インチ。名義もどうせならと、3人のグループ名義Down To Erfで。トランペット奏者Art Farmer「Chanson」で聴けるメロウでスロウなトランペットをメインループにした所謂ホゲ系ジャジンヒップ。ネタがズルいよな、なんも力まず、ゆるくちるく、だらだらしちゃうナイスミックス。なんだかピートロックみたいだなぁ。

Down To Erf “Uprise” (2019)

90sカナダアングラを牽引するMathematikは、現行カナダアングラ代表格ユニットCrossLakesの片割れエムシーSolar Cの従兄弟

カナダアングラのファイネストMathematik擁するトロント3人組が、97年にリリースした唯一のアルバム「Down Ta Erf」には未収録だった音源を限定300枚で7インチリリースした1枚。01年に「Rap Essentials 2001」というコンピLPでMathematikがソロ名義でこの曲を提供している為、未発表という訳ではないがグループ名義では紛れも無く初リリース。ジャジンなエレピとホーンが美しい優美なブーンバップ、プロダクションはメンバーのSteely DanとWalによるWall&Steelコンビ。バックサイドのインストは最強。

Down To Erf “Weapons” (2018)

90s中期でカナダアングラの代表的なアーティストといえばFrankenstein、Saukrates、Swollen Members(Moka Only)、Down To Erf(Mathematik)、Citizen Kane、Sic Senseなど、しかも全組トロント。Da Grassrootsや、Maestro Fresh Wes、Main Sourceなどは80s後半から既に活動。ちなみに現行シーンだとArceeやCrossLakesなどか

こいつぁやべぇ。Down To Erfの顔であり、カナディアンヒップの顔でもあるMathematikと、トロントで鎬を削った仲間Sic SenseからエムシーDub Illが参加したドープなダブルMCが展開。そして、サウンドはWall&SteelコンビことErf Productions。Frankensteinにも通ずるカナダアングラ特有のミニマルブーンバップなのか、それでいながら裏打ちのカットギターがめちゃくちゃダブくて何回も何回も聴いてしまう。バックサイドには別曲「Diligences Neat」というインストトラックが収録、Erf Productionsらしさ全開のローファイサウンドにジャズエッセンスが混じるエレピトラック。

Dr. Dooom “Leave Me Alone” (1999)

字面にMF Doom感あるが、no it’s not、これはブロンクスの超絶磁石MCsを率いたあいつ。Dr. Octagonなど複数のペルソナを持つ怪人Kool Keithが99年にリリースしたドゥーーム名義1stアルバム「First Come, First Served」からのシングル。表題曲は凡人には到底理解出来ない独自すぎるハードコア(ホラーコア)ストレンジシットで狂うほど最高。トラックは勿論Kut Masta Kurt。

Dr. Dre “Dre Day” (1992)

2022年の今は2月にこのnoteを書いてるんだけど、カリフォルニア州イングルウッドで開催された第56回スーパーボウル、LAラムズVSシンシナティ・ベンガルズのハーフタイムショウに登場したのがまさかのドレー。スヌープや、ケンドリックにエミネム、50セントさらにはメアリーJからアンダーソン・パークまで、凄まじいショウだったし、何十年経ってもLAのミュージックアイコンなんだと改めて敬礼

NWA以降、コンプトンでの青春時代を振り払うかのようにマン振りでGファンクを披露していくドレーが、ソロキャリア初期にヒットさせたクラシック。俗に言う"Death Row産ドレー"な名作12インチは最強シンメの若きスヌープと一緒。Gでしかないあのシンセに揺られて、Gでしかないあのフック"バウワウワウ"をみんなで、ダラダラモクモクしようよ。バックサイドのクラブミックスが太過ぎるGでいなたい。G以上でも以下でもない。

Dream Warriors “My Definition Of A Boombastic Jazz Style” (1990)

クインシー・ジョーンズの代表作で、お茶の間でもCMやオースティン・パワーズの主題歌として知られる大ヒット曲「Soul Bossa Nova」をまんま使ったカナダはトロントのデュオ(キャピタルQとキング・ルー)による底抜けにキャッチーで明るいパーティミドル。これぞ元祖ジャズヒップかもしれないなんて、ギャングスターの2人も彼らの前座を務めた程なのであながち大袈裟じゃないかも。アメリカのみならずイギリスでも大ヒットしたカナディアンヒップのワールドワイドなクラシック。

Dred Scott “Nuttin Ta Lose” (1993)

NY生まれのLA育ち、ジャズの教養をしっかりと持ったラッパー。唯一のフルアルバムでもある大ヒット作「Breakin’ Combs」から、サックスとブレイクビーツが出会って恋して弾けたようなトキメキ系バウンシーなジャズトラック「Nuttin Ta Lose」と、奥様エイドリアナ・エヴァンズがコーラスを歌う「Check The Vibe」が1枚になったプロモ盤。表題曲はサックス奏者ジョン・クレマー「Free Soul」を使っているがさらにアレンジを加えたマーリー・マールのより深みが増したアダルトなチルリミックスが好き。

Dr. Frankenstein “Frankenstein’s Pain” (1995)

翌年に発売される「What Does It All Mean」も似たようなテイストでめちゃくちゃかっこいい。カナダ沼への入り口にもってこいのアーティスト

ひぃやぁかっこいいよなぁ、なんだこのトラック。オルガンかな、単音だけが繰り返しやってくる指一本だけのサウンドが魘されそうなほど、クセになる中毒になる耳にずっと残る。アダムスファミリー感、ブラックコメディ感、フランケンシュタイン感よね。オルガンネタは不明(74年に公開されたホラーコメディ「ヤング・フランケンシュタイン」からのセリフを冒頭にサンプリングしてるのは確認できた)、兎にも角にも発明級のキラートラックはアングラ良質国カナダ・トロントから。ちなみにバックサイドもノタノタと千鳥足なビートが最強で、ブルックリンのAZとは別人のAZが参加。

Dudley Perkins “Flowers” (2001)

Declaim名義でも知られるカリフォルニアのエムシー兼シンガーDudley Perkinsが03年にリリースするデビューアルバム「A Lil’ Light」から先行カットの7インチ。本作は完全にシンガーの一面をフルに発揮したヴォーカルワークスで、ネオソウルなトラックはMadlibプロデュース。ジャズピアニストHorace Silver「Lonely Woman」のピッチダウンされた掠れ気味のピアノが、揺らいでは消えてゆくを繰り返す蜃気楼のような音像。そして御世辞にも上手いとは言えない鼻歌のようなヴォーカルが妙に艶っぽく聴こえるゼロ年代ストーンズスロウ屈指の名曲。

Dudley Perkins “Funky Dudley / Testin’ Me” (2006)

95年発売のアルカホリックス2ndアルバムに収録されている「WLIX」にLootpackらと共にDeclaime名義で登場して以来、西のアングラ街道を凡そ30年近く爆進し続けているベテランシンガー兼ラッパーDudley Perkins。本作は06年にリリースされたアルバム「Expressions」からのシングルカットで、プロデュースは地元オックスナードの古い連れでもあろう友人Madlib。しょっぱなから千鳥足みたいな酔いどれビートに思わず笑ってしまう表題曲は、相変わらずラップですら歌ですらない酔っ払いの小言みたいなヴォーカル。抜きに抜いた脱力系が本作でも炸裂。カップリングはネオソウル一歩手前で酔い潰れた2人の奇才、とりあえず背中をさすってあげるしかないこちら側。まともに聴いたらいかん。絶対酔ってんだもん。

Dudley Perkins “Money” (2003)

魅惑の酔いどれカリフォルニアンシンガーDudley Perkinsが20年来の友人Madlibを従えドロップしたストーンズスロウ12。ラップするアングラキラーなDeclaime名義も大好きだが、このへろへろの裏声よね、みんなやっぱり歌う彼が好き。本名義ではデビューアルバムにあたる「A Lil’ Light」からのカットで、名曲との呼び声高い「Flowers」とは地続きのような曲。どちらもヒップとは呼べず、かっちりネオソウルな音楽だが、あっちが静なら、こっちは動と、本作には少しダラシなさが目立つ(ぶりんぶりん鳴るベースラインもあいまって?)。が、そこが妙に色っぽいしかっこいい。

Dumi Right “Opposite Day / Nightfall Remix” (2020)

美メロ系ボストンユニットRaw Produceから故Cadenceがトラックメイクで参加した7インチ。マイクを握るのはアフリカ発ラップクルーZimbabwe Legitのリーダーで、Cadenceのソロ作品では何度か饗宴済み。正統派ジャズヒップだったフロントに対して、バックサイドにはDefJuxアーティストMr.Lifがトラックメイクした大振りブーンバップと合唱するタイプのエムシーを搭載。バックサイド良かったなぁ。

Dutchmin “Get Your Swerve On” (1997)

映画「SHAFT (黒いジャガー)」サントラとして知られるアイザック・ヘイズの「Walk From Regio’s」で聴けるアイコニックなベースラインをそのまんま遅回しにしたスロウ&ヘヴィなNYCハードコア。重厚だけどミニマルな、静かだけどうるさいみたいな、Fondle’EmではないけどこれがDoloみたいな。マイクもトラックメイクも本作以降はその動向が不明なL Blades、True Tha GoodそしてTony Rutlandの3人組Dutchmin。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?