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【読書感想】 聞く力 心をひらく35のヒント 阿川佐和子 

▪️聞き人が目指すもの
 「話し手が話すことにより、自分の心の奥底から何かを発見する」
 そんな聞き手に、僕もなりたい。
▪️会いたい人って、話を聞いてくれる人

『はじめに』

阿川さんといえば、聞き上手のイメージ。
北野武監督や宮崎駿監督という世界的なに
著名な方々と上手に話す。
その「聞く力」に関心があった。
僕は最近発見したことがある。

「人格者ほど、身近な人の話を、きちんと聞ける」

誰でも究極は自分の話がしたい。
自分の話を聞いてほしい。
自分の話ばかりする人っていますよね。
僕はそんな人がいたら、なるべく話を聞く。
相手がそれで喜んでくれたら嬉しい。
家族こそ、つい話を聞かなくなってしまいがち。
だけど一番身近な人の話ほど、
ちゃんと聞いてあげたい
し、理解したい。
それが幸せへ近づく方法だと思う。

自分の話はいつするの?
僕はひたすら文章にすれば、
それで満足なのである。

それでは「聞く力」のヒントを綴っていこう。


『まえがき』

森の名人たちが、「聞いてくれて、ありがとう」
と高校生に感謝を述べている姿を見て、涙が出てきた。
聞き書き甲子園で高校生が森の名人に話を聞きにいく。
名人たちは嬉々とした表情だった。
普段誰も自分たちの仕事に興味を持ってくれない。
会って質問されているうちに、嬉しくなっちゃった。
こんなに自分の話を長く話したこなかった。

ありふれた日常に、聞くということは呼吸のように、
当たり前に行なっている。
話を聞くだけで、人を幸せにできるんだ。


『聞き上手とは』

「面白そうに聞く」
城山三郎さん
ただひたすら、「そう」「それで?」「面白いねぇ」
「どうして?」「それから?」と、
ほんの一言挟むだけで、あとはニコニコ楽しそうに、
私の世にもくだらない家庭内の愚痴を、
穏やかな温かい表情で聴き続けてくださったのです。
「そうか!」
聞き上手というのは、
相手が「この人に語りたい」と
思うような聞き手になればいいのでは。

こんなに自分の話を面白そうに聞いてくれるなら、
もっと話しちゃおうかな。
あの話もしちゃおうかな。
そんな聞き手になろう。

「質問は1つだけ用意しなさい」
質問は1つ準備すると教わる。
今はだいたい頭の中に3つくらいの
柱を立てるようにしています。
資料や作品に目を通し、その人の
来し方や考え方や、人生の転換期や
人間間毛などを調べる。
質問を絞るのは、つまり、
相手の話に集中しなさいという教えです。

「事前の準備はほどほどに」
資料を万全に読み込んで、
全ての情報を頭に入れていくと、
安心すると同時に、油断もします。

観察を生かす」
予定を崩された時にどうするか。
相手がたいそう乗っている雰囲気ならば、
このまま流れに乗ってみよう。
全面的に方向転換。
聞きたい内容に近づいたら、
予定していた質問をすればいい。
その時、相手のふとした動作が気になった。
そこで話を切り替えてもいいが、深掘りしてみた。
興味が湧いたから。
そこから“深い話“を話だした。

「段取りを完全に決めない」
本人はお遍路周りの話をしたがっている。
しかしそれではあまりにも話が偏るのでは。
聞いてみると、お遍路周りが
相手の人生そのものだった。
私はそのとき、肝に銘じました。
自分で決めつけてはいけない。

こっちの話が面白いに違いない。
あっちの話はそんなに面白くないだろう。
聞き手が勝手に決めつけることが、
どんなに危険なことか。

「相手の気持ちを押し測る」
相手を見るということは、
すなわち、相手の心の中は今、
どんな状態なのか慮ること。

ある旅館の女将さん。
お客さんへ明るく挨拶したら、
悲しい気分の時にそんなに明るくされても、
と言われたことがあった。
それ以降、お客様がどんな気持ちなのか、
子細に尋ねなくても、様子を見て
押し測らないと、ほんとうのサービス
とは言えないのだと思い知った。

インタビューも同じ。
相手の心情を慮り、理解を示す言葉をかけ、
こちらの聞きたいことをぶつけないと、
相手は心を開きにくい
と思うのです。

「自分ならどう思うかを考える」
浜口京子選手のインタビュー。
アテネ五輪のトラブルで敗戦。
自分なら腹立たしく、もう競技に集中できない。
浜口さんはどうやって復活したのか?
電話からの母親の言葉で復活できた。
「京子は世界選手権金メダル取った女なんだぞ。
 堂々と戦いなさい!
 今まで私は勝てと言ったことないでしょ?
 でも、今回は勝ちなさい。
 銅メダル取りなさい。
 お前はよくやった!」
その一言で浜口さんは呆然とし、
泣くこともできなかったのに、
初めて涙を流し、正気を取り戻して試合に戻った。
その話を聞いて私も涙を堪えることができなかった。

「ゴルフで得た教訓」
「阿川さん、引きずりすぎ。 
 もっとゴルフが上手くなりたいのなら、
 失敗しても引きづらない。
 さっさと忘れて気分の切り替えをしなさい」
そう言われて、浜口選手を思い出した。

「上っ面な受け答えをしない」
浜口京子選手のお母さんが選んだ言葉が
どうして“それ”だったのか?
きっとそれはお互いのことを熟知いていて、
深くて大きな愛情が通じ合っているからこそ、
なせる業だったのだと思います。
インタビューをしていると、
ゲストが人生の苦難に陥った時、
「助けられた言葉」に出会うことがある。
ヤンキー先生こと、義家弘介さん。
不良から立ち直り、勉強を頑張っていた矢先、
オートバイの事故に遭う。
生死の境で自暴自棄になり諦めかけた時、
恩師の安達先生がお見舞いに来て、
朦朧とするヤンキー先生に語りかける。
「死なないで、あなたは私の夢なんだから」
その一言で、ヤンキー先生は生きる気力を
取り戻すのです。
決して計算して出てくる言葉ではないでしょう。
ただ、感情移入しても
「あなたの気持ちを全て理解できた」
とは、ならない。
そういう上っ面な受け答えをしたら、
相手は醒めてしまうでしょう。
真実の言葉に救われた人たちが、
どれほど機敏に「こいつ分かってないな」
と察知するか。
人生において、誰かの「一言」がどれほど
大切なものかを考える時、インタビュアーの
ほんの小さな相槌も、
「きちんと打たなきゃダメだ」
と肝に銘じてます。


『聞く醍醐味』

「会話は生ものと心える」
トークは生もの。
人から良い話を聞こうと思って、
あらかじめバッチリ書きことを
決めて臨んでも、思い通りに
いくことはまずありません。
でも、だからこそ面白いのです。

「素朴な質問を大切に」
デーモン閣下にできるだけ
失礼にならないように聞いてみた。
「ヘヴィメタってなんですか?」
驚くことに、すごく親切に教えてくれた。
みんなが知ってるフリして、
実はあんまり知らないことというのは、
世の中にたくさん溢れている。

その根源的な質問をしてみると、
本人が思いの外、喜んで解説して
くださるケースもあるものです。


『話しやすい聞き方』

「相づちの極意」
セラピストのカウンセリング。
「患者さんにどんなアドバイス
 をなさるのですか?」
「アドバイスは一切しません」
意外でした。
カウンセラーは何をするのか?
「僕はね、ただしての話を聞くだけ。
 うんうん、そうかと相づちを打って、
 話を促すだけ

なぜ、アドバイスをしないのか。
「つまり、他人のアドバイスが有効に
 働いた時はいいのですが、
 何かがうまくいかなくなった時、
 そのアドバイスが間違っていたんだと
 思い込んでしまう。全ての不幸を
 アドバイスのせいにして、他の原因を
 探さなくなってしまうのです」

話を聞く。
親身になって聞く。

それは、自分の意見を伝えようとか、
自分がどうにかしてあげようとか、
そういう欲を捨てて、
ただひたすら「聞く」ことなのです。
“ちゃんと聞いてますよ“
“もっと聞きたいですよ“

という促しのサインだけを入れる。
そうすれば、人は自ずと、内に秘めた思いが
言葉となって出てくる
のではないでしょうか。 
「ただ聞くこと、それが相手の心を開く鍵なのです」
そう教えられ、後ろ盾を得た気持ちになりました。
ハイハイ
ほおほお
あらあら
まあまあ
ふんふん
いやいや
色んな相づちがあります。


『遠藤周作さんに学んだこと−あとがきにかえて』

「一見、躁病的軽薄に見えるこの話の中に、
 実は奥深い意味と象徴を見つけることの
 できる読者と、それができない読者とが
 いるでしょう」
遠藤さんのこの言葉を今も大切な人生の指針にしている。
もう一つ気づいたこと。
人の話を聞くときは、具体性というものが大事なんだ。
インタビューする時に、具体的な話を引き出さなきゃ
ダメだと教えってくださったのは、遠藤さんだった。

人の話はそれぞれ。
無口でも多弁でも、語り方が下手でも上手でも、
ほんの些細な一言の中に、
心に響く言葉が必ず潜んでいるものです。
そしてそんな話をする当の本人にとっても、
自ら語ることにより、自分自身の心をもう一度
見直し、何かを発見する
きっかけになったしたら、
それだけで語る意味が生まれてきます。
そのために、聞き手がもし必要とされる媒体
だとするならば、私はそんな聞き手を目指します。


『読書感想』

会話は生もの。
すごく印象的だった。
阿川さんのように多くの著名な方に
インタビューとして話を聞く。
これってすごくニッチな経験。
だからそこそ、聞くことの極意を学べる。
人は誰でも話を聞いてほしい
だから聞く側が真摯に、誠実に、
ただ、聞くことに徹する。

その心構えを知ることができた。

トークは生ものだから、
阿川さんみたいに、うまくいかないだろう。
経験を積んでいけばいい。

会話で誰かが自分に話しかけてくれたら、

「僕はただ話を聞くこと、
 そこから心の鍵が開き、
 話し手が何かを発見す
 るきっかけとなる」


僕はこれを、肝に銘じていこう。


『追伸』

ヤンキー先生こと義家弘介先生。
今は衆議院として命懸けの活動をされている。
大学時代にゼミ生で講義を受けた。
本当に熱くて、いい人だった。
教育に命をかけていて、教育を変えるために政治家に
なったとおっしゃっていた。
そんな先生のエピソードが紹介されていていて、
胸が熱くなった。

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