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「シェアのゆくえ」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.4 (6/7)

自動的にエレベーターのとびらがひらく。そこは病院のような、役所のような、事務的な雰囲気のいたって平凡な受付ロビーだった。そして正面には、そこそこきれいな、しかしやはり事務的な雰囲気のおねえさんが笑顔でたっている。

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「えっと、能力診断の特別な招待ってのはここで……」

「はい。本日は、当研究センターにおこしいただきありがとうございます。人類を代表してお礼を申し上げます」

事務的な笑顔のまま、おねえさんは答える。

「ああ、どうも……ところで、ぼくはどうしたら……」

若者はこの状況に困惑し、質問しようとした。しかし、受付のおねえさんは、若者の話もきかずに早口でまくしたてた。

「近年、戦争や殺人など野蛮な行為がへり、医療技術の進歩もあわさって、人類は平和で健康的にくらせるようになりました」

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たしかに、最近は悲しいニュースをみかけない。とてもいいことだ。日々悩んだりすることはあるにせよ、こんな平和な時代に生まれてよかったと若者は思っていた。

「しかし、そんな平和な世の中になった一方で、人口は爆発的に増えています。全ての人々が幸せにくらすとなると、現状の地球では、てぜまになってきました。世界中の知を結集して、他の星への移住やらなにやら、さまざまな案を検討しましたが、いっこうにその解決策は見出せていません。そこで、この度、この増えすぎた人口による問題を解決するために、画期的なある制度が世界で承認されました。それにもとづいて開発されたのが、この能力診断テストなのです」

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「なるほど、そのプロジェクトに、ぼくの能力がいかされるというわけですね」

若者は目を輝かせた。おねえさんは、若者を無視してつづける。

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「シェアのゆくえ」 (6/7)につづく

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