見出し画像

「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (4/7)

動物になるとしたら、そうだ、鳥になって大空を飛ぶってのはどうだろう。とても気持ちがよさそうだ。
若者は、空を見上げた。

大きな鳥に追われて、小鳥がギャーギャー必死に逃げている。しかし、追いつかれてしまった。大きな鳥のするどい爪が小鳥をとらえた。

画像1

鳥の羽が一枚、ひらひらと若者の頭の上に落ちる。

鳥は……やっぱ、なしかな。そうだ、空は飛べなくても地上で、小さなかわいい動物になれば、平和でいいかな。

今度は、地面に目をやる。

小動物がエサにむらがって、小競り合いをしている。しばらく見ていると、その中にはちょっとしたヒエラルキーがあるようで、少し気の弱そうな個体は、はしっこの方でうずくまっている。エサを分けてもらえないようだ。

やっとみんなが食べおわったのをみはからって、おこぼれに駆けよる。が、他の個体が颯爽とあらわれ、残りものをも、うばっていった。気の弱い個体はそれをみて、呆然としている。

動物社会も、思いのほか動物関係でもめている。そもそも人間だって動物なのだから当然のことなのかもしれない。動物界はどの社会でも、なかなか辛そうだ。

結論、動物として生きるのは、なしだ。

────

「人間をやめてみた」 (5/7)につづく

────

「人間をやめてみた」をまとめて読む

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?