【第5回】試し読み連載!アメリカが恐れる中国発のAI技術とは?この1冊で、徹底解剖。
クリス・ストークル・ウォーカー著のビジネス書「最強AI TikTokが世界を呑み込む」の試し読み連載、第5回!
この連載では、本文から厳選したハイライトを、全10回でご紹介しています。
今回は、第2章『バイトダンスの開発戦略』~8. AI企業を次々と買収する~より、ハイライトです!
1. 『AI企業の買収』
バイトダンスの物語を端的に表すと、発明の才とリソースの巧みな配置、一連のアプリで必要とされるスキルやソフトウェアの獲得と集約される。ミームやニュースのヘッドライン、あるいは気軽に楽しめるショート動画を提供するのが中国であろうが、ほかの地域であろうが関係ない。
だが、ティックトックの台頭について語るなかで、人々が往々にして見落としがちなのは、その成長を勢いづけたのは買収だったということだ。バイトダンスはその存在期間に少なくとも17の買収を行った。そのうちかなりの数がAI企業の買収だ。たとえばジュークデック(Jukedeck)というロンドンに本社を置くコンピューター作曲サービスは、2019年に買収されバイトダンスに組み込まれた。バイトダンスの社内チームと合体し、ティックトックの背後にいるAI企業を続々と買収する企業のテクノロジーがこうした買収によって拡張され、その結果、世界中で急速な発展を遂げるに至った。
2. 『ショート動画をトップチャートの音楽に載せて記録できるアプリ』
買収の一つに関わっていたのがジョン・ボルトンだ。当時、彼は気持ちをくじかれていた。2020年の夏の朝、私たちはスマホで軽いおしゃべりをしていた。背後で車が音を立てて行き来し、子供が遊んでくれとねだる声が聞こえるなか、この家族思いの男はその事実を素直に認めた。
その3年前の2017年、ボルトンは頭を掻いていた。2014年4月、彼はフリッパグラムという企業に加わった5番目の男となり、この会社の派手な造りのロサンゼルスオフィスで、ショート動画をトップチャートの音楽に載せて記録できるアプリ、ブーム(Boom)を見ていた。
その後3年も経たないうちに、このアプリは3億回―膨大な回数―もダウンロードされ、2014年のほんの数週間のうちに大流行を果たした。同時にそれは世界の180か国でダウンロード回数ナンバーワンのアプリになった。
3.『中国のテクノロジー企業』
フリッパグラムは投資家から7000万ドルを集め、2010年代後半に最も世間を賑わせたソーシャルメディアの一つだった。買収を申し出る者が次々と現れたが、そのうちの1社は創設者たちの注目を集めるのに十分な業績を上げていた。社員たちはグーグルやフェイスブックやアップルに社員ごと引き受けてもらえるのではという期待で色めき立った。
当時、ボルトンと同僚たちがフリッパグラムにリンクされた名前を見て、困惑したのも無理はない。「バイトダンス」と言われてもピンとこなかった。グーグルで新しい上司について調べても、事態は変わらなかった。「がっかりしたよ」とボルトンは素直に認めた。「バイトダンスなんて聞いたこともなかったし、中国のテクノロジー企業が中国以外で成功したことなんてあっただろうか?」
4.『ティックトックが人々の意識のなかにするりと入り込んでいくためのヒント』
イーミンにとって、フリッパグラムは魅力的な提案だった。非常に強力なコンテンツを生みだすツール ― 日常的にユーザーが使いたいと思っているチャート入りしたヒット曲や動画を飾り付けるフィルターや、スタンプに簡単にアクセスできるツールだ。だが、それがどうユーザーの役に立つかはわからなかった。人々はフリッパグラムで動画を作るだろうが、それをこのアプリに投稿するのではなく、完成した動画を保存し、別のソーシャルネットワークで開いて、そこに投稿する。
このアプリが人気を得たのは、動画にはそれがフリッパグラム内で作られたことを示すウォーターマークを付けて別のアプリに持ち込まれることで、より多くの人がその動画をチェックするようになったからだ。それはのちに、ティックトックが人々の意識のなかにするりと入り込んでいくためのヒントとなった。
【次回予告】
第6回は、7月28日公開の予定です。お楽しみに。