【第4回】試し読み連載!アメリカが恐れる中国発のAI技術とは?この1冊で、徹底解剖。
クリス・ストークル・ウォーカー著のビジネス書「最強AI TikTokが世界を呑み込む」の試し読み連載、第4回!
この連載では、本文から厳選したハイライトを、全10回でご紹介しています。
今回は、読み応えのある第2章『バイトダンスの開発戦略』~10. ライバル製品を徹底的に分析~からのハイライト!
TikTokという最強の動画アプリを生み出したバイトダンスが行った、徹底的な分析について語られます。
1. 『莫大なアルゴリズム』
バイトダンスは好調だった。中国人は定期的にトウティアオを開いてくれていた。そこで、バイトダンスは2016年に中国人がニュースからショート動画アプリをどう見るかをモニターし、これまで蓄積してきた莫大なアルゴリズムを適用できるかどうかを判断することにした。
日本での経営者向けの研修会で、イーミンは今がそのときだと判断した。それは難しい決断ではなかった。2016年にはショート動画があらゆるところに―中国国内だけでなく世界中に―広まっていた。ヴァインは全盛期を迎えており、中国でかなりの数のショート動画アプリが人気を博していた。そのトップにいたのがクワイショウ(快手)というアプリで、クワイショウ・
テクノロジーという会社が運営していた。
2. 『敵を知り己れを知れば百戦危うからず』
イーミンは新しいアプリの公開にあたってケリー・ジャン(親戚ではない)を抜擢した。彼女はそれがほかのアプリと明確な違いがあるものでないといけないことがわかっていた。また、バイトダンスは数か月かけてどうすればライバルに差を付けられるものになるかを慎重に検討していた。カギとなったのは『孫子』から引用した「敵を知り己れを知れば百戦危うからず」という言葉だ。
チームはその言葉をそのまま信じ、世界中から100本のショート動画アプリをスマホにダウンロードし、それぞれを試してみた。その100本のなかにはジューのミュージカリーも入っていた。このアプリはアメリカでは公開されていたが、2017年5月の時点で中国にはまだ入ってきていなかった。
3.『フルスクリーンで高画質』
開発者たちの目には特に印象的なものとは映らず、もっといいものにできる可能性があると思われた。
ショート動画市場を調査していた少人数によるチームが、市場に出ているアプリ―なかには何百万人ものユーザーを抱えるアプリもある―についてうんざりする点をリストアップし始めた。それを改善が可能と思える4つの部分に絞り込んだ。
まず気に入らなかった点の一つ目は、ほとんどのアプリの動画の扱い方だ。画面の小さな隅に追いやられているか、画面上がごった返しているせいで目立たなくなっている。一部は横長で、スマホを傾けない限り、画面上では非常に小さくなってしまう。正方形のものもあり、横長に比べればまだましだが、それでも貴重な画面の面積を有効に使っているとはいえない。
もう一つ気づいた点は、一部のアプリではサーバーコストを節約し、画質の悪い動画を作っていることだ(高画質の動画だと大量のデータが必要で、最終的にそのデータはどこかに記憶させなければならない)。
開発者たちは配置の変更を試み、動画アプリを作るなら、フルスクリーンで高画質でなければいけない―それはジューとミュージカリーがほぼ2年前に考えていたことと同じだった。
【次回予告】
第5回は、7月26日公開の予定です。お楽しみに。