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暮らしの詩集

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2022年4月の記事一覧

鯉の滝登り

鯉の滝登り

「99人に否定されても、一人でも信じる人がいれば、滝を登れるものですよね。諦めずに挑むその姿勢を感じてこいの滝登りの絵が好きなんです。」

語り部さんが語ってくれた。

鯉は登って龍になったというのがこの物語の結末だ。

20代は滝登りをする鯉でありたかった。
30代になった今、たった一人の信じる人の尊さを知る。
40代はどう感じるか。

龍になった鯉が、信じた人が孤独でないことを祈りたい。

日々

日々

日々の幸福は、とてもシンプルだ。
食卓を囲み、くだらない話を交わしながら、
眠くなれば寝ることができる家があり、暖かい火に当たることができる。
苦労を労いあい、また来年の豊作を祈る。

そんな日常がもしかすると、私たちが生きる明日を壊しているかもしれない矛盾を抱えながら
今日も問いかけ生きていく。

焚べて

焚べて

火は落ち着く。
パチパチとはじける薪の音と
静けさだけでいい。

そう感じていても、私は言葉を焚べることでしか生きられないのだ。

いや、そうではなく焚べて生きたいのだ。

語り合うことは。

語り合うことは。

わたしにとって語り合うことは無駄なことだ。
時間で区切られた会議の時間。
目的を話し終えれば退出する。
限られた時を生きる我々に非生産的な話をする無駄な時間はないのだ。

大きな成果を手に入れるためには
自らの時間を管理し、セルフマネジメントをきちんとする。
成功とはそうやって手に入れるのだ。

わたしにとって、語り合うことはいいことだ。
相手の心の声に耳を澄ませて、言葉の端々に宿る真意に耳を澄ま

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分かり合う

分かり合う

分かり合うという漢字は
分けて、から合わせると書く。

違いを理解することなのだろう。
あなたとわたしは違う人という前提の中で生きることなのだろう。

何一つとして、同じものはない。
それが真実なのだろう。

しかし、その先なのか、その前なのか
人は違うという当たり前の前提を乗り越えて、
魂が染み出すような、溶け合うようなそんな境界線がなく、続いていく繋がりがあってほしいものだ。

そんな願いを抱

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わたし

わたし

わたしとはなんなのだろう。

鏡に映るそれなのか。
細胞のひとつひとつのことなのか。
はたまた、脳みそに焼き付いている記憶が私を私として認知させてくれるのか。

わたしとはなんなのだろう。
命はわたしのものなのだろうか。
そもそも命とはなんなのだろう。
魂はどこからきたのだろう。

世界にはたくさんわからないことがあるが、そのはずである。
わたしという存在に宇宙を感じるのだ。

科学では証明できな

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季節が変わる。

季節が変わる。

わかめ作業が始まる。
三陸の春が始まる。

まだ寒い早朝に船は出港する。
沖に浮かべた、養殖施設につく頃には頬はすっかり風で真っ赤になって
三陸の凍てつく船上で鼻水を垂らしながらの作業。

気がつけば、陸では桜も咲いて、
次第に、太陽が昇る時間が早くなり
海水で手が悴む日々も少なくなってきた。

自然の厳しさと恩恵を引き受けて全ての水揚げを終える。
三陸の春の終わりを感じる。

無色

無色

今日は何を書こうか。
そんなことを今、考えている。

あぁ今日はなんか何も心の中に浮かんでこない。

だから、その気持ちを言葉として残そう。

今日という日が、何もなかったのか?
いやそうではないのだ。

ただ、自分の中で何か掴めない。
一つ一つの景色が自分の中で流れていたのだろうか。

余白のある日常が大切だ。
そして、忙しない日常の中でも心のキャンパスに何かを描ける余白を持ちたい。

そんなこ

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天井

天井

「ねぇ、天井の模様何に見える?」

「くもにみえるなぁ」
小さな手を目一杯伸ばして、天井を指す。

「チューリップもたくさん咲いてるね!」
「きいろいチューリップ!」

「あれ、さわりたい!よいしょして!」

小さな彼を抱えて、木目が素敵な天井に彼を放つ。

彼の見えてる無限の世界に向かって。
手を伸ばすのだ。

一本の松。

一本の松。

震災があった。
7万本あった松の木は倒され、一本だけ生き残った。

明日を懸命に生きたかった命が失われた。
私は、たまたま生かされた。

私の命は自分だけのものなのだろうか?

10年経った。
そんな途方もない問いを考えている。

あぁそうか。
命がつながっていると考える方が私は美しいと思うのか。

今日も懸命に生きようと思う。
次の瞬間に燃え尽きるかもしれない命を繋ぐために。

立ち止まる。

立ち止まる。

立ち止まることはいいことだ。
立ち止まりたいと思ったなら、すぐに止まるといい。

立ち止まると、違和感に気づく。
コンクリートジャングルなんかにいて何が楽しいのだろう?
毎日続く労働の先に何があるのだろう?
溜まったお金は何に使うのだろう?

立ち止まると、選択肢に気づく。
田舎もいいなぁ。
世界に旅でも出ようか。
好きなことを突き詰めて飯でも食べようか。

立ち止まると自分に出会う。
自分に出会

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東風が吹く。

東風が吹く。

「今日は東風が吹いてくるから、吹き始める前に狩るぞ。」

朝日が登る頃に、漁場に向けて出港する。

北風だ。

太平洋の向こうの方から吹いてくる風が波を立て、ちっぽけな漁船の底を叩いく。

ざっぱん、ざっぱん。
船底からの音が大きくなる。

ばっしゃん、ばっしゃん。
顔やカッパに波が打ち付ける。

海は投げ出されたちっぽけないのちなんて気にも留めずにはしゃぎ続ける。

少しすると風が止んだ。

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老いる。

老いる。

老いる

自分の中に大切なものが増えていく。
それが私にとって大切なのかどうかも確かめぬままに。

押し込められたそれらによって
色褪せる感性に気が付くこともなく、
随分と時間だけが過ぎた気がする。

老いることは
そんな積もる過去と向き合うことなのだろう。
#詩

はるもよう

はるもよう

鳥たちがさえずる。
夜にはカエルが鳴き始めた

ふきのとうは、だいぶ開いてしまった。
草木が次の順番待ちをしている。

海は春の嵐の模様。
轟々と遠くの出来事の知らせ。

春はいのちに自由を届けてくれる。
その自由も偉大な制約の中にあるとも知らず。
僕らは春に心を躍らせる。