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映画感想『メメント』

現在、日本のいくつかの映画館で、クリストファー・ノーランが世間に名を轟かせた『メメント』がリバイバル上映をしています。
映画館がコナンで盛り上がっている最中、コナンをかいくぐって『メメント』を観に行ってきました。

ネタバレ気にせず

・記憶の脆弱性を痛感させられる映画です。

僕は一度、あれはもう何年前になるかわかりませんが、今作をレンタルDVDで鑑賞したことがあります。なので、ネタは割れているわけです。物語の終わりから始まって、始まりで終わるという、因果律を無視した巧みな手腕で作られた映画だというネタは。
しかし、それをわかって尚、映画を一時間見た時には、最初の方は忘れているのです。必死に思い出して、画面に映るレナードの行動が、どのような結果を生むのか思い出そうとするのですが、細部をもう忘れています。
約10分しか記憶が持たないレナードのことを可哀想だと思いつつ、僕だって上から目線でいられる程の記憶なんぞ持っていないではないかと虚しさに包まれていきます。
レナードが劇中で言っていたように、記憶は記録ではなく、自分が思っているよりも弱弱しいものなようです。

・どこで終わりから始まっていると気づくのか

こちらも記憶というのは恐ろしいもので、今作が終わりから始まっていると知ってしまったら最後、最初からそう思って観てしまうので、開始数十秒から、写真が徐々に消えていることに気が付きます。それどころか、時間と時間との接続がかなりわかりやすく作られていることに気づきます。なぜ最初に見た時は時間が巻き戻っていると気が付かなかったのだろう、という馬鹿みたいな疑問が出てきます。
冒頭でテディが撃たれた後、すぐにテディが出てくるのに……。
自分がいかに適当に映画を観ていて、断片的に記憶し、脳内で作り上げているのかを恐ろしさを以て痛感しました。
今作初見の友人と一緒に行ったのですが、彼は始まってから一時間くらいまで時間が巻き戻されていることに気づかなかったそうです。テディ不死身だな、とか思っていたらしいです。
馬鹿だな!と言いたい気持ちが芽生えますが、僕だって初見はそんな感じだったと思います。

逆に、一時間経たないと映画のシステムを理解できないのに、最後まで観ると楽しめるという作りに拍手を送るべきなのかもしれません。公開当時は全員が初見ですし、そこで評価を得たということは、公開時の人間らが、すぐに冒頭から時間の巻き戻しに気が付き、最初のエピソードの記憶を二時間ずっと保持している優秀な奴らだったということではなく、最後のどんでん返しが気持ち良くて、わかった気になれる部分が上手く作られているからでしょう。

とにかくわかった気になります。要は、レナードが自作自演をしていただけなんだ、と。

が、後から思い返したり、話し合ったりすると、全然自分はわかっていません。ナタリーはなんであんなことをした? ジミーって何? テディはずっと何をしていた? 

映画なんてものは、細部まで観なくても面白いと思えてしまう。屈辱的ですが、事実のようです。

映画の最初から最後まで、自分がどこか盲目的に信じている記憶というものを、ノーラン監督に小ばかにされているような気分を少し感じながら、レナードの悲劇を追って楽しんでいました。

いつか大スクリーンでインセプションを観たい

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