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(散歩)運命の分岐点

深夜テンションというのは恐ろしいもので、僕たちを天空のミステリーサークルへと誘うのです。

サイコパスが、夜景が美しい公園を知っている、と言い出したので、デブがすぐに一度ぶつけた愛車のマツダ3のアクセルを踏み、例の場所へと走らせました。
ちなみに、3人の中で1番乱暴そうに見えるデブですが、車の運転はかなーり安全を心がけています(それ故に、1度ぶつけた時の衝撃は大きかったことでしょう)。実際の運転が最も荒いのはもちろんサイコパスです。1番まともそうな見た目をしている奴が最も狂気をその身に帯びているのは、割とこの世の真理に近い事柄かもしれません。


余談はともかく、着いてみるとどうでしょう。本当に幻想的で、夜景が綺麗な公園があるではありませんか。小高い丘の上にその公園はあり、頂上にはまるでUFOを呼ぶために使われるような、サークルがあります。
サイコパスもたまには有益な情報を出します。
一周散歩してみます。

中国で見たことがあるような建物もありました。

こんな靄がかかった写真を撮るつもりではありませんでしたが、結果的になんだかエモさが醸し出されている写真になりました。
それにしても、どうしてもこんな靄がかかってしまったのでしょう。サイコパスは性格が終わっているので、スマホの性能と写真の撮り手のせいだと言い張ります。彼は少し前にスマホを最新機種のiPhone15に変えて、事あるごとに僕の12miniを侮蔑してきます。「これが性能の差だ」とか「12ではこの夜景を撮るには役不足だ」とかなんとか。あの野郎、本当に許せません。サイコパスの方こそ、明らかに最新機種の性能に、頭の性能が追いついておらず、iPhoneに遊ばれているような有様なのに。
ですが、本当に性能のせいでしょうか。
Androidの中でも低性能な機種を使っていて、僕とサイコパスの高尚なスマホの会話に入ってこれないAndroidユーザーのデブが、ボソリと怖いことを言いました。
「なんか、次来る時はこの場所なさそうだね」

確かに、頂上のミステリーサークルに加え、公園の遊具も奇妙な形をしていて、現代っぽくありません。さらに幻想的、神秘的な雰囲気が流れていて、時空の歪みを感じなくもない公園です。
....となると僕が撮った写真に映る謎の靄は、心霊現象、あるいは時空の歪み?


前の学生集団がライトをたいてきました。むかつきますね。僕たちはもう大人なので、やり返すことなくじっとしています。上の文字は見ないように。


......はい。茶番は終わりです。ただデブが吸ったタバコの煙は映っただけでしょう、どうせ。僕たちは時空の歪みに入ることなどなく、無事に公園を一周し、階段を使ってしっかりと2時過ぎに車に戻ってきました。

時空が歪んでいればよかったのに、と思う気持ちも少しありました。なぜならば、1週間後には、社会人生活が待っているのです。
あのデブでさえ、就職です。
サイコパスは院に進んで、週5日研究し、週3日バイトをするという、休日のない地獄で憂鬱な2年間を過ごすようです。
これまでの学生生活、僕らは計画性なく遊んでいました。今日遊べる?と聞くのが普通でしたし、家の外から僕の名前を呼んで遊びに誘うという、ジャイアンとスネ夫のやる手口を行われた時もありました。
今暇だから遊ぼう、そういう地元ならではの関係性が普通だったのです。
デブは東京に行くかもしれません。僕は土日休みではありません。サイコパスは精神を打ちのめされて布団から出られなくなるかもしれません。
今までの普通の友情の形が途切れると思うと、ふとした寂しさが訪れるものです。
しかし、この公園は時空を歪められませんし、ノーラン監督の描く時間逆行も、ここには適用されません。

考えても仕方ありません。デブが持つ楽観主義をここでは借りるとしましょう。
我々はただ、会える時に会って、遊べる時に遊んで、登山できる時に登山をして、殴り合える時に殴り合う、そんな熱い生き方をしていくのみです。

楽しい一晩でした。

終わり

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