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『しくじり漫画先生に学ぶ正しい夢の叶え方』⑦


失敗が怖すぎる人たち

 〝世界じゅうの鏡を叩き割ってちゃん〟のように、失敗を怖がりすぎる人たちがいます。
 本当、コップの水をこぼしたくらいの些細なことですら、受け入れられないんですよね笑
 
 でも、何度も言うように、夢を叶えるには、自分自身をすべて受け入れなければ始まりません。

 私が〝世界じゅうの鏡を叩き割ってちゃん〟だった頃、私が私をそのままで受け入れていれば、おそらく多くの失敗は回避できたし、より質の良い失敗が経験できていたと思います。
 
 自分は才能のある特別な人間でなければならない。じゃないと私は私を受け入れられない。

 だから、大きな賞を受賞して、有名漫画雑誌で売れっ子になる必要があったんです。
 でも、理想からはどんどん離れていくばかりで焦るし、人には甘えられないし、自分を大きく見せようとして失敗も受け入れられない。

 このまま漫画を描き続けても、夢は叶わない。もうそれが見えているのに、「努力しても尚叶わない私」を演じ続けるしかなかったんです。

 「漫画家になる」と大口を叩き、若者らしい遊びも恋愛もほぼ切り捨てました。クラスメイトのほぼ全員が美大や芸大へ進学するなか、私は大学へは行かず、親の反対を押し切り上京し、何年も漫画づくりとバイトに明け暮れました。
 
 膨大な時間を費やしたあの挑戦の日々を、「失敗でした。てへっ☆」なんて、とてもじゃないけど、今さら認められませんでした。

 完全にペンを置いてからも、漫画家の夢を諦めきれないまま、目の前の状況を100%心から楽しめることはありませんでした。
 どんなに美味しいものを食べても、どんなに美しい景色を見ても、愛しい子どもの寝顔に触れても、常にその空虚感がまとわりついて離れないんです。

 この先の人生、ずっとそんな思いを引きずったまま生きていかなければならないのかと絶望したこともあります。

 だけど、ある時気がついたんです。
 これはすべて私が望んだことなんだって。
 
 「努力しても叶わない自分」で居たいと願ったのは、他でもない私だったんです。

 夢を叶えることよりも、叶わない言い訳の方を求めてたんです。 

 なぜなら、夢を叶えるっていうのは、自分自身と100%向き合う作業だからです。
 自分を受け入れることができない人にとって、これほど苦しいことはありません。

 できない、弱い、ずるい、頭が悪い、協調性がない。
 
 そんな自分を直視するくらいなら、口で「夢を叶えたい」と言いながら、努力している自分を演じ、夢が叶わない要素を見つけて集めていく方がずっと楽なんです。

 そしたら、他の誰も、自分も、私を責めることはできないでしょう?

 「頑張ってるんだもん。しょうがないよね」って。

 私は、はじめから夢が叶わない自分を望んでいたんです。



#創作大賞2024 #コミックエッセイ部門


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