VR世界最高峰の国際展示・Laval Virtual チャレンジからSIGGRAPHへの道のり夢や目標は追いかければ必ず叶う
キラキラしたプロジェクションや美しい色合いの映像のメディアアートに魅了され、癒され、いつか世界最高峰の展示会に出展したいというのが一つの目標でした。
Laval Virtualは世界のVRの国際展示の中でも、26年も歴史があり、特にヨーロッパのテクノロジー系の展示会では最高峰と呼ばれております。
参考 https://laval-virtual.com/en/
Laval Virtualへのチャレンジは2018年から始め、2018・2019と不採択でした。2020年には採択されたにも関わらず、コロナ禍の影響でイベント自体が完全オンラインへ変更されました。私たちチームは、やっと掴んだ世界での展示の機会を失い落胆しましたが、チャレンジする姿勢は変えずにオンラインでもLaval応援ビデオレターを作成するなどできるだけのチャレンジををしました。
2023年度のLavalへのチャレンジ
2023年2月 Laval VirtualのResearch部門の採択の連絡が来ました。私たちチームはやっと掴んだ海外展示のチャンスを心から喜びました。なぜなら、採択された自閉症や発達障害などによる感覚過敏の方々がパニックになっても落ち着く空間を提供するInclusive Quiet Roomの作品は、日本国内のとあるVRのコンテストで書類落ちし、コメントもとても厳しいモノばかりでした。そのコメントに落胆しかけましたが、その時に初めて「人は自身の経験や、理解できないモノは批判や低評価する」というのを身を以て体感しました。
私たちの作品である、Inclusive Quiet Roomは環境調整の空間定義のため、どこにでも簡易的に建設できるインスタントハウスという名古屋工業大学の発明品を使用した作品です。そのため、飛行機にどのようにインスタントハウスを搭載するかが課題となりました。最終的にはエミレーツ航空の一名の荷物最大50kg上乗せが購入できるサービスを活用し、合計2名で自分達のスーツケース込みで115kgの荷物を運ぶことになりました。
採択された作品 Inclusive Quiet Room
しかし、フランスにて税関で引っかかったり、用意した車に荷物が入り切らない事態が発生しました。それでもなんとか荷物をテトリスの様に隙間なく詰め直して事なきを得ました。ドライバーからはリアルテトリスを初めて見た!と大はしゃぎされました。
しかし、シャルルドゴール空港からラバル市まで約300kmですが、会場には19:00に到着しなければならなかったのです。出発したのは16:00とギリギリで、パリ市内環状線が渋滞していましたが、なんとか急いで2時間半でラバル市に到着しました。
そして、オーストリアからも一緒に展示を手伝ってくれる音楽担当者も来てくれて大変心強く、更にフランスの職人さんと、通関のお手伝いの方にも来ていただきました。
そこまでして私たちが展示したかったのは、これできっと海外での展示は最後だし、思いっきり楽しんで展示して、少しでもフランス現地の人たちと自閉症や発達障害のことをこのプロダクトを通じて対話したかったからです。最後だから思い切ってやりたいと思い、多少無理をしてでも海外展示という夢を果たすためにやり抜きたかったのです。
実際にInclusive Quiet Roomをフランスで展示してみると、まず人々の関心が日本とは違ったのと、身近な例を上げて対話してくれる人たちがほとんどでした。中には自身が自閉症だからチェーンブランケットを使用していることを話してくれた少女もいました。フランスやヨーロッパ圏では自閉症や発達障害を共に一緒に社会課題として考えてくれる傾向があり、中にはあまり良くない反応をする人たちもいたけれど、日本よりポジティブに捉えているイメージでした。
・結果とチャンスを掴んだ瞬間
ある日の展示後に表彰式の式典があるとのことでしたが、私たちはノミネートもされなかったし、何も無いだろうと考えて、一人は街中へ散策、私はスーパーへ買い物、一人は念のため式典に出席していました。
私はスーパーの買い物が終わってから式典へ参加すると、ちょうど日本へのインバイトされる受賞がされていたのと、Research部門で岐阜大の人たちが受賞していたので、心からおめでとうと祝福を送っていました。そして、その次がSIGGRAPH Awardでした。
この受賞は次のSIGGRAPHへの招聘作品になるとこので価値が高く、ほとんど選ばれない賞です。私たちはノミネートにもなってなってないので、帰ろうとしていました。すると、
「The winner is ,,,, Inclusive Quiet Room!」
突然自分たちの作品名が呼ばれて何が起こっているのかわかりませんでした。
ノミネートもされなかったし、日本で最低評価で、あるVRコンテストも否定されるコメントを頂いての書類落ち。いくら日本で自閉症・発達障害の人たちを補助するプロダクトを作成しても評価されないので、価値や意味がないと他の人からは思われていると考えていました。フランスで展示してヨーロッパの人たちと一緒に自閉症・発達障害について議論や対話できただけで満足していたので、本当に訳がわからなくなっていました。
自分が表彰台に立っているのが、まるで夢の様でした。否定され続けても、自身の課題でもある自閉症・発達障害へのアプローチに真剣に取り組んだ結果だと思えました。何も受賞の準備をしていないので、私はただのトレーナーの姿でした。
表彰されている時もお金の補助は?どうやってSIGGRAPHに展示するのかを質問してしまうほどでした。
よく審査員をみると、私はその人に対して「自閉症や発達障害の人たちをテクノロジーの力を使って助け、サポートして行きたい」と話したのを思い出しました。その審査員はSIGGRAPHのコミュニティの中心人物であることを後から知りました。
表彰台から降りた後、一人ではSIGGRAPHへ行けないので、すぐに仲間らに呼びかけ一緒にSIGGRAPHへ行って欲しい旨と仕事を休んで欲しい旨を伝えました。
私自身、SIGGRAPHに5回チャレンジして不採択で、途方にくれていたし、何より作品が認められる場所や展示できるかもわからない状態でした。それが、急にチャンスが巡ってきて夢だったSIGGRAPHへの出展が決まったことで、私は一つの目標であった世界最高峰の学会のデモに出場するという夢を叶えることができたのです。
・本当の意味でQuiet Roomが役立った瞬間
Laval Virtualで展示している最中に突如、会場の中で過去のトラウマから泣き出してしまう方がおられました。
その方の家族に「今そこQuiet Roomが必要です!」と言われ、すぐにその方をQuiet Roomの中へ通しました。
その方はずっと天井を見上げ、プロジェクションを見て音をずっと聞いていたのです。突如また泣かれてしまったので、お声がけすると、
「とても落ち着いたのだけど、それ以上に音とプロジェクションがとても綺麗で泣いてしまったの。」
そして、
「この会場にQuiet Roomがあってよかった。ありがとう。」
そう言われた瞬間、私たちはこのLaval Virtualで展示できた真の意味を見つけることができました。それは、たった一人の人でも心から必要とされたり、感謝されることは受賞以上に嬉しいことだったからです。
たった一人の人でも救えた展示ができたことは、私たちにとって感がたいモノでした。
・受賞以上の人の心の温かさを実感した出来事
展示後、私たちは税関のこともあり、日本から持ってきたインスタントハウスの一部をフランスで処分しなければ移動ができなかったのです。
最終日、次々と他の展示者が展示パッキングを終えているのに、私たちはホールが取り崩されている最中でもずっとインスタントハウスを解体し、そして、資材を一部捨てる準備をしていました。職人さんの車に捨てる資材をたくさん積んでいたら、急に地元の大学であり、Laval VirtualでもスタッフをしていたELSAの学生たちが一緒に解体を手伝ってくれたのです。
急に手伝ってくれる人たちに囲まれ、気づいたらその人たちは自分たちの車を用意し、資材を手分けして分担して搭載してくれました。
そして、解体が終わり、ゴミを処分するためにゴミ集積所まで車で持っていく必要がありました。彼らは自ら車を出して私たちについてきてくれたのです。
そして、無事にインスタントハウスの処分をフランス国内にてできました。
私は、わざわざ車を出して、時間も掛かったので彼らにお礼としてお金を渡そうとしました。すると
「あなたたちの展示が無事に終わったことに安心する。お金はいらない。またlavalに来てね。」
それだけ言い残して、彼らは自分達の車で帰って行きました。
フランス語もわからない、チームぼっちで来たのに、初めて来たフランスでELSAの学生たちは見ず知らずの私たちの展示を陰ながらサポートしただけではなく、展示の解体や処分まで手伝ってくれました。
私たちは、確かに夢だったSIGGRAPHへの展示へと進むことができました。しかし、それ以上にLavalの人たちの心の温かさが何よりも嬉しく、本当に心を救われる出来事でした。
何年掛かっても、私たちチームはまたLaval Virtualへ今度は素敵なコンテンツと共に再び帰って来たいと心から思えました。
・SIGGRAPHの展示のその後
夢だったSIGGRAPH2023でのE techでの展示は、私たちチームにとってはまさに夢の様な時間でした。5日合計で1000名以上の方々が体験して下さり、SIGGRAPHでも障害とテクノロジーの議論を体験者らとできたことはとても大きな収穫でした。
しかし、E Techでは正直審査員からはクリティカルなコメントは頂くことができませんでした。しかし、Immersive PavilionのChairがQuiet Roomを体験した時に、
「何故あなたたちはImmersive Pavilionに提出しなかったの?次は是非Immersive Pavilionにチャレンジしてください。」とコメントを頂きました。
E Techは正直、技術寄りの発表が多く、社会性を考えたコンテンツのデモはあまりないのです。
一方、Immersive Pavilionは作品の技術面だけではなく社会性のあるコンテンツかも審査の際の論点となります。私はその時初めてSIGGRAPHでの応募領域での考えの違いに触れました。
次の目標はImmersive Pavilionに出展して、Best in Showを受賞することです。
Laval Virtual とSIGGRAPHの出展が決まった時に、大学の職員の募集を案内されました。その時は私はまだ修士で社会人博士の学生と技術職員だったこともあり、ダメ元で大学の教員採用試験を受けると、採用の返事を頂くことができました。
私は、他の博士号持ちを差しおいて私は大学で助手の仕事に就いたのです。
正直、博士後期課程をやりながらの教員職はとても忙殺されたけれど、学生らとの交流や少し成長した姿を見続けられることに携われることが幸せです。
私は、世間一般で言う真っ直ぐに生きてないし、道を踏み外すことが多かったし、途中で挫折しかかったので本当に見本にならないですし、私の様な生き方はしないほうが良いと学生らには言っております。
しかし、そこから這い上がることができれば、それは大きな糧になるはずです。
たくさん失敗もしたけれど、それらを乗り越えて学び解決していけたからこそ、私は人間を知ることができました。
日本国内での評価軸と海外の評価軸は違います。例え日本で認められなくても、海外に向けてチャレンジすれば良いのです。それは、何も日本から留学や仕事で他国へ移住したりしなくても、通信が発達した現代だからこそ日本国内からでもいくらでもチャレンジできます。むしろ、日本に居ながら世界へ向けて発信したり、交流していくことも可能なのです。その中で重要なのは英語や他の言語が話せることではありません。母国語できちんと言葉の表現ができることが大切です。母国語が合っても他言語だと思いますので、日本語を正し使いこなせる能力こそこれから重要です。
私は、日本で認められなくても、何をどう伝えたいかをしっかり思考する能力と、論ずる力を身につけたことで、海外へアプライするチャレンジをすることができました。
だから、このnoteを見ている皆さんにお伝えすることとして、辛かったら落ち着くまで待つのが良いです。けれど、最後まで諦めないことと、自分が向上していくには少しでも劣等感は必要です。それに、日本で良しとされる良い家庭に生まれて良い小中高・大学に進み、良い仕事に就職し、そして幸せな家庭を築くということこそ、実はレアケースなのです。
実際は、人間同士のことなので、もっと複雑ですし、何より真っ直ぐではなく曲がりくねっていて、壁に当たることの方が多いです。でも複雑だからこそ多様性があり、いろんな人が居てこの世界は楽しいと思います。
だからこそ、私はこれからもテクノロジー✖️障害性=福祉工学をテーマとした福祉工学を突き進められるだけ突き進みます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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