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批判に晒されても自己保身に走らないためにどうしたらいいか

仕事にて、批判的な口調で意見をもらい、ビビってしまったことがここ数ヵ月で何度かありました。反省を込めてタイトルの問いに取り組み『Dare to Lead』と『The Fearless Organization』を読みました。本記事はその学びのまとめです。

そもそも批判されてビビるのは問題なのか?

結論から言うと、
・ ビビること自体は自然で生理的な反応なのでどうしようもない。
・ しかし、ビビったままそれを外に出す(自己保身に走る:言い訳がましく返事する、無視する、キレるなど)のは望ましくない、です。

「ビビること自体は自然で生理的な反応なのでどうしようもない」

人間は社会性動物なので、人に拒絶されるリスクに対して敏感で、それを避けようとするのは自然な傾向です。「ビビることを止めよう」と感情自体を抑圧する解決策は単純に効果的ではないです。そのため現実的な解決策は「ビビることは自然なことだと受け止めた上で、外に表出する反応の仕方をコントロールする」になります。

Most people feel a need to ”manage” interpersonal risk to retain a good image, especially at work (...). This need is both instrumental and socio-emotional. 
(拙訳)特に仕事においては、多くの人は他者への良いイメージを保とうと人前で失態をおかさないように注意を払うものです。この姿勢は報酬を良くしたいという物理的な欲求と、人に認められたいという感情的な欲求との二つから来ています。
Teaming(邦題:チームが機能するとはどういうことか)』より
shame resistance is not possible - as  long as we care about connection, the fear of disconnection will always be a powerful force in our lives, and the pain caused by shame will always be real. 
(拙訳)承認欲求に抗うことはできません。人との繋がりを大事だと思っている限り、人に拒絶されることの恐怖心は人を突き動かし続け、また承認欲求が満たされない体験は痛みとして存在し続けます。
Dare to Lead』より


「ビビったままそれを外に出すのは望ましくない」

では、なぜビビったまま反応するのは問題なのか。それはシンプルに相手の会話意欲を削ぐからです。

特にリーダーが自己保身に走る(自分の間違えを認めない、自分と異なる意見を聞き入れない)とチームは意見が上げにくくなります。より良い結果を出すために反対意見や改善案を出そうにも、リーダーがどうせ聞き入れてくれないなら、無意味なことに労力を割きたくない、損な役回りになることは避けたい、と思うからです。これを心理的安全性が損なわれた状態と言います。

心理的安全性がないと仕事の生産性が下がります。これこそが自己保身が望ましくない理由です。

leaders who welcome only good news create fear that blocks them from hearing the truth.
(拙訳)良い報告しか聞き入れようとしないリーダーは、チーム内に恐れや遠慮を生み、いずれ「真実」が耳に入らなくなります。
The Fearless Organization(邦題:恐れのない組織)』より

まとめると、リーダーの自己保身と心理的安全性の関係は以下の通り。

自己保身に走る
・ 周囲への影響:心理的安全性を損なう
・ やっていること:自分が負けないための戦い
・ 目標:自分が嫌な気分になることを避ける

自己保身に走らない
・ 周囲への影響:心理的安全性を醸成する
・ やっていること:みんなで勝つための戦い
・ 目標:チームと共に最高の仕事をして社会に価値提供をする

*****

「心理的安全性があると、生産性が上がり、学びが促進され、社員のモチベーションは上がり、離職率は下がる。」ーそういう研究結果があります。薔薇色の仕事環境に聞こえますが、「心理的安全性がある職場は少ない(2017年の調査で30%)」のは、その実践には精神的な痛さを伴うからだと思います。

・生産性が上がる=自分の意見を批判された先により良い打ち手を見出す
・学びが促進される=失敗から学ぶ

つまり、批判や失敗という痛みを伴う体験を乗り越え続けた先に、心理的安全性が実現するのです。痛さを乗り越えるために具体的にどうしたらいいのか、次章から見ていきましょう。

批判されても自己保身に走らないための方法

① レジリエンス(回復力)を高める

ビビること自体はコントロールできない領域なので、ポイントはビビっている状態からいかに早く戻ってこられるかです。

レジリエンスのプロセスは以下の通り。
1. 自分が精神的に動揺していることを認識する
2. 感情的に反射するのを防ぐため、一呼吸おく
3. 状況を冷静に精査し、足りない情報がないか洗い出す

大抵ビビっているときは、恐怖心に駆られて必要以上に状況を悪く解釈してしまっています。恐怖心に絡めとられている状態から脱し、状況を冷静に整理し直すことが第一歩です。

② 勇気を持って好奇心に訴えかける

恐怖心を客観視できたら、次にやることは好奇心を起動することです。興味の対象を「自分を守ること」から「相手の伝えようとしている内容を正確に理解すること」に移します。相手に敬意を払い、耳を傾けましょう。

自分ははじめから全て正しいと思うこと、自分は完璧であることを証明しようとすること、これらの行為は「学び」を阻害します。チームワークの結果、最後の答えが最良になるようにすればいいのです。必要に応じて、言い切ってしまいましょう。
・ わかりません。
・ 教えてください。
・ 間違えました。
・ すみません。

the greatest enemy of learning is knowing
(拙訳)「学び」の最大の敵は「既知」です。
The Fearless Organization』より


③ 自分の価値観を言語化しておく

自分にとって大事なことは何なのか予め言語化しておくことで、このように精神的な負荷がかかる場面でも自分の価値観に則して行動できる可能性が高まります。「恐怖心から逃れたい」という短期的な欲求に流されないで、自分の大切なことに対して誠実に行動をする勇気が湧くからです。

例えば、私は多様性に富んだ環境が大好きで、だからこそ「職場でも多様性を尊重し包摂的な環境を作りたい」と思っています。それにも関わらず、批判的な意見にビビり、うまく対話を盛り上げることができないことが何度かありました。自分と異なる意見にも耳を傾けてこその多様性のはずなのに。次回同じような場面にあたったら、「批判がされるのが怖い」という自分のエゴよりも「多様性を尊重したい」という自分の価値観を大切にして勇気を持って反応したいです。

This clarity is an essential support, as North Star in times of darkness
(拙訳)暗闇の中で北極星が航路を導くように、価値観を知ることは私たちにとっても欠かせない支えになります。
Dare to Lead』より


④ 自信を持つ

そもそも自分に自信があれば、他人の批判めいた口調に右往左往することも減ります。自信も鍛えていきましょう。

Once everyone understands their value, we stop hustling for worthiness and lean into our gifts
(拙訳)自分の価値が何かわかれば、みんな自分の価値証明のために戦うことを止め、素直に自分の強みを生かすようになります。
Dare to Lead』より

関連して、本記事は「生産的な批判」を想定して書かれていますが、批判の内容が人格否定である場合は、迷わず無視しましょう。批判に防御的にならずに耳を傾けることと、批判を全て受け入れるイエスマンになること・ましてや人格否定を真に受けることとは、全く別の話です。何が許容できるかできないかの境界線は引きましょう(人格否定されること・怒鳴られることは受け付けない、など)。

Whatever you do, don't pull hatefulness close to your heart.
(拙訳)何をやるにしても、嫌悪を自分の心の近くに引き込むのはやめましょう。
Dare to Lead』より

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最後まで読んでくださった方、お付き合いありがとうございました。個人的には「なんとなく、このビビリ反応は良くない気がする…」というモヤモヤが晴れてスッキリ!この指針に沿って「多様性が生きる環境作り」を日々実践してみます。

<参考文献>


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