職場におけるダイバーシティ:ポイントはマジョリティ/マイノリティ理解
タイに赴任して、より多国籍な人と働く部署への異動してきました。赴任前の私の目標は、「より様々なバックグラウンドの人と働くことになるから、"diversity & inclusion" を実践し極めよう」でした。
ところが、来てみたら "diversity & inclusion" ということにほとんど気を使っていない自分に気づきました。
「より多国籍な環境に来たら、なんでかえって簡単に感じるんだろう?」
行き着いた答えは、「多様すぎて、包含されるべきマジョリティなる母体が存在しないから」でした。
マジョリティの中にマイノリティがいるとき、最もコミュニケーションコストを高く感じる
日本にいるときは会社に外国人が5%くらいいる環境で働いていました。
英語に苦手意識がある社員も一定数いる中で、私の立ち振舞いと言えばひたすらその外国人たちが疎外感を感じないように、ランチに誘い、会議中通訳をし、日本ビジネスの文脈がわかっていないときは説明の時間を設けてサポートしたりしていました。
私が diversity & inclusion に心を砕くのは自分もかつて海外に飛び込んで、疎外感を感じた経験も、助けてもらってとってもありがたかった経験も、どちらもあるから。同じような境遇にある人を見かけたら、疎外感はなるべく感じないでほしいと思うし、受けた恩は循環させていきたいと思う。
でもそこまでの強い思いは普通の人は持っておらず、結果、includeすることに積極的でない日本人の同僚と、疎外感を感じている外国人の同僚の狭間で孤軍奮闘しているように感じてしまう瞬間もありました。
もちろん、日本人の同僚も、決して積極的に排除しようとしているわけではないです。ただ、日本人と働くときに比べてコミュニケーションコストが高く、労力に釣り合わないと感じて労力の投資先を最適化した結果そうなってしまっているんです。95%の人間に日本語が通じて、ビジネスに対する共通理解がある環境で、それがない残りの5%に常識を説明しながら・かつ苦手な英語を使いながら働くというのはコストでしかないから。
多様度が極限まで高まると、認識の擦り合わせは疑問を挟む余地なく必須な第一歩になる
一方、一緒に仕事する全員が異なる国籍と異なる専門性である状況になると、有無も言わさずコミュニケーションによって前提を擦り合わせていくことが必要になります。
仕事を成り立たせるために必ず必要なステップとなれば、誰もそこにコスト意識を持たない。常識を共有していないことがむしろデフォルトであり、そこにマジョリティとマイノリティの対立は存在せず、個と個の繋がりだけが残る。
だから、タイの多国籍な職場は、「includeするという観点ではかえって簡単」だったんです。
私が日本で苦労していたのは、ダイバーシティの中で働くことではなく、「マジョリティとマイノリティが存在している中で、マイノリティが活躍できる環境を作るにはどうしたらよいか、試行錯誤している」状態だったんだなと、理解が深まりました。
タイにいるベトナム人の同僚が言っていました。
確かに、そう。思い出しました。インターナショナルスクールも多国籍がデフォルトで、マジョリティ/マイノリティが存在しない。よって個人個人の国籍は大した意味を持ちません。インターは多様性を志向する人にとっては世界に存在する数少ないユートピアでした。
そもそも自分がマジョリティ側にいたことに無自覚だった
もう一つ、この理解を得るのにハードルになっていたのは、「自分がマジョリティ側にいるとき、その構造に気づきにくい」という点です。
マイノリティ側にいるときの体験というのは大抵強烈です。私もどちらかというと「自分はマイノリティ側の人間だ」という自画像を持っていました。
海外に行ったら学校にいる唯一の日本人だったし、
日本に帰国したときには学校にいる唯一の帰国子女だったし、
日本の大学に入ったら女性は少数派だったし、
今バンコクでも日本人の女性赴任者は少数派です。
そんな私でも、日本ではマジョリティ側に立っていたということに、今さら気づきました。マジョリティの日本人としてマイノリティの外国人を仲間に入れることの難しさ、コスト感を感じていたわけです。
マジョリティとマイノリティはダイナミックに変化するということ。同じ人間が、マジョリティ側にいることも、マイノリティ側にいることも、どちらもあるのです。かつ、マジョリティ側にいるときほど、そのことに無自覚になりやすい。
マイノリティ/マジョリティという観点で改めて職場におけるダイバーシティについて振り返って、より問題を構造的に理解できたように思います。
まとめ
その場において、diversity & inclusion の課題は何なのか理解するには、
マジョリティ/マイノリティが存在するのかしないのか、
誰がマジョリティ/マイノリティの構成員なのか、
まず明らかにすると問題の本質がより見えてきそうです。
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