仏塔めぐり2|ミャンマー、バガン
前編で「アウンサンスーチーさんの内政は国内で好意的に受け入れられていて、「やっと政府が民の声を聞いてくれる時代になった」という人々の喜びの声が聞こえました」と書いた後、後編を出す前にクーデターが起こってしまって悲しいです。
この旅行中に知り合ったミャンマーの友人からも連絡が来ました。
「もう未来の希望を持てなくなった。今は、今のことしか考えられない。どうやったらこの状況から脱却できるかだけを考えている。」と。
連日、ミャンマーの友人のfacebookは抗議デモの投稿でいっぱいです。ミャンマーの状況に心を痛めつつ、こんなに、自国の政治に対してコミットして戦っている友人のことを尊敬します。
ミャンマーは伝統的にアジア圏からの投資・進出が多い国で、多い順に
対ミャンマー投資額:シンガポール、中国、韓国、日本
在ミャンマー駐在員:中国、韓国、タイ、日本
とのこと。(※ただし現地の方曰く。投資額は年によってランキングの変動はあるものの顔ぶれは間違っていなそう、駐在員数は裏を取れませんでした。)
つまり、ミャンマーの中で日本のプレゼンスはそれなりに大きく、「ミャンマー内政に世界から外圧を加えてもらいたい」と思ったときに日本は大事なパートナーの一つになりうるのです。日本政府が、多くの民の声に寄り添い続けてくれることを祈っています。
※以下引用している記事には暴力的な写真も混ざっているので苦手な方はご注意ください。
さて、前置きが長くなりましたが、2020年1月のミャンマー旅行(週末の弾丸バガン旅行)について振り返ります。こんなタイミングだからこそ、一人でも多くの日本人がミャンマーを身近に感じていただけるきっかけとなることを願って。
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旅の始まりはまず、朝一のマーケットから。
トマト、なす、とうもろこし一つとっても、品種が画一化されておらず、多様で見ていて楽しかったです。
ちなみに、手前の女性の頬に薄ら見えている白い線は何だと思いますか?
これは、日焼け止めなんだそうです。近年やっと日本でも流通しているような日焼け止めも手に入るようになったものの、まだ昔ながらの化粧文化が残っているのだとか。頬に丸く白い日焼け止めを塗っている女性を何人も見かけました。
ミャンマーってインド文化圏の影響が強いんだなと思ったのは、食事のカレー率がミャンマー以東の東南アジア各国より高いこと、それからこの写真に写っている噛みタバコ。タイでは見たことがなかったけど、ミャンマー・インドで普及しているらしい、噛んだあと吐き出すタバコです。この吐き出すときの唾液が真っ赤で見目麗しいものではありません。
昔ミャンマーに駐在していた同僚曰く「噛みタバコをしない運転手を見つけないと、運転席の窓から噛みタバコを吐き出され、車のドアがあっという間に赤くなる」とのこと…それは怖い。(※ミャンマーに住む外国人は大抵運転手を雇うらしいです。)
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バガンは、ミャンマー中部にある町で、カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールとともに、世界三大仏教遺跡のひとつとされています。
そこにあるのは広大な乾燥した大地に、見渡す限りの仏塔。その数、4000弱。巨大な寺院や仏塔から、写真のような比較的小さいものまで。車で走っても走っても道路の両側に仏塔ばかり、という体験は人生で初めてでした。これらの仏塔のほとんどは11世紀から13世紀に建てられたもので、雨のあまり降らない乾燥地帯だからこそ、ここまで大規模に保存されているのだそうです。それでもその昔は、今の三倍の仏塔があったのだとか。
こんな立派な寺院が数知れず。
ディテールの装飾も美しく、また青空と茶色い遺跡のコントラストも綺麗で惚れ惚れしました。
高台から見た夕日。小さいとんがり帽子が全て仏塔です。こちらは一面しか切り取れていませんが、右も左も後ろも、見渡す限りとんがり帽子でした。
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敬虔な仏教徒の国、ミャンマー!とばかり思っていたら、一味違う一面にも出会えたので、少し紹介します。
バガンの寺院の一つに祀られているお金持ちの神様。みんなありがたがってお金を色んなところに挟んでいます。この神様は生前、人間だったようです。
「神様のなりかた:三つの条件」
①暗殺された
②生きているうちから有名だった
③王様が神になることを決めた
「ミャンマーでは19世紀以降王様がいないからもう人間は神様になれないんだ。日本人はどうやったら神様になれるの?」と聞かれ「日本では人間は神様にならないよ…」と答えました。
でも後から気づいたのですが、菅原道真って学問の神様になってますよね。どうやって神様になったのでしょう?
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また、ミャンマーには仏教以外にも土着のナッ信仰というものがあり、バガンから少し足を伸ばすとナッ信仰の総本山ポッパ山を訪れることができます。
ナッの神々。アニミズム的な精霊信仰で、神様がたくさんいます。
ポッパ山を見下ろす景色。孤立してそびえる死火山の山頂に神社があります。
山頂から見下ろすミャンマーの大地。
実は印象的だったのは、バガンからポッパ山に向かう道中。間隔をあけて人々が道路脇に佇んでいました。時には片腕を突き出して。何をしているのかと聞くと、「ポッパ山に巡礼にいく人がばら撒くお金をもらおうとしている」とのこと。確かによくよく目を凝らして見ると、走り去るバイクから宙に舞う紙幣が見えました。ひらひらと落ちる紙幣を、道路脇にいたお母さんが必死に追いかける…なかなか衝撃的な光景でした。
いずれにしても、「巡礼しに行くなら寄付をする」という習慣が根付いていることからは、敬虔なお国柄であることが伺えます。
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とても紹介しきれないくらい、興味を引くエピソードや体験がいっぱいのミャンマーでした。
ミャンマーの人々の信仰心が今日の辛さを少しでも和らげ、ミャンマーの政治的動乱が早く治まり、未来に希望が持てる日々が戻って来ますように。
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