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Waseda MBAの終わりと新たな始まり - WBS Life Vol.3

 三年前、世界がコロナによって新たなステージに変わる前、働きながらビジネススクールに通うことを決めた自分に100点をあげたい。この二年間は、間違いなく、そう思えるような瞬間だった。

 大学院への在籍はもう少しだけ続くのだけれども、卒業に必要な単位を取得し、修士論文も書き終えたいま、社会人大学院生活を振り返ってみたいと思う。


国内MBAに進学を決めた理由

 在学生活を回想する前に、国内MBAの夜間プログラムに進学を決めた理由を簡単にまとめると、当時の思いは以下の三点に集約される。

1. ビジネスを体系的に学び、自分の軸を見つけたかった
 経営の全容を誰かが体系的に教えてくれるわけでも無く、中途社員が90%以上のLINEで管理職として働くにあたって、自己流な意思決定に確固たる自信が持てず、また、自分の専門性の無さにも危機感があった。

2. 20代のうちに次のステージに進みたかった
 自分の将来とキャリアを考えた時に、いま、時間と体力がある20代のうちに、新たな専門性・資産・人脈・困難を乗り越えた経験などを得たかった。また、会社の仕事に慣れてきたので、これまでの延長線上に無い、新たなステージに進みたいと思った。

3. 新たな出会いと、切磋琢磨できる環境が欲しかった
 IT業界に身を置いていると、恐ろしいほどに、同業種で似た価値観をもった人と接することが多い。それは居心地の良い環境ではあるのだけど、井の中の蛙になりたくなかった。普段知り合うことの無いような、多種多様な業界で働く人々と切磋琢磨したかった。いまの環境での評価に満足せずに、自分が圧倒的に敵わないと思うような人に出会いたかった

 これらの思いを持って、早稲田大学経営管理研究科の夜間主総合プログラムに入学し、優秀で個性的でエネルギッシュな学友と出会い、経営学という学際的な学問領域を学んでいった。

MBA二年間を通じて

 総括としては、冒頭に述べたように入学を決めたことは疑いなく満点の選択であり、人生におけるこのタイミングで通えて心から良かったと思っている。

 特にそう感じた理由を言語化すると、下記の6点となる。なお、あくまでも主観的で、個人的な感想であることをご了承いただきたい。

1. 経営学とビジネスを体系的 & 構造的に学ぶ

 以下の図は、私が所属するゼミの教授でありながらマッキンゼーでパートナーを務められる佐藤先生が、ハーバード・ビジネス・レビューで連載する記事から引用したものである。

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 ぜひともこの連載は読んで頂きたい。ファイナンス × 戦略の観点で企業経営や事業の全体像を解き明かし、企業価値を創造する戦略を立てるにあたって必要な思考とスキルについて体系的に解説されている。

 アカデミックな研究者と実務家な教員たちのもとで、①企業経営と経営者や投資家の役割、②会計やファイナンスなどの財務的な知識、③企業価値とそれを最大化する競争戦略、④戦略を実行するオペレーションや組織論... など、経営や事業の全体像を理解し、議論するにあたって共通言語となる引き出しを手に入れた

 当然、本業で実践する人と比べると個別の領域における理解は浅いであろうし、知識は陳腐化するものであるが、全体を構造化して横串で理解できることは非常に価値のあるものだ

 ゼミではジェイ B.バーニーの「企業戦略論」を輪読したのだが、戦略論をアカデミックに学ぶことができ、また、経営の全体像を体系的に理解するにあたって非常に参考となった。

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2. 本質を考え抜くことの重要性

 MBAでは、ともすれば目の前の授業や課題の濁流に追われ、手段が目的化してしまうことが多々ある。

 何かしら達成したいことや、実現したいことがあり、それを叶えるための手段や考え方を身につけるために学んでいるはずが、学ぶことが目的となってしまうのだ。

・真の目的はなにか?を常に問い、目的と手段を混同せずに、解くべき問いを解くこと
・本は覚えるものではなくて、考え方の材料であること
・全体のストーリー(抽象)と詳細(具体)を行き来しながら、何を言いたいのか?の本質を理解すること
・与えられたものをなぞるのではなく、自分の頭で本質を考えること
・MBAでは答えの見つけ方ではなく、仮設を立て検証する力を学ぶこと
・個別の経営理論を現実・固有の経営課題に応じて組み合わせて使い、実際に成果を出す統合する力がビジネスでは重要なこと

 などなど、WBSの先生方からは再三にわたり、物事の本質について意識を向け、目的と手段を切り分けて自分の頭で考え抜くことの重要性を説かれた。文章だと簡単そうに思えるが、日常的に実施するのは中々に困難で、今後とも精進を続けていきたい。

3. 働きながら学び続ける習慣

 当たり前であるが、社会人と大学院生活の両立は非常に忙しい。平日の日中は普段通りに働いて、平日の夜や土曜日に講義を受け、空いている時間は予習・復習・課題・グループワークに追われることになる。

 仕事の成果を落とさずに、大学院での学びを血肉とするためには、効率的に時間を活用して学習方法を進化させる必要がある。仕事では優先順位付けとリソース配分を最適化し、学業では学問領域の本質を探索しながら最短距離で理解を深められるよう同級生の頭を借りて共に学んでいく

 大人になると、どうしても仕事を言い訳に自己学習する時間が減っていくのだけれど、半ば強制的にインプットとアウトプットが求められるこの環境は、知的体力を強化するのに最適な環境であったと思う。

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 MBAに通う時期や年齢はいつが良いですか?と聞かれることがあるが、ビジネスや仕事に対して何かしらの目的意識や課題意識が生まれた時点であれば ASAP で通うべきだと思う。

 幸い僕は休日の時間を自由に活用できたが、多くの同級生には家族や子どもがいて、仕事・大学院・家庭を両立している人たちには頭が上がらない。

 コロナによって余暇が増えたこともあって、入学志望者は急増しているらしい。飲み会などが減って時間が増え、体力もある20代で入学したのは、結果論ではあるがベストな選択だったと思う。

 入学するだけで本人の能力が劇的に向上したり、課題が綺麗に解決されるわけではないだろうが、人生100年時代と言われるいま、もっと多くの人が学び直しの機会を視野に入れても良いのではないだろうか。

4. 切磋琢磨する友人や人生のメンター

 早稲田大学ビジネススクールの学生は、想像以上に多様性に富んでいた。全日制、夜間主総合、夜間主プロフェッショナルなど複数のプログラムがあることもあって、同級生の年代、職種、専門性、経験はバラバラだ。

 一学年で200人以上もいるので全員と交流できたわけではないが、大多数の方々は僕よりも社会人経験が長く、働きながら大学院に通うということもあって課題意識や熱意が強く、彼らと濃密な時間を過ごせたのはあらためて刺激的であったし、何より楽しい日々だった。

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 社会人は井の中の蛙になりがちで、自分が所属する企業や業界の常識が社会すべてに共通するものだと感じるけれど、そうではないのだ

 年齢は異なるけれど、利害関係もなく、ワイワイ、切磋琢磨できる新たな友人を得ることができたのは、大学院に通って最も良かったことの一つだと思う。

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 飲もう飲もうと言いながら、結局飲めてない人がたくさんいらっしゃいますが、ぜひ卒業後も変わりなくお付き合い頂けると嬉しいです。

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 また、自分がビジネスパーソンとして働くにあたって、定期的に指針や軸を相談したいと思えるような、人生においてメンターと仰げる存在にも出会えた

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 友人もメンターも、卒業後も関係が続く一生モノの資産である。

5. 人生の幅と、視野が広がった

 MBAは久しぶりの学生生活でもあるので、学生たちは授業以外の課外活動にも身が入る。僕はインドアタイプの人間なのだが、社交的な学友たちと交流することで、色々なことを始めて経験することができた。

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 通常だと経験しないことが体験できること、その一歩目を踏み出せたこと、また共に踏み出せる仲間を見つけられたことによって、今後の人生はより豊かなものになっていくのだろう。

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 知らないと何も始まらず、色んなところに少しでも首を突っ込んで見ることの大切さを知り、仕事以外の様々な領域を知ることによって自分の価値観が相対化されることなど、非常に多くのことを学べたと思う。

6. ポジティブな信念を得た

 WBSに入学する前は、新卒入社した LINE での職務経験しか無かったこと、未だ自分が20代であったことなどから、自分が LINE の外で通用するのか?井の中の蛙になっていないか?と不安になることがあった。

 また、僕は昔から "自信" という言葉自体にセルフィッシュな響きを感じてあまり好きじゃなかったし、集団において自我を出すことが非常に苦手だったし、出す必要性もあまり感じてなかった。

 だけど、WBSで本当に色々な背景・価値観を持つ人たちと接する中で、集団においてリーダーシップを発揮することの大切さを学ぶことが出来たし、彼らと切磋琢磨する過程で自信も手に入れることが出来たと思う。

"自信とは、自己顕示欲や傲慢さではない。自分の中で、自分が楽しめると信じること。自分ができる、やってみる、リードする… と自覚すること。"

 ゼミの先生との対話で伝えて頂いた、自信とリーダーシップのあり方については、僕の根本的な考え方に大きな影響を与えた。

"目に見えるリーダーシップをもっと取っていく、後ろから押し上げていくだけではなく、前に引っ張っていく。自信を自覚し、主体的なリーダーシップを発揮し、未知を切り開いていく。"

"自分をどういうスタイルで魅せていくのか、自己顕示欲では無く、プロフェッショナルの作法として人生をどう魅せていくのかを意識することで、機会が増えていく。自己肯定感と共に、楽しくチャレンジしていく。"

 こうして振り返えると、この二年間で学術的にも、実務的にも、人生的にも、精神的にも非常に多くのことを学ぶことが出来たなと改めて実感する。

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終わりに

 冒頭に述べたとおり、ビジネススクールにはもう少しだけ在籍することになるのだが、ひとまずこれで二年間に区切りが付くことになる。 

 2019年に MBA への進学を決めてから時が経つのが本当にあっという間であった。入学当初を思い返すと、とても、懐かしい。非常に多くの方にお世話になった二年間であり、感謝の意を伝えたい。

 ありがたいことに、WBS に関して執筆した note は継続して多くの方に読んでいただいており、国内MBAの受験や進学において参考になったという感想をもらえることもあった。

 この note も、国内のビジネススクールで MBA を取得するか悩んでいる人に届けば嬉しい。そして、悩んでいる背中を押す一助になれば幸いだ。

 この二年間の経験を活かして、自分の人生の脚本を自分で描いて、主役として演じて、これからも全力で楽しんでいきたいと思う。

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