「霜月の精進料理」 2016年11月
11月を霜月といいますが、たからの庭に準備のため朝早く訪れると、きらきらとした見事な"霜"に出会えます。皆様が来る頃にはぬかるみに変わってしまうので、本当に役得というか、幸せな朝のひとときです。11月はほかにも「食物月(おしものづき)」ともいいますね。収穫を祝う行事が多いのでその名がついたそうですが、茸やお芋、かぼちゃ、蕪といった秋から冬にかけての食材が美味しくなって来ましたね。今月は晩秋をテーマに献立を組んでみました。どうぞご参考になさってください。
1.銀杏ご飯 2.蕎麦米汁 3.ゼリーフライ 4.ひじきの煮付け 5.蕪の即席辛子漬け
1.銀杏ご飯
銀杏は古来より優れた栄養価が知られており、良質なたんぱく質やビタミン類などが詰まっていて、かつては咳止めや夜尿症の薬だったとか。葉は認知症予防薬として販売もされていますよね。くさいと嫌われ者ですが、火を入れるともちっとしてとても美味しく、秋らしい食材の代表選手です。
材料:米2C、もち米1/2C、水480CC、酒大1、銀杏20~30個、塩小1/2
1)もち米は洗ってたっぷりの水に一晩漬けておきます。今時分は常温でもOKですが、夏なら必ず冷蔵庫へ保管しておいてください。
2)米は洗ってざるにあげておきます。白っぽくなるのが目安です。
3)銀杏は殻を割って、鍋に入れ、ひたひたの湯をそそぎ、玉じゃくしで転がしながら薄皮をむき、たて半分に切っておきます。ゆでている間に全部とれなくても大丈夫です。半分くらいむけてきたら、火から下ろし、手でむいてください。
4)鍋にもち米、米をいれて調味し、30分程度置いてから、強火にかけて沸騰したら皮をむいた銀杏を入れます。
5)中火で7分、その後弱火で3分、最後に強火にして10秒、鍋肌からパチパチと聞こえたら火を止め、10分むして、天地返しをしてから盛り付けましょう。
2.蕎麦米汁
徳島の郷土料理です。もとは源平の合戦に敗れた平家の落人が祖谷山に潜めた際に作られた料理と言われています。ご飯代わりにおそばの実をいれたおじやという風情です。今回は蕎麦の実の量を調整して汁ものとして作りました。お好きなお野菜をたくさんいれて召し上がってください。蕎麦には血液をさらさらにするルチンや動脈硬化を防ぐコリンなどたくさんのいい成分が一杯です。
材料:蕎麦の実1C、人参30g、干し椎茸2枚、油揚げ1/2枚、昆布出汁+椎茸の戻し汁5C、
淡口大1、塩小1/2、三つ葉適宜
1)蕎麦の実は洗って水から柔らかくなるまでゆで(沸騰後3~4分)、さっと洗ってざるにあげておきます。あとでまた汁で煮るので、あまり柔らかすぎないようにゆでてください。
2)にんじんと油揚げは3cmの長さ×5mm幅の短冊に、椎茸は水で戻してスライスしておきます。
3)出汁に2を入れて、煮立ってきたら蕎麦の実を加え調味し、器に盛り付けて1cmに切った三つ葉を飾ります。
3.ゼリーフライ
え?ゼリーをフライに?と私も最初に発見したとき驚きましたが、これはおからを使ったコロッケなんです。埼玉県行田市の郷土料理です・・・といっても歴史は比較的浅く、「ルーツは日露戦争の時、中国から伝わった『野菜まんじゅう』だということです」(行田市HPより)。形が小判型ということから、銭フライがなまってゼリーフライになったとか。おからを使用するので、非常に軽い口当たりで、いくつでも行けちゃいますよ。
材料:馬鈴薯2個(200~250g)、おから100g、玉葱1/6個、人参10g、塩・胡椒少々、小麦粉・パン粉・揚げ油適宜
1)玉葱と人参はみじん切りにしておきます。
2)馬鈴薯は蒸してマッシャーでつぶしておきます。
3)ボールに1,2、おからを入れて調味し、小判型にまとめます。
4)水で溶いた小麦粉に3をくぐらせ、パン粉をつけて170度程度であげます。油は少なめで大丈夫。揚げ焼きなかんじですと無駄になりませんし、油の中で割れてぐちゃぐちゃになる心配もありません。好みでソースにぼちゃっとたっぷりくぐらせて召し上がってください。
4.ひじきの煮付け
意外とできない煮付けの一つがひじきなのではないでしょうか。甘すぎたり、辛すぎたりで結局お総菜を買っていませんか。正直、こういうたぐいの煮付けは熟練が必要ですが、ぜひこのレシピで基本の味を覚えていただき、なれてきたら自分流のアレンジをかけてみてください。今回は具だくさんにしましたが、おあげだけ入れたシンプルなほうもオツです。ミネラルたっぷりで栄養バランスもばっちりの優れものです。
材料:ひじき30g、人参20g、大豆20g、蒟蒻1/4枚、油揚げ1枚、サラダ油適宜
煮汁:昆布出汁1C、酒大1、砂糖・醤油各大2
1)大豆はたっぷりの水でもどし、戻し汁ごと1時間程度ゆでておきます。
2)ひじきは洗って30分水につけて柔らかくしておきます。
3)油揚げは縦1/2にきり、さらに千切りにしておきます。
4)人参も長さ3cm程度の千切りにしておきます。
5)蒟蒻は人参と同様に切り、さっとゆでておきます。
6)鍋にサラダ油を敷き、材料を入れてさっと炒め、だし汁を注ぎ沸騰するまでは強火で炊いて、アクを引きます。
7)中火で5分程度煮たら、酒、砂糖、醤油と数分おきにいれ、煮汁が半分程度に成るまで煮詰めます。
5.蕪の即席辛子漬け
蕪が旬です。生でも甘くて美味しいですよね。今回は献立が揚げ物や甘辛い煮物が有りましたので、さっぱりとした即席漬けを作ってみました。たくさん作って冷蔵庫で保管し、よく漬かったものを翌日食べても美味しいですよ。お酒のアテにも最高です。
材料:蕪3個、塩小1/2
漬け地:出汁1C、辛子小1、淡口・みりん各小2
1)蕪は葉を1cm程度残して皮をむき、12等分に切り、塩をまぶして10分程度おき、脱水させます。ぎゅーぎゅーもむ必要はありません。
2)漬け地を作って、さらに10分程度漬ければできあがりです。少し汁をはっておだしください。
レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 11月の献立より)