「神無月の精進料理」 2016年10月
秋を肌で感じる今日この頃。空気が乾燥して、朝夕肌寒くなって参りましたね。食材もがらっと変わって、椎茸、占地など普段見かける茸類もお求めやすくなってきました。ほかにも栗、銀杏、サツマイモ、里芋などが旬を迎えています。鎌倉では流鏑馬、お十夜、人形供養、薪能など、興味深い行事もたくさんございます。散策にはうってつけの季節です。ぜひお運びくださいね。
さて、今月は食欲の秋でもありますので、たっぷり秋の味覚をそろえましたよ。ぜひ日頃の献立作りにお役立ていただければと思います。
1.丸十(さつまいも)のあんかけ粥 2.椎茸のグルテンミート鋳込み揚げ 3.占地(しめじ)と春菊のすだち浸し 4.栗の渋皮煮 5.ピー味噌
1.丸十のあんかけ粥
新米の美味しい季節です。炊きたてご飯もいいのですが、米の味そのものの味を粥では味わえるんですよ。でもちょっと食べ時が難しいんです。水を吸いすぎておじやになってしまっては粥の良さはでません。出すタイミングをはかってどうぞできたてをたっぷり味わってください。粥は水加減によって全がゆ(米1に対し5倍の水)、七分(米1に対し7倍の水)、五分(米1に対し10倍の水)、三分(米1に対し15倍の水)などいろいろあります。今回は全がゆにしましたが、お好みで水の量はもっと増やしても良いでしょう。新ものの丸十(サツマイモ)と一緒にどうぞ。
材料:米2C、水10C、新丸十300g程度、黒ごま少々
醤油餡:出汁1C、醤油1/4C、片栗粉大1(水大2で溶いておく)
1)米は洗ってざるにあげておきます。
2)鍋に米と水をいれて、沸騰までは強火、あとは吹きこぼれない程度の火加減で蓋をずらしてして10分炊きます。
3)2に食べやすい大きさに切った(1.5cm四方のキューブがいいでしょう)丸十を加えたら、しゃもじでひとかき混ぜして、さらに10分ほどたき、丸十が柔らかくなったら弱火にしてしっかり蓋をしてさらに5分ほどたき、すぐに器に盛ります。
4)金餡を作ります。鍋に出汁を温め、醤油を入れて、いったん火を止め、水とき片栗粉を加えてよく混ぜてから火をつけて、片栗粉にも火を通します。片栗粉の濃度が高い場合はこのように一度火を止めてからかき混ぜつつ入れると絶対に失敗しませんよ。
5)3にかけ、好みで黒ごまを振ります。
2.椎茸のグルテンミート鋳込み揚げ
グルテンミートはベジタリアンには欠かせない食材ですよね。簡単にいうと大豆の肉。これにお野菜をたっぷりいれてハンバーグ状にして椎茸に鋳込みました。冷めても美味しいのでお弁当にもいいですよ。椎茸とミート部分がはがれやすいので、しっかりぎゅっとくっつけてくださいね。
グルテンミートはフレーク状になった缶詰を使用しましたが、乾燥しているものでもできます。戻すときはお湯か水でどうぞ。
材料:椎茸各2個、グルテンミート(挽肉状)1.5缶(300g強)、玉葱1/2個、人参型を抜いた残り、椎茸の軸、おろし生姜小1,大和芋すり下ろし大1,醤油大1、粉山椒少々、パン粉1/2C程度、片栗粉適宜
人参紅葉型抜き人数分
1)椎茸は軸を取っておきます。
2)人参は紅葉に型抜きし、さっと出汁に塩・味醂(分量外)を加えたものでさっと煮ておきます。
3)1の残りの軸、玉葱、2の残った人参をみじん切りにします。
4)ボールにグルテンバーガーと3とおろし生姜、大和芋すり下ろし,粉山椒、醤油を入れ混ぜ合わせて、柔らかいようなら成形しやすくなるまでパン粉を加え、よく練っておきます。グルテンバーガーには塩味がある程度ついているので、必ず味見をして醤油大1で足りないようなら、塩少々を加えてください。
5)椎茸の裏に片栗粉を振って、4をこんもりと乗せてしっかり成形し、揚げる直前片栗粉を肉の部分だけにまぶして、170度程度温度で少ない油で焼き揚げます。身のほうに揚げ色がついたら、椎茸の側を揚げてくださいね。
3.占地と春菊のすだち浸し
この時期、最もポピュラーなおひたしです。色合いも占地のベージュ、春菊の緑、阿房宮の黄色ときれいです。阿房宮は黄菊の一種で、始皇帝の建てた王宮の名前が付いています。
出汁と醤油の基本割合は10:1です。今回は味醂と酒が入ったのでバランスをとり、少し少なめになっております。きゅっとすだちを各自でしぼっていただきつつ召し上がるスタイルをとりました。とてもフレッシュ感がでますので、お試しください。また、盛り付け前に必ず味見をしましょう。野菜の水の切り方次第でだいぶ薄まったりいたしますので。
材料:占地1.5パック、阿房宮数輪、春菊1わ、スダチ各1/4個
漬け地:出汁1C、酒・味醂・淡口各大1
1)占地は石付きをとり、小房にしておきます。
2)春菊はゆでて水にとり、軽く絞って2cmに切っておきます。
3)阿房宮は花だけむしり、酢を入れたお湯で数秒ゆで、みずにとり、ざるにあげておきます。絶対に絞らないでください。
4)出汁をあたため、調味し、1を入れしんなりしてきたら冷水で冷まし、2を加えしばらくおいておく。
5)盛付の時に3をくわえもりつけて、好みですだちを絞って食べてください。
4.栗の渋皮煮
栗の渋皮煮はなかなか上手にできないという方が多いですね。本来は黒豆などと同様、徐々に蜜の濃度を上げてつけ込むのですが、何ヶ月もの保存食にしないようなら、そこまで手間をかける必要はありません。砂糖を加える時に3回に分ければいいだけです。ぜひ自家製の美味しい渋皮煮を作ってください。名残の茶事の八寸にもぴったりですよ。砂糖は栗の1/2です。また重曹をしっかり抜くのもポイントです。
材料:栗500g、重曹小1弱、砂糖250g、醤油大1
1)栗は渋皮を傷つけないように鬼皮だけをむきます。座付きは残して大丈夫です。
2)たっぷりの水に栗を入れ、重曹をくわえ火にかけ、竹串が通るまで20分~30分程度ゆでます。
3)ゆで汁をすて、水につけて、座付きの皮と筋を竹串などを利用してとり、再び水からゆでて、また茹で汁はすてます。このゆでる作業は重曹を抜くためです。
4)また水を張って栗をもどし、小煮たちしてきたら、砂糖を3回に分けて加え、煮汁が半分以下になったら醤油をくわえ、火を止め1晩おいてから召し上がってください。
5.ピー味噌
立派なおおまさりが手に入りましたので、千葉の郷土料理、ピーナッツ味噌にしました。よく総菜店で売られているのはどうしても水飴の量が多かったりしますし、添加物も心配ですよね。でもあの甘くてこくのある味は、たまらない魅力ある味です。ゆでるのに時間がかかるので、今回は揚げることにより時短しました。また調味料はワイルドに砂糖と味噌をダイレクトに混ぜましたが、できれば事前に練り味噌をつくって絡めるのがオススメです。
材料:生落花生500g、揚げ油適宜、砂糖(落花生の正味の30%まで)、赤味噌(落花生の正味の20%まで)、酒1/4C程度
1)落花生はからをとり、渋皮つきのまま、低温で10分程度揚げます。必ず味をみてください。ほくっとなっていたらOK、さくっとではまだダメです。気長に焦がさないように揚げてください。だいたい120度~130度くらい、小さい泡が立っているかんじの温度です。
2)1が揚がったら、油をすてて、同じ鍋に砂糖と味噌を加え、酒で伸ばしつつ、絡めます。
レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 10月の献立より)
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