「長月の精進料理」 2024年9月
暑さ寒さも彼岸まで…とはよく言ったもので、いきなりお彼岸辺りから気温が10度も下がって、秋らしくなってきましたね。
毎月精進料理教室は第2水曜日なので、今月も残暑厳しい1日でしたが、皆さん休まず来てくださってありがたかったです。
さて、秋の味覚の王様といえば、松茸。年に1度はいただきたいものということで、ご飯は松茸にしました。最初から炊き込むのではなく、最後の火入れに加えて、シャキシャキ感と香りを残します。かといってキノコ類はしっかり火を通さないといけませんので、先に酒と醤油を振って、軽くレンチンしておきます。ほんの数十秒です。ちょっとしたひと手間でお店の味になりますので、ぜひやってみてください。
汁は、作らず代わりに、豆腐を作りました。数年前は、にがりを混ぜただけのざる豆腐、今回は茶碗蒸しのように火入れをして、ゆるく固めました。ものすごく豆の甘みが出ておいしいですよ。薬味はいらないくらいですが、お好きな和のハーブや海藻でどうぞ。お醤油よりお塩のほうが合います。にがりの量は豆乳の1~1.25%程度にしています。2%以上は入れないほうがいいかと思います。豆乳も濃度がないと固まりません。10%以上のものを使用してください。
主菜は、「茄子の煎りだし」にしました。“煎りだし”とは揚げ出しと同じといわれていますが、油の量が違うイメージで私は学びました。煎りだしのほうは、焼き揚げ的といったらいいのでしょうか。味は変わらないんですが、自分ではそんな感じで作ります。ちょっとまだ大根が筋っぽくて辛いのですが、使いました。
副菜1は、重陽の節供もかねて「菊と水菜の浸し」です。三者三様のシャキシャキした食感を愛でていただければ。浸し地の基本は出汁10:淡口1です。酢橘を絞ってもいいですね。好きにアレンジしてみてください。
副菜2は、「出汁昆布の梅煮」です。出汁を引いた昆布を色紙に切って梅干しで煮るだけです。ご家庭によって梅干しの塩味が違いますので、醤油で調整してみてください。ちょっと薄いなと思ったら足せばよし。作っていくうちにいい加減がつかめます。私にしてはゆるいことを書いていますが、昆布・梅干しのもともと持っている塩味や煮詰め具合で全然味が変わるからです。プロっぽく仕上げたい時は、たまりを最後に使いましょう。ぐっとコクが出て、長く炊いたような味になります。
1. 松茸ご飯、2.手作り豆腐、3.茄子の煎り出し、4.菊花と水菜の浸し、5.昆布の梅煮
1.松茸ご飯
材料:米700CC、昆布出汁800CC、塩少々、淡口小2、酒大2
松茸2本(150g)、酒大1,醤油小2
1) 米は洗ってざるに上げて15分は置いてから、浸水しておく。
2)松茸はスライスして、酒大1と醤油小2(分量外)を振り、ゆるくラップをして600Wで10~20秒レンジにかける。
3)1)を炊き、最後の1分のときに、2)を加える。天地返しをして盛り付ける。
2.手作り豆腐
材料:豆乳800CC、にがり10CC
大葉4枚、おろし生姜大1、海苔1/2枚、塩・醤油適宜
1)豆乳ににがりを入れてそっとかきまぜ、容器にそそぐ。
2)容器にラップをして蒸し器で3,4分蒸し、軽く振って固まっていれば、そのまま数分おく。
3)をバットにおき、冷水で冷やしてから冷蔵庫で休ませる。
4)大葉は千切りし水に放ち、海苔はちぎり、生姜はおろして、豆腐に載せて、好みで塩、醤油などと食す。
3.茄子の煎り出し
材料:茄子6本、占地1・1/2パック、大豆油適宜、大根300g、茗荷2個
昆布出汁300CC,みりん・醤油各70CC
1) 茄子はヘタを落として、4等分にし、多めの油で両面焼く。
2) 占地は小房にして、1)のフライパンで焼いておく。
3) 大根はおろして、余分な水分は捨てる。
4)かけ地をつくる。出汁を入れ、温まってきたところに調味し、大根おろしを入れて火を止める。
5) 器に茄子、占地とおき、4)をかけ茗荷の小口切を載せる。
4.菊花と水菜の浸し
材料:菊花8輪、酢少々、水菜1/3わ、塩少々、榎木1/2パック
浸し地:昆布出汁200CC,みりん・淡口各20CC
1)菊花は花びらだけをむしり、熱湯に酢を加え、さっとゆで、すぐに冷水にとりざるにあげておく。
2)水菜は熱湯に一つまみの塩を入れ、さっとゆでて水にとり、冷めたら巻きすでまいて2cmに切っておく。
3)昆布出汁を温め、2cmに切った榎木を加え、調味し、沸騰直前で火を止め、冷水で冷ます。
4) 盛り付ける直前に、3)に1)2)を加え、混ぜて盛り付ける。
5.昆布の梅煮
材料:昆布(出汁で使用したもの)100g、水500CC、酒大3、砂糖大1、味醂大2、
梅干し2個、醤油・たまり各大1
1)昆布は2cmの色紙に切って、水と酒を入れて、強火で炊き、沸騰したらアクをとり、蓋をして10分以上、弱火で煮て柔らかくなったのを確認する。
2)1)に砂糖と味醂、梅干しを加えさらに10分中火で炊き、醤油を加え汁がなくなるまで炊く。
9月のデザート
創作和菓子・空羽kuu 「秋明菊」
レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 9月の献立より)