見出し画像

部下のダメダメ文章、どう指摘する? 編集者が教える「フィードバック」のコツ

こんにちは!

こんな経験はありませんか?

部下の書く文章が読みづらく、社内外とのコミュニケーションに不安がある。部下を傷つけないようにやんわり指摘するも、うまく伝わらず、いっこうに改善されない――。

今回は、編集者として数々の著者に文章フィードバックしてきたぼくが、相手に嫌な印象を与えず、かつすぐ改善につながる「文章フィードバックのコツ」を3つ紹介します。

「部下のダメダメ文章」に悩む上司たち


まずは、調査結果をいくつか紹介しながら、「上司と部下間の文章のやりとり」の現状を見ていきましょう(参照:2022 年「企業における上司・部下間の文章のやり取りに関する意識調査」

上司に対して「部下の作成した文章にストレスを感じたことがありますか」と尋ねたところ、「ある」または「ややある」と回答した上司の割合は84.5%。8割以上の上司が「部下の文章にストレスを感じたことがある」ようです。

© 2024 ANYSOUL. inc. All Rights Reserved.

その原因は、「読み手が必要とする情報が欠けている・説明不足」(65.1%)が1位。2位は「適切な語彙・表現を選んでいない」(46.5%)、 3位は「文に無駄が多く長い」(38.9%)と続きます。

© 2024 ANYSOUL. inc. All Rights Reserved.

どうでしょう。上司の方々にとっては、「そうそう!」と思う部分が多いかもしれませんね。

部下も「上司からの文章アドバイス」に不満


ただ、文章のやりとりでストレスを感じているのは上司だけではありません。部下も同じです。

部下に対して「自身が作成した文章に対する上司からのアドバイスにストレスを感じたことはありますか」 と尋ねたところ、53%が「ある」または「ややある」と回答しました。

© 2024 ANYSOUL. inc. All Rights Reserved.

その原因は、「人によって指摘のポイントが異なる」(48.2%) が1位。2位は「何度も修正を指示される」(30.9%)、3位は「良い文章の手本がない」(28.6%)です。

© 2024 ANYSOUL. inc. All Rights Reserved.

この結果は、ぼくもうなずけます。とくに1位と2位。

駆け出しの編集者時代、副編集長に指摘されたことを直して編集長に見せたら「全然ダメ。やりなおし!」と戻された経験が何度もあります。編集長と副編集長で指摘のポイントが違う。しかも何度も修正を指示される。同じ感じで、「課長の指示どおり直したら、部長からひっくり返された」みたいな経験がある人は多いのではないでしょうか。

「上司と部下の文章やりとり」は双方ともにストレスを感じている――。これはいけません。上司側から行動を変えて、この問題を解決したいところです。

ここからは、相手を傷つけない「文章フィードバック」のコツを3つ紹介しましょう。

コツ①「文章を否定しない」


1つめは「文章を否定しない」です。

文章を否定されると、すごく傷つくんです。着こなしやヘアスタイルを否定されたような感じ。人によっては自分そのものが否定された気持ちになります。

たとえ読みづらい文章だったとしても、「意味がわからない」「社会人何年目?」などと否定するのは絶対NG。「ここをこうすると、もっとよくなると思いますよ」という、あくまでクオリティを上げるための視点で指摘することが大切です。

コツ②「修正指示は具体的に」


2つめは「修正指示は具体的に」です。

文章フィードバックの際、こんなふうに伝えている上司をよく見かけます。

「もっと良い感じにできないかな」
「全体的にパッとしないから、考え直して」
「もっとインパクトある書き出しにしよう」

ただ部下としては、こんな指摘をされても「どこをどう修正したらいいか」がわからないですし、そもそも「なぜ修正が必要なのか?」も判然としません。

修正指示をするときは、次の「3点セット」で伝えるようにしましょう。

  • 修正する場所

  • 修正する方向性

  • 修正が必要な理由

たとえば、以下のイメージです。

第2段落には、直近の具体例があると部長も腑に落ちると思います。A社の事例を追記してください。

文章がやや長いので、1つの文章で「1メッセージ」を心がけてみてください。たとえば、この部分はこう直します(実際に修正例を書く)。同じ感じで、ここ以降の文章も一文を短くする方向で修正してください。

ここでも「①文章を否定しない」を心がけてください。否定するのではなく、「ここを直すとより読みやすくなりますよ」という視点でアドバイスする姿勢が大切です。

コツ③「長文での指摘は【文章】ではなく【口頭】にする」

3つめは、「長文で注意や反省を促すときは口頭で伝える」です。

フィードバック文を長々と書くのには時間がかかりますし、読むほうも苦痛です。

それに、文章は「残り続けるもの」。とくに仕事でのメールやチャットは削除しにくく、ふとしたときに目に入って再びイヤな気分になることもあります。

上司としては「よし。これで部下も改善してくれるはずだ」と思っているかもしれませんが、往々にして部下は、自分の文章に対する注意や反省を促す文章を目にした瞬間、ネガティブな感情に支配されます。それが長文ならなおさら。最後まで読み進める気力を失ってしまう人もたくさんいるでしょう。

ドキュメントデータの該当箇所にコメントする分にはいいのですが、そのあと同じようなことを長々とメールやチャットで書くのは避けましょう。

相手にきちんと理解してもらいたいなら、文章ではなく口頭で伝える。そうしたほうが相手の表情や仕草から、理解度や受け止め方を確認しつつ、言葉を選んで伝えられます。

一方的に長文の説明を送りつけるのではなく、対話を通じて部下の成長を後押しする。

それこそが、上司に求められるフィードバックのあり方だと思います。

とはいえ、口頭で伝えた内容はすぐに忘れてしまうもの。話し合った内容はメモを残しておきましょう。

いかがでしたか。

文章の修正指示って本当に難しいですよね。ぼくも編集者として毎日のようにしていますが、いつも悩みながら言葉をふりしぼっています。AIの普及でラクになる部分もあるかもしれませんが、そう簡単な問題でもなさそうですよね。

では、また次回の記事でお会いしましょう。

この記事が参加している募集

仕事のコツ

with 日本経済新聞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?