読書感想文「再生巨流」

僕が大好きな作家さんの一人が楡周平さんです。ビジネス関係の小説を多く書かれていますが、その中でもお気に入りの一冊が「再生巨流」です。

あらすじ

抜群の営業成績を上げながらも、スバル運輸の営業部次長・吉野は左遷された。その激しすぎる仕事ぶりが、知らぬ内に社内に敵を作ってしまっていた。左遷された吉野は、同じように挫折を味わっている男たちとともに、画期的な物流システムの実現に己の再生を賭ける。

ビジネスの現場のアツい空気が伝わってくる

楡さんの本はどれもそうなんですが、ビジネスの現場がリアルに描かれていて、そこに関わる人たちの熱意も伝わってくるような作品ばかりです。僕も読んでいて、自分の仕事への姿勢に対して気づかされることばかりでした。

本作で印象に残ったくだりはこちらです。

「人間ってのは不思議なもんでな。体を動かし、汗をかくような労働をすると、それだけで大した労働をした気になっちまう。毎日やっていることは変わらねえが、充実感もある。何しろ一日一日の仕事に区切りがあるからな。今日の仕事を終えさせすれば全ては終わりだ。明日のことを考える必要もない。風呂に入って汗を流し、飯をかっ食らって寝ちまえばそれで終わりだ」

これは、吉野が現場の宅配ドライバーを前に語った言葉です。これを読んで僕が感じたのは、現場の仕事と本部の頭脳労働の違いです。

当時、僕は本部で企画を考える仕事をしていました。「企画を考える」というのは、正解が無く、終わりの見えない仕事でした。僕は落ち着く暇もなく、日々、休日でさえ、仕事について頭を悩ませ、企画を考えていました。

そんな時、この本を読んで、現場と本部の違いについての一つの視点が見えました。現場では、日々やることが決まっていて、営業時間が終われば、その日の仕事は終わります。それ以降に仕事をすることはありません。まさに、ここで語られているような働き方だったのです。

どっちの働き方がいいのか

本作では、この後、「いずれ体が追いつかなくなる時が来る」「頭を使う労働は無くならない」と、吉野が宅配ドライバーを口説いて自分の仲間に引き入れていくわけなのですが、どっちの働き方が良いのか、まだ自分には正解が出せません。

確かに単純な肉体労働に比べて、頭を使った労働というのは、無くなる可能性は低いのかもしれません。ですが、そのために、いつ終わるかも分からない仕事を続けていくのも正直しんどいと思います。

「働き方」「生き方」に強い興味があって、いろいろな本を読んでいますが、この問題は心に留めておきたいと思います。