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苦境から生まれた戦法

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苦境から生まれた戦法①

奨励会に入った当初、いつもいつも香落ちが勝てませんでした。

下手を持って居飛車を指すと、どうしても違和感のある駒組みになってしまい、簡単に捌かれてしまいます。

古くからある香落ち定跡や、飯島流、相振り飛車など、色々試してはいたのですが、どれもしっくり来ず、入会してから2年、一度も昇級出来ず6級で辛い思いをしました。

同期で入ったメンツに香落ちで負かされると本当に自信を無くします。何か打開策は

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苦境から生まれた戦法②

前回の続き(読んでない方は「苦境から生まれた戦法①」を読んでください)。

下手の驚愕の秘手▲3六歩に対し、上手の対応として真っ先に思い浮かぶのは△3五歩ですが…

実戦の進行

△4二銀▲1五歩△3三銀▲1八飛△2四銀

奨励会有段者同士の実戦ともあり、▲3六歩に対し危険を察知した上手は端をガードします。とはいえ、△2四の銀がいかにも苦しい。

何故上手は△3五歩を敢行出来なかったのか? 答えは

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苦境から生まれた戦法③

前回の続き。

香落ちに新たな武器を手に入れた僕は、早速奨励会の実戦で「▲3六歩戦法」を試しました。

▲3六歩を着手した瞬間、相手の方は怪訝そうな顔をします。そのまま長考し、△3三角▲1五歩△4二銀▲1八飛△1二飛と進行しました。

下手の端攻めを受ける事に成功はしましたが、△3二飛と指してから△1二飛と回っているため上手は手損しています。その上、通常の香落ち上手△1二飛戦法(いまやこの戦法の名

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苦境から生まれた戦法④

前回の続き。

▲3六歩戦法で勝ちまくり、次第にその存在が周知されてくるようになりました。奨励会の二級になる頃には、例の「△3五歩問題」で勝つことも少なくなりました。

この局面がテーマ図です。ここで上手がハマった実戦の進行を2つ紹介します。

① △4二銀▲1五歩△4三銀▲1八飛△6二玉▲1四歩△同歩▲同飛△1三歩▲1六飛△3五歩▲2六飛(下図)

長手順進めてしまい恐縮です。僭越ながら盤

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苦境から生まれた戦法⑤

前回の続き。

5手目△3五歩型による、▲3六歩潰しを対策せねば…

ここから、▲9六歩△9四歩▲1五歩△3二飛▲1八飛△3四飛と進んで次図。

▲1四歩!! △同歩 ▲9五歩!!

△同歩▲1四飛△同飛▲同香

一見、△1九飛が激痛に見えますが、既に上手がハマっています。△1九飛以下、▲9二歩△同香▲9一飛と進みます。

すぐに△2九飛成と攻め合うと▲1二香成が残ってしまうので、一旦△7二銀と受

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苦境から生まれた戦法⑥

前回からの続き。

狂気の▲3六歩戦法バージョン2を引っ下げ、ついに有段者になれた僕は、相変わらず▲3六歩を指し続けていました。有段者相手だと大体四間飛車にされることが多かったです。

駒組みの手順は省きますが、四間飛車相手だと穏やかな展開になることが多いです。ここまで進むと通常の対抗形に近い形になります。

数手進んで上の局面になりました。下手は四間飛車相手には引き角にするのが工夫です。▲2四歩

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苦境から生まれた戦法⑦(完)

前回の続き。

ソフト時代の到来により、棋士だけでなく奨励会員にもソフト研究の波が訪れました。

平手の研究にも当然力が入りますが、奨励会という場所は大体2、3局に1回は香落ちを指す所なので、人によっては香落ちの研究にもソフトを使う人がいました。

具体的な局面図を上げるとこんな感じです。

そう、近年流行っているエルモ囲いですね。

この当時から知っている人はやってました。もう3年か4年くらい前

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