素手考

昼間働かせてもらっている会社まで6.6キロ
この日は朝からかなり冷え込んでいて、風が強い。
自転車で向かう、電車で行く、どちらかの選択が毎日できる。

かなり寒い上、風は間断なく吹き抜けて行く。どこに置いたか、最近手袋が見当たらないので、今日も素手を寒風にさらしている。

かなりこたえる。思考回路はぐるぐると無風を漂う

こんな寒い風の強い日にこうして漕ぎ漕ぎ行けたなら、もうどんな時にだって大丈夫やな、ひとつ確かな足場が組まれた感じがする。

高校時代はテニス部に所属していて、その練習は野球部よりきついとされていた。とにかく休みがなく、夏休み中も休みなく練習、あまりに休みがないので、昼休みに自転車を漕いで滝壺まで走り、パンツで泳いで急いで戻り、あの、泳いだ後の昼下がりの倦怠感の中また練習、夜は先輩仲間と麻雀、また次の日もこのサイクルを繰り返すというのをやっていた。
合宿もきつく、朝5時から夜11時までの練習、一番は夜の部の筋トレでの足上げ腹筋。仰向けになって数センチ両足を上げる。その姿勢で1分耐える。OBは二リットルのペットボトルを足の上に置きに来る。伝統はきつい。これが今も自分の足場になってくれてる。

(とてもお世話になっている方が現場での仕事をされていて、いつも自転車で直行されている。
最近の現場はなんと片道40キロの距離、朝から自転車で向かっている。新世界から奈良までの距離と同じ。感嘆。
今までは30キロが限界だったそう。新たな現場は40キロ、挑戦するかと思ったらしい。還暦を迎えてますます元氣になってる。こういう話を聞くと高まらずにいられない。)

バイト終わり、この日の帰り道は向かい風がさらにきつく、手は赤くしもやけてきている。
僕は血糖値が低くなってくるときの体感があって、そういう時は体の動きが緩慢になり、何か飴玉の一つでも食べないとヘロヘロピンな状態になる。
あと1キロちょいで帰れるという時にそれが起こった。漕ぎ出す足が上がらない。お昼も結構しっかり食べ、昼からの作業もそこまで大変なものではなかったから意外に思う。
クロスバイクに乗り始めて大体半年、今までは友達にもらったママチャリを駆っていた。
バイトに自転車で向かう道すがら、高台になっているポイントがあって、そこから夕焼けを見るのを毎日の楽しみにしている。
最初自転車で行き始めた頃はデタラメにいろんな道を行ったりしてみて、今の所一番の自分の好きなポイントがここ。
冬の夕焼けは綺麗なんだよな。今日もそれが見れて、その瞬間だけは力がみなぎった。食して得るエネルギーが大半だとは思うけど、自分を動かしてくれるものはいろんな所から取り入れられる。
もう少し。バイト終わりにはビールを飲む。自販機でキリン一番搾りを買った。素手には、冷えてるはずの缶の方が暖かく感じた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?