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境界性パーソナリティ障害|特徴・症状・原因などを徹底解説

あなたの周りで、感情の起伏が激しくコミュニケーションをとることが困難になるときがある人はいませんか?

人それぞれ個性(パーソナリティ/性格)があるので、良い面もあればそうではない面もあるでしょう。しかし、思考と感情のバランスが極度に偏りすぎて自分自身が苦しんでいたり、対人関係で問題が生じている場合、その人は「パーソナリティ障害」の可能性があります。

今回の記事では、パーソナリティ障害の一つ「境界性パーソナリティ障害」について徹底解説します。

・境界性パーソナリティ障害の症状や特徴を知りたい
・境界性パーソナリティ障害になる原因を知りたい
・境界性パーソナリティ障害の人の行動パターンを知りたい

などに興味を持っている人は、記事を最後まで読み進めてください。

<はじめに>
僕は臨床心理士ではないため、パーソナリティ障害について専門的な治療はできません。ただ僕は、パーソナリティ障害の人とかかわった経験があり、とても苦しい思いをしました。その経験から、パーソナリティ障害について詳しく勉強を始めています。同じような思いをする人が一人でも少なくなるように、パーソナリティ障害について知ってほしくて記事にしています。


境界性パーソナリティ障害とは?

境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder:BPD)とは、思考や感情、対人関係などが不安定になりやすいため、仕事や日常生活において苦しさを感じたり支障が生じる障害です。「境界性」の由来は、下記の2つの精神疾患の境界にあると考えられていたことです。

  • 神経症:強いイライラ感が症状として現れるもの

  • 統合失調症:現実が冷静に認識できない「認知障害」が症状として現れるもの

境界性パーソナリティ障害の人はこの境界がわかりにくく、社会にうまく適応できないといわれています。おもに若い女性に多く、男女割合は約7:3となっています。

境界性パーソナリティ障害の特徴・症状

境界性パーソナリティ障害の特徴や症状について、以下で解説します。

見捨てられたくない

境界性パーソナリティ障害の人は自分の存在価値がないと感じていて、見捨てられてしまうことを恐れています。そのおもな理由は、下記のとおりです。

  • 幼いころに両親の離婚などを経験している

  • 両親のDV現場を目撃している

  • 虐待などを受けて愛情を喪失した体験がある etc...

このような経験があると、潜在意識では「同じ思いをしたくない」となることが考えられます。見捨てられてしまう恐れや不安から逃れるために、境界性パーソナリティ障害の人は、通常では考えにくい行動をとっていきます。以下は、境界性パーソナリティ障害の人が取りやすい行動例です。

<例1>
LINEを送って既読がついたにもかかわらずすぐに返信がない場合、自分が期待している返信内容ではなかった場合などに、「私、嫌われたんだ」「もう必要ないんだ」などと感じて、相手から離れないように執着したり、急に激怒する。

<例2>
デートの約束を前日に都合が悪くなってキャンセルしようといわれた場合、パニックに近い状態で激怒する。

<例3>
マッチングアプリで数回会った相手と親密な関係になり、もっと一緒に過ごしたい想いやパーソナルな部分を伝えた。しかし、相手が自分の想いを受け止めてくれないとわかった途端に態度を急変して、相手をけなしたり人格否定するような発言を始める。

このような行動は、見捨てられたくないという強い恐れや不安から、相手の興味を自分に引き付けるためにしている可能性が高いです。一般的に考えれば、良好な人間関係を構築することが困難だといわざるをえません。

境界性パーソナリティ障害の人の行動の裏には、相手に対する強い期待があります。この期待が裏切られた場合に、相手の興味を引き付けるために異常な行動に出ると考えてよいでしょう。場合によっては、摂食障害やODなどの自傷行為、ひどくなると自殺をほのめかす行動にも出たりします。

自己イメージ(アイデンティティ)が混乱しやすい

境界性パーソナリティ障害の人は、自己イメージ(アイデンティティ)がはっきりしていません。ですから、他人の影響を受けやすく、自分の価値観がコロコロと変わりやすいのが変わりやすいのが特徴です。

たとえば、誰かからの一面的評価を全人格評価と捉えてしまうことがあります。褒められた時は好意的に思えるのでよいですが、問題を軽く指摘された程度にもかかわらず相手に敵意をむき出しで怒ることもあるでしょう。相手に受け入れられていると思えれば問題なく、むしろ愛情を強く求める傾向があります。

ただし、ちょっとでも何か指摘されると不当な扱いを受けたと思い、情緒不安定になりがちです。このような対人関係が続いてしまうと、過度なストレスを感じる状態が慢性化する傾向にあります。ただでさえ自己イメージ(アイデンティティ)がはっきりしていないのに、さらにわからなくなるという悪循環に陥ります。

感情のコントロールが難しい

境界性パーソナリティ障害の人は、感情のコントロールが苦手です。見捨てられることに対する恐怖や不安、自己イメージ(アイデンティティ)の混乱から、感情の波が激しく変動しやすいのが境界性パーソナリティ障害の人の特徴です。

特に、怒りの感情コントロールが苦手な人が多いといわれています。境界性パーソナリティ障害の人は、自分の怒りを強い言葉で皮肉や嫌味をこめて放つ傾向があります。これだけにとどまらず、暴力や自傷行為に発展しやすいのが特徴です。特に関係が親しい家族、友人、恋人などに怒りをぶつける傾向があります。

衝動的行動に出やすい

境界性パーソナリティ障害の人は、衝動的行動に出やすいのが特徴です。おもな行動は、下記のとおりです。

  • ギャンブルで浪費、性行為、過食、買い物で散財、危険運転

  • 自殺企図、自殺のほのめかし

  • 自傷行為(リストカット、ODなど)

すべての行動が死に直結するものではないものの、自殺リスクは一般人より40倍高く、境界性パーソナリティ障害の人のおよそ8~10%が自殺により死亡するといわれています。

このような自己破壊的行為を起こすおもな原因は、下記のとおりです。

  • 親しい人からの拒絶、見捨てられてしまった思いこみ

  • 親しい人への失望 etc…

その他の特徴・症状

以上で紹介できなかった特徴・症状について取り上げます。

  • 破壊衝動:卒業の直前に学校を退学したり、うまくいきそうな人間関係をだめにしたりする

  • 解離:自分が悪い人間である感情を表現するため、現実感が感じられなくなったり(現実感消失)、自分の体や思考から切り離された感覚を生じる

  • 妄想性思考

  • 精神病様症状(例,幻覚,関係念慮)

境界性パーソナリティ障害になる原因

幼児期のストレス状況が境界性パーソナリティ障害の発症につながる可能性があるといわれています。特に、養育者に対する愛着の不安定さが、境界性パーソナリティ障害の症状にかかわっています。境界性パーソナリティ障害の人は、特に親へのこだわりが強いのが特徴です。

<例>
身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、養育者との分離、片親の喪失

また、境界性パーソナリティ障害の人は、何らかの原因で脳内にある衝動を抑えたり、怒りや不安をコントロールしたりする部位に特徴があるために、衝動性、怒り、不安、ストレスなどを感じやすくなっているのだと考えられています。

  • 前頭前皮質:行動をコントロールし、合理的判断に関係する部位

  • 扁桃体:怒りや不安といった感情をつかさどっている部位

  • 視床下部/下垂体:ストレスに対する反応に関係する部位

  • セロトニン系:脳内にある神経細胞間の神経伝達物質のひとつ

境界性パーソナリティ障害の症状(具体的な診断基準に基づく医師による評価)

パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)に基づいてなされます。

境界性パーソナリティ障害の診断をくだすには、対象者が不安定な人間関係や自己像、気分を経験し、衝動的な行動の履歴があることを確認する必要があります。以下の項目の5つ以上を満たすことが必要です。

  1. 見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるため必死で努力する。 

  2. 不安定で激しい人間関係をもち、相手の理想化と低評価との間を揺れ動く。 

  3. 自己像または自己感覚が頻繁に変化する。 

  4. 自らに害が生じる可能性のある2領域以上で衝動的に行動する(安全ではない性行為、過食、向こう見ずな運転など)。 

  5. 自殺企図、自殺の脅し、自傷行為などの自殺関連行動を繰り返し行う。 

  6. 気分が急激に変化する(通常は数時間しか続かず、数日以上続くことはまれ)。 

  7. 慢性的に空虚感を抱いている。 

  8. 不適切かつ強い怒りを抱いたり、怒りのコントロールに問題を抱えていたりする。 

  9. ストレスにより引き起こされる、一時的な妄想性思考または重度の解離症状(非現実的または自分と切り離されているような感覚)がある。

症状は成人期早期までに始まっている必要がありますが、青年期に生じることもあります。

また、境界性パーソナリティ障害は、その特性上ほかの疾患を併発している可能性があります。おもな合併症・併発症は、下記のとおりです。

  • うつ病

  • 不安症

  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

  • 注意欠如・多動性障害(ADHD)

  • 摂食障害

  • 薬物依存症

  • 自己愛性パーソナリティ障害

もしかしたら、境界性パーソナリティ障害かも?と思った場合の相談先

パーソナリティ障害の診断は難しく、一般人が簡単にできるものではありません。自分や家族、友人に境界性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関(精神科、心療内科)に相談しましょう。

「医療機関を受けるほどのことでもないような気がする......」

このように思う場合は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみましょう。本人だけではなく家族でも相談可能です。

参考:全国の精神保健福祉センター一覧l厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html

境界性パーソナリティ障害の治療方法

境界性パーソナリティ障害の治療方法は、おもに「精神療法」と「薬物療法」の2つです。特に精神療法をメインに進めていくことが多くなります。

精神療法

境界性パーソナリティ障害のおもな精神療法は、下記のとおりです。

画像引用元:https://osakamental.com/symptoms/18.html

薬物療法

境界性パーソナリティ障害に対して根本的に作用する薬はないといわれています。そのため衝動性や感情の不安定さといった症状を改善するために薬が処方されます。おもに気分の落ち込み、不安、現実認識の低下に対する薬です。

境界性パーソナリティ障害の人との接し方

家族や友人、パートナーなど周りの人たちは境界性パーソナリティ障害の人とどのように接していけばよいのでしょうか。以下で解説します。

本人の治療のための協力体制を用意する

境界性パーソナリティ障害の人は、身近な人に見捨てられることへの不安を非常に強く抱いています。治療をするにあたって、本人は葛藤を抱くでしょう。治療も長期にわたることが多く、すぐに効果が現れる保証もありません。

ですから、苛立ちや不安感を抱くことが多くなる可能性が高いですが、そんなときに寄り添えるのは、本人の家族や周囲の人たちです。安全基地としての役割を担うことで、本人が治療に挑みやすい環境を提供できます。本人を安心させる協力的な姿勢と環境づくりが大切です。

本人に振り回されないようにする

境界性パーソナリティ障害の人は、感情や言動の変化が激しいのが特徴です。そのため、家族や周囲の人が振り回されてしまったり、本人からの強い物言いで責任を感じてしまうことがあるでしょう。本人に対してどう接していいかわからず悩んでしまい、周囲の人がうつ病などの精神的に参ってしまうケースもあります。

このようにならないためには、本人に振り回されすぎないことが大切です。

  • 拒絶しない

  • 過保護にしない

  • 程よい距離感をもつ

などを意識して、本人の言動を観察しましょう。

また、本人の言動の一つひとつは、本人に責任がある姿勢を貫きましょう。

境界性パーソナリティ障害の原因のうち、環境要因として家族の環境があります。とはいっても、たとえこれまでのかかわりに何らかの問題があったとしても、その結果何を感じて、何をするかは本人次第です。家族や周囲の人が責任を感じすぎてしまうと、本人は自分の問題の責任を家族に押しつけてしまうことも考えられます。

たとえば、ある限度を超えた行動が見られた場合には入院してもらうようにしましょう。

「これを超えたら、入院だからね」

と本人と約束をして、仕切り直しをします。また、家族で抱えこまずに専門家に相談して、サポートを受けることも重要です。

親の意識を見直す

境界性パーソナリティ障害の人を親から見ると「失望させられた子」「対応に疲れて困ってしまう子」と映ることがあるでしょう。このような気持ちが行動に現れると、敏感で繊細な境界性パーソナリティ障害の人は気づき、苦しむことになります。

まずは親が傷ついた子の気持ちになって受けとめられるようになることが重要です。親の思い通りにするのではなく、ありのままの子を受けとめましょう。親が子の気持ちになって冷静に受けとめられるようになれば、子も態度を変えて対応しやすくなります。根気よく見守っていくことで、安心感と信頼感が生まれて改善に向かっていくでしょう。

まとめ

今回の記事では、パーソナリティ障害の一つ「境界性パーソナリティ障害」について徹底解説しました。内容をまとめると、下記のとおりになります。

  • 境界性パーソナリティ障害とは、思考や感情、対人関係などが不安定になりやすいため、仕事や日常生活において苦しさを感じたり支障が生じる障害である。

  • 境界性パーソナリティ障害の人は自分の存在価値がないと感じていて、見捨てられてしまうことを恐れている。

  • 境界性パーソナリティ障害の人は特に親へのこだわりが強いのが特徴であり、必要な時期に十分な愛情を与えてもらえなかったことをひきづっている。

  • 境界性パーソナリティ障害の人は、衝動的行動や自己破壊的行為に出ることがある。

  • 境界性パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)に基づいてなされる。

  • 境界性パーソナリティ障害の治療は精神治療と薬物治療の2つで、おもに精神治療をメインになされることが多い。

  • 家族や友人、パートナーなど周りの人たちが境界性パーソナリティ障害の人と接するには、本人の治療のための協力体制をとったり、本人に振り回されないようにする必要がある。

パーソナリティ障害の中でも、もっとも精神的に不安定であるのが「境界性パーソナリティ障害」といってもよいでしょう。根本には「親へのこだわり」があり、境界性パーソナリティ障害を理解するポイントとなります。

境界性パーソナリティ障害の人を支えることは大変なことです。ただ、本人自身も言動や思考をコントロールできず苦しんでいます。本人や家族、周りの人だけで解決しようとするのではなく、専門家のサポートも受けながら、お互いに適切な距離を取りつつも支え合いながら付き合っていくことが大切です。

今回の記事を参考にして、適切な治療を受けて少しずつでもよいので改善していけることを心より願っています。

<参考資料>
境界性パーソナリティ障害(BPD)-08.精神障害-MSDマニュアルプロフェッショナル版
・境界性パーソナリティ障害(BPD)-10.心の健康問題-MSDマニュアル家庭版
・境界性パーソナリティ障害|酒田駅前メンタルクリニック心療内科・精神科うつパニック症気分が落ち込むやる気が起きない眠れないカウンセリング酒田市
境界性パーソナリティー障害|大阪メンタルクリニック梅田院
境界性パーソナリティ障害とは?不安・衝動的になる原因・診断基準・治療・周りの人の対処法を紹介【LITALICO発達ナビ】



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