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校則に関わる理想と現実


学校の校則に関する批判

近年、厳し過ぎる学校の校則に批判が集まっています。

そうした時流の中で注目すべきニュースが目に留まりました。

アメリカの経済誌「フォーブス」の日本版で、先月、「世界を変える30歳未満」として、全国の高校の校則を調べてインターネット上で公開している高崎市の県立高校3年生、神谷航平さん(18)も選ばれたということです。

文科省は生徒指導提要改定を行った

その流れに乗るように文科省は生徒指導提要を昨年の12月に改訂しました。

もはやその存在理由が不明な髪型の指定、下着や靴下の色など、学校にはあまり本義的な意味の無い校則が多いのも事実です。

また、そうした動きに対して教員側の反応も存在します。

このインタビュー記事でも現在における校則に関しては無条件で賛成する教員は少なく、これまでとは空気感が変わりつつあるのも事実でしょう。

校則を望んでいるのは地域社会、企業、etc…

では誰がこうした厳しい校則を望んでいるのかという疑問が残ります。

生徒たちも、保護者も、教員さえも無駄を感じていることが多いというのに、だれが校則の維持を支持しているのでしょう。

その正体の一つが地域の人々の目です。

制服を着崩していたり、あるいは派手な髪色や服装の生徒が街を歩いている場合、すぐに学校に連絡があります。

そのほとんどは学校の周辺に住む住民です。多くの場合は高齢者のことが多いようです。

そうした人たちは自分たちの常識に合わない容姿、格好の若者を嫌い、そうした容貌の中高生を目の敵にして学校に通報します。

「常識がない」、「景観を乱す」、「反社会的だ」、こうした批判は毎日毎週のように学校に電話があるでしょう。

そうした電話が増えるのが目に見えているのにわざわざ火中の栗を拾う学校ははたして存在するのでしょうか…

高卒就職者の存在

加えて大きいのが企業側、採用担当などの声です。

現代は高卒でダイレクトに就職するケースは決して多くはありません。

実際には実業系学科への進学者は高校生全体の3割と言われており、そのうちの7~8割が就職するとされています。

こうした高卒就職を行う企業が求める人材は、身なりがきっちり(短髪黒髪)していて、真面目で運動部に参加、先輩後輩の関係に慣れた人間です。

それらの企業の多くは高卒就職者を現場仕事を中心とする社員として受け入れており、現場作業員の中で受け入れられる人材適性を考慮すれば妥当な判断基準なのです。

そしてそうした就職先を確保するためにも、就職者が比較的多い高校は自校の生徒に対し厳しい校則を課すことになるのです。

こうして見ると、学校側の旧態依然とした体制自体も問題ではありますが、社会の要請としてそうした文化を維持しているという側面も存在するのです。

地域や学力層に応じて状況が異なる

もちろん令和の現代において、著しく人権を制限するような校則が許されないのは言うまでもありません。

また、暴力や一方的な権力によって制限を不当に加えることも同様です。

しかし、世の中の大半が治安のよい、物わかりが良く学力の高い層が住むような地域ばかりではないということです。

有名進学校や麹町中学校を前提にした議論が価値が無いとは言いません。教育学にとってそうした例や社会実験は大きな意義があるでしょう。

しかし、一方で日本の地域の多様性は「学校」という一語だけで十把一絡げに論ずることができないのも事実です。

個々人の自由度を最大限に引き上げることだけが真の多様性を許容するということではない、という理解が必要なのではないでしょうか。

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