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「講義しない授業」は受験対策にどこまで実装可能か?【2023下半期】


「講義しない授業」の隆盛

新指導要領が高校でも施行されて1年以上経ち、主体的対話的深い学び、という表現を体現する授業を模索している教員は少なくないでしょう。

私自身、ここ数年にわたって自身の担当クラスの中でさまざまな取り組みを導入して、試し、そして断念してきました。

これはある程度進学に力を入れている地方の学校、進研模試の上位が県内トップクラス、校内平均は全国平均とそこまで変わらない、国立大学に進学するのは中の上以上の生徒、という状況の学校での経験則になります。

また近隣には大学受験の小規模予備校などはあるが、大手予備校までは通えないぐらいの地域という前提となっています。

さて、今回はそうした状況下における「講義をしない授業」の模索経験をまとめたいと思います。

①反転授業

反転授業はすでに教員界隈では市民権を得ていると思いますが、念のために説明しておくと、授業の前日に事前に授業動画を見て学習するというシステムです。

私も最初はこの形式を考えて試してみることにしました。

まず最初に挑戦したのは自分で授業動画を作成しました。

iPadとGoodnotesを利用して講義ノートを作成し、Meetの録画機能でその説明をする動画です。

これは複数作りましたし、生徒からの評判もそこそこでした。

しかし、一方で動画作成に時間がかかることなど負担が大きく、継続性に欠けることがネックとなりました。

そこで今度は既存のYouTube授業動画、具体的には葉一氏の「とある男」や本田氏の「超わかる高校数学」などを利用して、事前に授業を見せて授業中には問題演習を行いました。

ところがかなりの数の生徒が動画を見ていない状況が発生しました。その場で(こそっと)動画を確認しながら問題を解いたり、教科書をその場で読みながら演習する事も多かったように感じます。

特に数学の場合、事前に見た内容だけでは理解が不足するケースもあり、授業中に説明をしなおす事となって、この方式を断念しました。

②「アクティブラーニング」型

その次に試したのが「アクティブラーニング」型の授業です。

これは具体的に書籍、小林昭文氏の「アクティブラーニング入門」などを参考にしながら実施しました。

彼の提唱するスタイルは授業の前半10分程度講義し、その後は話し合いをさせながら課題に取り組ませるというものです。

このやり方は決して悪いやり方ではありませんでしたが、感想としては「物理」や受験で数学を使わない「数学」ならば可能だろう、という結論に達しました。

なぜならば、このやり方ではどうしても進度確保が難しくなるからです。

もちろん、3年の終わりまで時間をかければそんなことはありませんが、受験対策のたに1年前倒しで数学の授業を先取りすることを考えると難しいのが現実です。

受験で数学を利用する場合、どうしても問題の数をこなす必要があります。理想を言えば少ない問題で多くの状況に対応できるということなのでしょうが、標準レベルの学力の生徒にはそのやり方は現実的ではありません。

結果として、このやり方をそのまま利用することは難しいということになりました。

現在の授業のフォーマット

現在私は主に①と②のハイブリッド型で授業を構成しています。

具体的には最初の20分間ほどで説明をし、その後テーマに沿った演習を各自が行います。

周囲の人間と相談すること自体は止めませんが(声のボリューム次第ですが)、こちらから話し合いを促すことはやめました。

数学の場合、教科書内容では話し合いをして得るものがあまりにも少ない、というのが原因です。

もちろん話し合いをして新しい着眼点を得ることも無いわけではありませんが、問題を解くという目的の下での学習の場合、遠回りが過ぎるために積極的に採用をしていない状況です。

またYouTube上の授業動画などは主に復習に利用しています。生徒の中には授業動画を上手く活用できない人が少なくないため、一旦授業で触れ、それを考え直す材料としての利用に変更しました。

ここまでまとめたことは地方の一高校教師が行っている実例の一つであり、多くの教員が参考になるものではないでしょう。

あくまでも個人の備忘録ということで。

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