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僕らはいつのまにか「おじさん」になってしまっていた~歌謡番組と「ユーミン」に見る視聴者ターゲットの世代交代

あけましておめでとうございます。

先日、年末に知人と話していた時に紅白の話題になりました。

その中で、今の紅白の出演者だと年齢層の高い人たちは見ないのではないか、という話が出ました。

新年最初の記事は、その話と絡めて年末の歌謡番組から考えたマーケティングなどに関する個人的な雑感をまとめたいと思います。

「紅白」と「レコ大」

紅白歌合戦はNHK、日本レコード大賞はTBSが制作する年末の歌謡番組の二大巨頭です。

現代のテレビを見る習慣の無い若者にとってはなじみが薄いかもしれませんが、その1年間にどんな曲やアーティストが流行ったかといった世相を見る番組としてかつては機能していました。

最近はデビュー間もない海外系グループのタイアップ代わりに使われて批判を受けていることもあります。

とはいえ、テレビを見る層とTikTok利用層の差でもあるため、一概に韓流ごり押しとばかりは言えないのかもしれません。
(テレビに取り込みたい層へのアプローチという意味ではアリと言えます)

そうした大型番組の紅白やレコ大を見て、主語を大きくすれば現在のテレビ業界の戦略が「ユーミン」の取り扱いに出ていたのでは、と個人的には感じました。

2022年、デビュー50周年を迎えた「ユーミン」

ユーミンこと松任谷由実さんは2022年にデビュー50周年を迎えました。

そして、同年にはその活動が評価され、シンガーソングライターとして初めて文化功労章を受章しています。

こうした記念の年ですから、当然ながら大型歌謡番組でユーミンの枠を作ることは当然とは言えます。

紅白では松任谷由実 with 荒井由実として本人同士のコラボでの歌唱を披露しました。

また、レコ大では特別顕彰を受賞しました。こちらではビデオメッセージを中心にした出演でした。

しかし、どちらの番組も特別枠での出演とはなっていましたが、番組のトリやオオトリを務めたわけではない、ということです。

仮にも大物歌手の半世紀記念の年、にもかかわらず扱いとしてはあくまでも特例枠に収めたことはとても印象的でした。

ユーミンのファン層はすでに50代以上の就労女性

ユーミンのファン層の中心は50代以上の就労女性という分析がなされています。

松任谷由実さんは68歳、最もヒットした時期は2回、一度はデビュー間もない荒井由実時代の1970年代、そして松任谷由実として1980年代中盤です。

70年代のファンは当時10代、とすれば現在は60代以上、80年代に聞き始めた層は現在は50代後半ぐらいと想定されます。

このことから、ユーミンのファン層の半数は現役世代ではなく、残りの半数もあと数年で現役を引退する層と言えます。

つまり、ユーミンを好む視聴者層の大半は「F3層」と呼ばれる層であることがわかります。

紅白に出演した工藤静香、篠原涼子、MISIA、福山雅治のファン層を考察する

一方でヒットした曲が無いにも関わらず工藤静香さんや篠原涼子さんが会場で歌を披露していました。

工藤静香さんの現在のファン層は「MUGO・ん…色っぽい」などの1988年以降の楽曲を支持する人たちでしょう。この層は当時10代、ということは現在40代です。

篠原涼子さんは小室哲哉さんと一緒に出演されていました。こちらも小室全盛期の90年代前半から中盤に10代の人たちは現在40代です。

また「アンフェア」などのドラマで人気を博した彼女のファン層はそれよりも少し下の30代女性です。

さらにトリを務めたMISIAさんは現在44歳、最もヒットした「Everything」は2000年に発表です。

ドラマ「やまとなでしこ」のOP曲だったこの曲からのファンは多く、そのファン層はドラマの視聴者層と合わせて考えると当時10代後半から20代を中心とすれば、現在においては30代後半から40代となります。

オオトリの福山雅治さんの「桜坂」は2000年のリリース、「ウンナンのホントコ」というバラエティ番組の一コーナー「未来日記Ⅴ」のテーマソングです。当時10代の若者に人気の番組でした。

それ以前のヒット曲「HELLO」が1995年リリース。2010年にNHK大河「龍馬伝」主演を考慮すると、40代を中心として30代から50代女性と広い範囲がファン層となります。

以上からもわかるように、年末の歌謡番組に大量に出演したアーティストのターゲットはいわゆる「F2層」に相当します。
(男性の「M2層」よりも女性にターゲットを絞っているように感じました)

最近ではこうした分類の効果に信ぴょう性が低下しているようですが、テレビ視聴者層との親和性は決して低くはないのでしょう。

僕らはいつのまにか「おじさん」になってしまっていた

こうしてみると、テレビ番組の主要ターゲット層がそれ以前の団塊の世代やポスト団塊から、団塊ジュニアやポスト団塊ジュニア世代へと移行したのがわかります。

最初の知人との話に戻ると、もはや演歌や昭和歌謡を好む層は購買力の低い高齢者であり、テレビ制作者がターゲットとして見ていないということです。

その代わりに、私たちが新たな「おじさん(おばさん)」世代として番組が作られているということなのです。

自分が40代になって感じますが、肉体的な衰えは多少あるとしても、精神的には全く成熟した感はありません。

私個人の話で言えば、20代後半から30代前半の意識からそれほどの変化を感じていないのです。

ところが、世間はすでに私たちを「若い」カテゴリーから排除しているという現実と自己意識とのギャップに戸惑いを隠せない自分がいます。まさに不惑とは名ばかりなのです。

ネットやサブスクにおいては、自分の好む番組のみを見る、選ぶ、候補に上がるため、そうしたことを感じにくいのかもしれません。

私は普段テレビ番組をほとんど見ないため、久々に地上波番組を見て特に強く印象に残ったのでしょう。

自分が「おじさん」であるかを突きつける鬼畜な所業をテレビから受けるという一年の最後になったのでした。

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