看護系大学進学への基礎知識

看護師志望者は想像以上に多い

私の勤務校には看護師を志望する生徒が複数います。

全国でも女性の新卒者の10人に1人は看護師資格を取得していると言われており、非常に多くの人が選択肢に考える進路です。

九州は土地柄、医療系の志望者が多いのが特徴です。特に女子生徒の看護、医療系志望者の割合は非常に高いです。

これは九州の男尊女卑が残る文化や高所得な職業が少ないということが原因とも言われますがどうなのでしょうか。

ただ今回のメインテーマそこではなく、看護師志望の生徒に対する進路指導上、注意すべきことを記録に残しておきたいと思います。

注意点

進路指導としては平均的な普通高校のボリュームゾーンに当たる層ですので、対象となる人は多いと思われます。

看護志望の高校生や保護者、新しく進路担当となった教員の方などの参考になれば幸いです。

この内容は看護師の知人や看護系大学の教官の話を踏まえた上で書いていますが、あくまで私の私見です。その点をご了承ください。

また事実と異なる内容があれば、コメントしていただければ幸いです。

養成学校の多くは大学になった

保護者世代、おそらく40代以上の人達の認識では看護師になるためには専門学校や短大へ通うイメージではないでしょうか。

かつては国立大学には医療技術短期大学部を設置していましたが、それらは全て国立大学の学部に組み込まれています。

そして、2022年において四年制大学卒業の看護師は新卒者の約4割弱を占める状況まで増加しています。

ちなみに男女比に関しては、男性の比率は現在1割弱程度とかなり少ないのですが、ここ10年で倍増しており、増加傾向にあります。

専門学校よりも大学を勧める3つの理由

看護師になりたい生徒(普通高校の生徒を想定)に対して、基本的には大学を勧めています。その理由は以下の3つです。

  1. 賃金格差、昇給、昇進

  2. 隣接資格の取得

  3. 勤務先の選択肢

1.賃金格差、昇給、昇進

まず大卒と、専門卒では給与水準が異なります。初任給では月に5000〜8000円程度のようですが、年間では10万円の差です。

更に、大卒は昇給や管理職への登用の条件になるケースも多いため、そうした点では大卒が有利になります。

また、看護専門学校は3年制のため、就学期間に1年しか差がないこともあり、それほどの時間ロスにはなりにくいでしょう。

2.隣接資格の取得

保健師や助産師などの資格を取得する場合、いくつかの大学では同時取得が可能です。

ただ、これらの養成に関しては大学院での教育が望ましいと日本看護協会などは主張しており、実際に大学院へ養成課程を移行した大学も多いようです。どちらにしても、四年制大学進学が基本的には前提条件となります。

もちろん、専門卒から養成校などで取得することは可能ですが、合格率などを考えると大卒から大学院がスムーズでしょう。

ちなみにですが、個人的には保健師や助産師と看護師資格の同時取得を目的とした大学選択をお勧めしません。

資格取得が困難な上に、大学入学後にコース選抜があるなど必ず同時取得できない可能性も高いからです。

3.勤務先の選択肢

病院によっては大卒のみで求人を出す場所もあります。また、研究機関やそれに準ずる機関、団体での職務も大卒を条件とします。

看護学専攻者の大学院への進学率は低く、一方で看護師養成機関の数は多いため研究分野や指導者での就職も考えられます。

また海外での看護業務等の場合も、学位を取得している場合は現地での資格取得条件を緩和できる場合があります。

看護系大学の受験における注意点

看護系の大学の受験に際しての注意点は以下の3つです。

  1. 選択教科の理科

  2. 大学の入学難度

  3. 出願時期の違い

1.選択教科の理科

おそらく看護師志望の人の多くはメインの受験科目に生物を考えているでしょう。

この場合、受験教科が「生物」なのか「生物基礎」なのかを必ず募集要項で確認する必要があります。この2科目は難度も差はありますが、出題範囲が異なるため確認が必須となります。

大学の入学偏差値とは関係ないケースも多いため、難しい大学だから「生物」というわけではありません。

2.大学の入学難度

入学難度は様々ですが、一般的に難関大学の看護系学科は他学部と比較して難度が低く、そうではない大学の場合は他学部よりも高い、ということです。

地方のいわゆるBFと言われる全入大学においても、看護系学科だけは倍率が存在し、入学偏差値が相対的に高いケースは多々あります。

また、同一地域の大学、特に私立大学の看護系大学は入学難度が同レベル帯になりやすい傾向があります。

おそらくは、看護系志望者の目標は看護師資格の取得が大学名よりも優先するため受験者層が重なり、同一集団が複数大学を同じ傾向で併願しているためと思われます。

そのため、受験者の中に総取りと全落ちの二極化が発生しやすくなります。

3.出願時期の違い

看護系志望者の目的は看護師資格取得のため、専門学校との併願者も少なくありません。

その場合、専門学校の受験時期は大学と異なることが多いため確認が必要です。

また、私立大学の一般選抜に不合格の段階で出願先を探して手遅れということになる場合もあるため、専門学校を選択肢に入れる場合には一般での受験であっても早めに時期を確認する必要があります。

これ以外にも注意点として考えられるのは、自宅通学生と一人暮らしの学生では学業や実習の負担と金銭的な負担に差があることです。看護系の場合は実習などでアルバイトも難しい時期なども存在します。

看護系大学を目指すにあたって

看護職のやり甲斐や楽しさ、あるいは辛さや現実などは現役の看護師の方のnoteやblogにお任せするとして、目指すにあたって進路指導担当者としてのアドバイスをまとめたいと思います。

看護職は常に人手不足で、求人は他職種と比較してかなり多い方でしょう。しかし、病院や法人などによって待遇の差も激しいようです。

人口あたりの看護師数は西高東低で、関東を中心に求人が多いようです。

男女比やこれまでの歴史的経緯から、女性のキャリア形成をしやすい職種だと言えます。また資格職であるため、仮に一時的に職を離れても再就職しやすいのが特徴でしょう。

都市部ではともかく、地方においては相対的に給与水準が高いようです。

そして、何より事前に考えるべきことは看護系大学の卒業者は9割以上看護師となる点です。つまり、大学選択が職業選択に直結するということです。生半可な気持ちで進学をすると挫折する可能性は十分にあるでしょう。

また、かろうじて卒業までできたとしても、一般職の就職の情報を得ることが難しいため、看護以外の就職活動をする場合のデメリットは大きいでしょう。

このあたりが法、文、経、理、工学部とは異なるところです。その違いをしっかりと理解した上で選択をしたほうがよいと思います。

現在も看護師の方は忙しい中、感染症対策をしつつ医療現場で戦われていると思います。

そうした方へ感謝をしつつ、一人でも多くの医療に関心のある生徒を医療現場で貢献できる人材として送り出したいところです。

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