「貧しいからこそ、四年制大学に奨学金を利用してでも進学すべき」という考え方
多くの学校と同じように、私の勤務校にも多様な生徒が在籍しています。
そうした生徒達を送り出し、その後の彼らの人生の続きを伝え聞くたびに、四年制大学へ進学すべきと強く感じることがあります。
高卒と大卒の収入や社会的立場の差
その理由として挙げられるのが、高卒と大卒の生涯賃金の大きな格差です。
私が最初に送り出した生徒はすでに30半ばを迎え、今の時点でも卒業後の進路によって経済格差は広がっているのを感じています。
その差が、さらにあと何十年も重なって行きます。
その額は約5千万円とも言われ、無視できない金額です。
高卒でも高収入安定職は存在します。しかし、それらのほとんどは実業系高校の卒業者の就職枠となっています。
高卒就職は大卒の就活市場ほと自由化が成されておらず、閉鎖的な労働市場です。そんな中で、普通高校卒業者の就職状況は厳しいのが実状でしょう。
また、高卒就職の勝ち組だとしても、一旦就職をしてしまうと会社に縛られる可能性が高いです。主に生産系の職種であり、高卒という資格は労働市場において不利に働きます。
また、海外への転勤や異動も高卒では出来ない可能性があります。これは社内の問題ではなく、高卒の場合は相手国が大卒以上でないと就労ビザを発行しないことがあるからです。
そういった意味で、自由な選択を可能にするというのは大卒の大きなメリットと言えます。
ただ、目標も目的もない無気力な進学の場合はリスクがあることを知っておく必要はあるでしょう。
貧困と奨学金
進学に関する学費の支払いに困る場合、奨学金を利用することができます。
参考までに、実家から通いでの進学の場合、学費のみで国公立大学の場合5万/月、私立大学の場合は10万~12万ほどかかります。
一人暮らしの場合、この金額に単純に居住費5万円を追加しても、国公立で10万円、都会の場合は居住費がさらに高額となります。
大学寮や県人寮を使ってコストを下げても、最低10万円はかかります。
つまり親の負担無しの場合、奨学金も最低でも10万円から借りる必要があるでしょう。
学生支援機構の奨学金
学生支援機構の場合は有利子、無利子の二種類で貸与を受ける事ができます。
近年は返済などが滞ってしまうケースは社会問題化していますが、返済には困らないのでしょうか。
仮に月10万円を借りた場合を試算してみます。
月10万円×12ヶ月×4年=500万円となり、利率が最高の3.0%の場合で20年かけて返済する場合、670万円が総返済額、月額3万円弱の返済となります。
もちろん、この負担は決して軽くはありませんし、自己負担の少ない形で高等教育を受けることができる状態は理想です。
しかし、普通に四年制大学を卒業し、普通に仕事をする場合は返済不可能になることはない金額です。
それ以外の奨学制度や学費免除制度
各種奨学生、大学の学費減免制度、政策金融公庫教育ローン、母子父子寡婦福祉資金など、考えられる手段は数多く存在します。
さらに、進学先を多少工夫することでさらに費用負担を減らすことが可能です。
費用負担の少ない大学
例えば夜間制の大学に進学するという選択肢を考えることです。国公立大学にも夜間制や二部を設定している大学があります。
国公立大学の学費は基準額が決まっており、約52万円ですが、夜間はその半分に26万円になります。
私立大学の夜間は大学によって学費に差がありますが、安い場合は40万円、概ね60万円程度の負担で通えるところが多いようです。
夜間制の大学は昼間に仕事をすることが可能です。アルバイトでも良いですが、学部の専攻と隣接する職種を選ぶこともできます。
また、社会人学生が通っていることもあり、通常とは異なる刺激を受ける学生生活になるでしょう。
大学の設置場所も全国に散らばっているため、一人暮らしをせずに自宅通学を可能にするところも多いのではないでしょうか。
これ以外にも、通信制大学という選択もあります。卒業までモチベーションを維持することが難しいのが欠点ですが、費用負担を最大限に下げることが可能な選択肢ではあります。
貧困問題の本質は情報不足
貧困における問題は、お金だけではなく圧倒的な情報の不足と連動しています。
多くの場合、奨学金や減免制度などのセーフティーネットを知らない、使い方がわからないということも貧困から抜け出せなくなる要因となっています。
この負の連鎖から抜け出すために、大学へ進学するという手段は十分に有効です。
そのためにも、まずは四年制大学への進学を費用負担の面で諦めるのではなく、しっかり調べることが重要です。
そして、わからない場合は学校の教員、担任や進路担当者に相談することです。直接的に金銭的な問題を解決することは出来なくても、何らかの情報を得ることは可能なはずです。
私自身、進路指導担当者として常にそういった意識をもって情報収集にあたっていきたいと思います。
おそらくこの記事に価値を見出すであろう人はnoteの読者には少ないのかもしれません。ですが、ネット上のどこかにこうしたことが書かれていることに価値があるのかもしれないと思い書きました。
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