高校生の文理選択という制度の課題と選択指針
文理選択という制度の問題点
日本中の多くの普通高校において高校1年生から2年生に進級する際に文理選択を行います。
このページを見ている人ならばおそらく当然知っていることであり、同時に選択で悩んだ、という人も結構な数いるのではないでしょう。
そもそも論ではありますが、私個人としては文理選択という制度そのものの存在意義に関して疑問に感じています。
なぜならば、高等学校で学ぶ内容の多くは大学進学をするような人材が最低限修めておくべき知識やスキルであると考えるからです。
文系だから理系科目はわかりません、力学の運動計算や三角関数が使えない、というのは現代社会を生きる文明国家の国民としてはいかがなものか、と感じます。
当然ながら理系だからといって地理や歴史の知識があまりにも乏しかったり、歴史的仮名遣いの文章が読めないというのも同様です。
高校で学ぶことの内容はそれ単体で活用できるシーンは限定的であったとしても、社会人としての基礎知識、あるいは高等教育を受けるための前提条件として機能しているからです。
そうした状況を踏まえると、文理を問わずに学習することは普通高校に通う生徒にとっては義務レベルの活動ではないでしょうか。
大学入試という足かせ
しかしながら大学入試という一定の基準をクリアすることを目標として考えた場合、受験上重視すべき科目とそうでない科目を分別することは致し方ない側面も理解はできます。
理想を言えば大学側も文理を問わない方針で入試を設定すべきなのでしょうが、受験者確保その他を考慮した場合、現在のような文理選択は受け入れざるを得ない大人の事情なのでしょう。
文理選択の悩み
この時期に生徒面談をすると、多くの生徒と話をするのが文理選択での悩みです。
もちろん、すでになりたい職業や職種、方向性が定まっている生徒は別ですが、多くの生徒は自分の将来設計自体が見えておらず、得意教科さえも不確定な状況(学習量が絶対的に少ないために)です。
事実、私は現在進行形でクラスの生徒に面談を実施していますが、7割近くの生徒は文理選択が話題の中心となります。
とりあえずの理系を避ける
そうしたときに常に注意するのが「とりあえずの理系」を避けることです。
どうやら理系の就職が良い、という神話が保護者や生徒の中には存在するらしく、決まらないなら理系、どちらでもよいなら理系、文系にはいつでも移れる、という考えがまかり通っているようです。
しかし、そうした生徒にはかなり厳しくその選択基準が間違いであることを伝えています。
理系受験の場合、数学Ⅲを含めた学習量が2倍以上になること
理系の進学先は基本的にその分野が好きな人が多数派であること
学部の授業の単位認定が厳しく、留年者が少なくないこと
専門就職をする場合、大学院が必須で学部就職の場合のメリットが薄いこと(就活時間を制限されてむしろ不利になる場合もある)
理系に進学をする、特に専門職を希望する生徒などの多くはそもそも文理選択で悩んでいません。彼らは終始一貫して理系なのです。
さらに経験上、こうした文理選択で悩み、迷って消極的な選択で理系を選択した生徒の多くは文転をすることになります。
それまでの理系での学習が無駄ということはもちろんありませんが、受験までの時間を考えた場合はかなりのロスになっていることは確かでしょう。
文理選択の指針
私は文理選択に関して以下のような選択基準を踏まえた上で考えるように、生徒に提案しています。
希望する職業が決定している場合→医理文
職業未定だが理数系に興味がある→理系
職業未定だが文系に興味がある→文系
選択に悩んでいる→文系
選択の優先順位は希望職業が最も高くなります。医療職などの場合大学進学が資格要件になることがほとんどなので、必然的に得手不得手関係なく決定します。
次に文理それぞれに興味がある場合、基本的にはその方向で文理を決定することを勧めています。この時、数学理科が苦手といった要素は加味しないことを注意しています。
なぜならば入試段階での得手不得手は大学の選択次第、受験方式次第でどうとでもなるからです。
例えば理系であっても生物系などの場合、多くの大学ではそこまで専門的な数学を使うことはありません。したがって高校時代に数学が苦手であってもそこまで問題にならないのです。
そして悩んでいる生徒に関して、これは確実に文系を勧めます。先に述べたように、理系は受験段階だけでなく、大学入学後も試験などのハードルが厳しいケースが多いため生半可な気持ちで進学するとリタイアする可能性が高いからです。
(文系でも進級が厳しい大学や勤勉な学生はいますが、こと低難度大学の場合は圧倒的に理系のカリキュラムが厳しくなっています)
文理選択をしない世界
つらつらと書いてきましたが、やはり文理選択をしない、というシステムを準備する時期に来ているのかもしれません。
近年は文理融合型の学部も増加していますが、もとを返せば文理を分けなければわざわざ融合させる必要もないのです。
遠くない未来において共通テストが文理統一することに期待したいと思います。
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