見出し画像

元PEファンドメンバーが推奨する、M&AやPEについて勉強するために活用すべき書籍

こんにちは、元PEファンドのショウです。

私は、FAS業務やPEファンドでの経験を通じ、様々なM&Aの案件に関与してきました。

もちろん実務としてのディールを通じて学んだことが一番大きかったですが、それに先立つ基礎知識を得るために、関連書籍も相応な数読んできました。

今回は、そんなM&AやPEファンド、そしてバリュエーション業務でのレベルアップを図るためのおススメ書籍をいくつかご紹介したいと思います。

なお、PEファンドで必要とされている知識全般に関しては、下記記事にも記載しておりますので、こちらもご参照いただければと思います。



■M&A、PEファンド関連

①企業買収の実務プロセス

おススメ度★★★★☆

M&Aに関わる人々やその役割、買収戦略、バリュエーション、ストラクチャー、税務、DD、SPA、PMIなど、M&A業務に必要な概要を網羅的に解説した一冊。FASや投資銀行、事業会社の経営企画からPEファンドまで、M&Aへの関与を始める方に最適な一冊。

この書籍はM&A全体の流れから各要素を丁寧に解説しており、実践的な内容となっている。幅広い内容を網羅しているため、基本的な内容に加えて専門書を探求する手助けとなる。一読して全体像を把握し、それぞれの分野に深く入っていく良いステップと言えるだろう。

②会社売却とバイアウト実務のすべて

おススメ度★★★☆☆
この書籍は、多くの中小企業が抱える事業承継問題に資するべく執筆されており、M&Aのアドバイザーのみならず、プリンシパルとなる中小企業のオーナーや役員陣にも積極的に推薦したい一冊。

会社売却を検討するセルサイドのM&Aのプロセスが、しっかりとしたストーリー仕立てで工夫しながら記載されており、M&Aに慣れていないオーナー等が読んでも具体的なイメージが膨らみやすいと思われる。

その他、M&A一般のプロセスや論点、バリュエーションなども、初級者から中級者向けに記載されており、基本的にはこれからM&A仲介やFA業務に進む方向けの内容と言えるだろう。
また、ベンチャー企業の評価手法についても記載があるのは、興味深いところ。

③PEファンド活用の教科書

おススメ度★★★★★
PEファンドについての学習を始めるならばまずはこの一冊から!

PEファンドとはそもそもどのようなものであり、どうやって儲けているのか(LBOを使ったスキームの説明)や、実際のM&Aのディールでの各プロセスの説明、関連する法令やPEファンドの投資案件の実例等を比較的わかりやすく解説してくれる良書で、PEファンド在籍中も何度も読み返した。

これ1冊をしっかりと精読すれば、PEファンドとしての必要最低限のスタートラインに立つことが可能となる。
また、FASや投資銀行でPEファンドをクライアントとする立場になった時にもぜひこれを読み、クライアントの理解を深めていただきたい。

④日本バイアウト研究所の書籍シリーズ

おススメ度★★★★★

M&AやPEファンドの動向について研究されている(株)日本バイアウト研究所が編集しているシリーズ。事業承継編や事業再生編、事業再編編等いくつか種類がある。

中身の構成としては、最近(発行時点)におけるPEファンドが関与しているM&Aのトレンドや、M&Aに関連する専門的論点、スキーム等の解説から始まり、PEファンドのシニアメンバー等へのインタビュー、そしてなんといってもPEファンドの実際の投資案件の事例が、および投資先の経営者インタビューが豊富に掲載されている。

その投資事例に関しても、本書の編集者側が解説する形ではなく、PEファンドメンバー自身が直接的に記載をしているので、投資前の段階の問題点から投資後のPMIの苦労、そして成長させていくまでのストーリーを臨場感たっぷりで理解できる構成となっており、読み応え満載の内容となっている。

特に、各ファンドの投資後の具体的なバリューアップ手法・事例に関しては、ファンドの実務上も非常に学ぶことが多く、参考にさせていただく機会も多かった。

PEファンドへの転職を検討している方も、バリューアップ施策や苦労に関するイメージは絶対に事前に膨らませておいた方が良いと思うので、このシリーズを最低2~3冊は面接前に読んでおくことを推奨したい。

⑤買収ファイナンスの法務

おススメ度★★★★☆
PEファンドに入社した若手に立ちふさがる、難しい対応事項の一つが、LBO契約周辺である。
その周辺契約等も含めたレンディング対応に関しては、銀行や事業会社の財務部等のごく一部の出身者しかなじみのない部分かと想定される。

この書籍では担保契約からコベナンツ、メザニン等も含めたLBO契約で必ず直面する論点の各プロセスについて、丁寧かつコンパクトに記載されており、レンダーやリーガルファームとの交渉・コミュニケーションを円滑にし、PEファンドでのエクゼキューション力を高めるうえで非常に役に立つことであろう。
(ただし、基本はリーガル向けの本であるため、担保周辺等、法律に精通している人間でない場合にとっては難しいと感じる部分も一部ある)

■バリュエーション

①企業価値評価の実務

おススメ度★★★★★
バリュエーション業務において、実務上対峙する各種疑問・論点につき、Q&A形式(130項目程度)でひとつひとつ丁寧に解説しており、非常にわかりやすい良書。PPAについても後半部分で相応に解説がある。
全体的なレベル感としては中級者向け。

一通りバリュエーションについて理解した方でも、細かい論点について深堀している書籍であるため、ふと実務で困った際に辞書的に活用でき、バリュエーション業務を行うのであれば実務のバイブルとして必ず手元に置いておきたい一冊。

②企業価値評価_バリュエーションの理論と実践

おススメ度★★★★☆
言わずと知れたバリュエーションにおける定番教科書。
片巻600ページと大ボリュームの内容であるが、少なくとも上巻に関しては全体を一読する意義は高い。

実務上役立つ内容もさることながら、前半に関してはバリュエーションを考えていく上での文字通りの原理・背景についてしっかり解説しており、いかにバリュエーションが奥深く、かつ面白いものであるかということを学ぶことができる。

バリュエーション業務に直接関与する人でなくても、DD、FA、M&A仲介、戦略コンサル、PEファンド、事業会社M&A担当、事業会社経理、等、幅広い業種の方に役立つ一冊である

ただし、内容としては決して初心者向けではなく、中級~上級者向けであるため、初学者は他のバリュエーションの書籍で基礎知識武装をしてから本書を読むことをお勧めする。

なお、現版は第7版であるが、アップデートのたびに翻訳も読みやすくなっている印象。

③コーポレートファイナンス 戦略と実践

おススメ度★★★★☆
バリュエーション、コーポレートファイナンスの初心者にはもってこいの一冊。何となくバリュエーションについて我流で学ぶと、バリュエーションの各要素について、十分に理解せずに実務で使ってしまっている(実際それでも実務が回ってしまうことも多いのだが・・・)人も多いのではないか。

そんな人に対し、図表イメージ等を多用しながら、そして実際の上場企業の実例を使いながら、初心者向けにわかりやすい表現でバリュエーション、コーポレートファイナンスの各種論点について解説してくれている。

具体的には、BS/PL/CFの財務三表、ROA、ROE、ROIC、WACC、CAPM、ベータ、DCF、マルチプル、等といったキーワードについて、それって実はこういうことだったのか!!という感じで初学者の方の理解が進んでいくと思われる。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?