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成長期に起こりやすい『動きのぎこちなさ』=『思春期不器用』の捉え方と解決策

BODYschoolの石田です。

今回は成長期に子供たちが陥る可能性のあるかもしれない、動きの問題についての内容になります。最近ご相談の多い、成長期特有の悩みの解決になればと思いまとめてみました。

今回の記事でわかること

・以前は動きが良かった子で、身長が伸びる時期に動きがぎこちなくなる子がいる
・そういった現象を『成長期不器用』と表現される
・成長期不器用は『やる気』などの精神論では解決できない。むしろ逆効果。
・その時期の過ごし方、解決策
・そうなる以前に行っておくといいこと

お子さんを見ていて、「低学年の頃は動きが俊敏だったのに、最近なぜか動きがぎこちない」「動きにキレがない」「技術が落ちた?」などといったことを、スポーツをしている高学年のお子様を持つ保護者の方の中には感じたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

もしかしたら自分自身がそうだったかもしれない、という保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

今回の記事は、そのような成長期の動きの問題に悩む子供たち・保護者・指導者の方にお読みいただきたいと思い書き記しています。
今後そのような成長期の動きの問題に陥る可能性を可能な限り減らせる方法もまとめていますので、まだ成長期ではなくそういった問題に直面していない方にも読み進めて頂ければ幸いです。

このような成長期の動きの変化は指導者から見ても、保護者の目でもわかりやすく起きてしまう現象です。このような現象は、身長が急激に伸びている時期に起こりやすい現象で、成長期のスポーツ障害と同様に子供たちにとって悩ましい問題です。
日本では『クラムジー』と呼ばれることが多いですが、
日本国外では『思春期不器用』と表現せれているようです。

クラムジー=思春期不器用ではないのですが、用語の説明は今回は省き、
成長期に一度獲得したであろう動きが、ぎこちなくなること、パフォーマンスの停滞が一時的に起きてしまうことを『思春期不器用』とここから先は表現していきます。

成長期に陥るスランプのようなものを思春期不器用
・急に動きが遅くなってくる
・思い通りに身体が前みたいに動かせない
・痛みはないがなぜか身体が重い

このような、運動の一時的な変化が起きてしまう思春期不器用は、指導者の中でも実際に成長期の子供の動きが鈍くなっている変化に気づきながらも、気持ちの問題、体力の問題と片付けられることもまだまだ起きており、保護者の方から相談を受ける機会もスクール生問わずごに最近増えています。

チームで動きが良かった選手が、そうでなくなる訳ですので目先の試合のことを考えると指導者はなんとしてでも、前の状態に戻したいと思われるケースが多いかと思われます。

「やる気あるのか?」
「サボるな!」
「しっかりやれ!」

あげればキリはないですが、このような抽象的なメンタル的な声かけで、
どうにかなる問題でもありませんし、むしろその言葉で子供自身のメンタルが落ち込むこともあります。(チームでこう言われて落ち込んでいるんですけど、どうしたらいいでしょうか…こういった相談が多いです。)

メンタルが落ち込むと、当然プレーも悪くなることが最近では示されています。
ネガティブな言葉を浴びれば浴びるほど、子供たちは萎縮して動きに悪影響を及ぼします。

スクールにもオープン当初からそのような子が来てくれましたが、プレー中叱責を浴びることが多いとのことで、時期的に見ると成長期で身体のサイズも変わっている段階でした。動きにキレがない、跳べない、肩がプレー中に上がる、ひどい時はプレー以外の時も上がっている、競技があんまり楽しくないと言っていました。
トレーニングを続けていき、筋力の向上や自分の身体を上手にコントロールできるようになり、プレーにも変化が見られるようになり、マイナスな言葉を浴びる回数も減り、楽しくなったと表情も良くなり、肩の力みもなくなり、これまで無縁だった市の選抜選手にも入ることができたようで、最初にトレーニングに来てくれた頃とは動きもですが、競技を楽しく行えたり、表情が良くなったことは嬉しい変化でした。

前置きが長くなりましたが
ここからは成長期の動きの変化(思春期不器用)を防ぐ・軽くするには?
その対処法はどうすればいいのか?をまとめていきます。

思春期不器用を感じた時の対策と避けるべきこと

大まかに下記の5つに分けました

① できるだけ身体を大きく動かす運動をする
② 体重の急激な増加に気をつけること
③ トレーニングや練習で無理な負荷をかけすぎないこと
④ 新しい技術、動きなどを覚えるトレーニングばかり行わない
⑤ 癖や違和感を直そうと、必要以上に神経質にならないこと

もう少し細かく見ていきます。
 
①「できるだけ身体を大きく動かす運動をする」こと。

思春期不器用になると多くの場合、身体を大きく動かせば動かすほどその子自身はは『動きにくさ・違和感』を覚える傾向にあるため、思春期不器用の現象が強く出ている子ほど、『うまくできる自分を演出しつづけたい、違和感を減らしたい』と、そのために動きを小さくしてしまう傾向にあります。
このように、必要以上に小さい動きを続けてしまうと、身体や脳はその小さな動きを覚えてしまい、思春期不器用の現象が治まってきたとしても、以前のようなダイナミックな動きを取り戻せなくなることもあります。
この思春期不器用のその先の問題も防ぐために、できるだけシンプルで身体を大きく動かす運動が良いと言われています。

例 )シンプルなトレーニング
腕を大きく振るスキップ
走り幅跳び
立ち幅跳び
側転
アニマルウォーク                          など

基本的には思春期不器用の時期は、今までやってきた運動体験・内容をできるだけシンプルに反復して、感覚を確かめることを優先していくことが推奨されます。
なぜ確かめる作業を優先するのかは後ほど述べていきます。(※1)

② 体重の急激な増加に気をつけること。
身長のサイズ変化にプラスして、急激な重量の変化まで加わると身体のボディーイメージの形成・再考がスムーズに行いにくくなってしまうので気をつけたい部分です。

③ トレーニングや練習で、無理な負荷をかけすぎないこと。
④ 新しい技術、動きなどを覚えるトレーニングばかり行わないこと。
⑤ 癖や違和感を直そうと、必要以上に神経質にならないこと。

思春期不器用は「身体の変化に脳や神経系・感覚器がついていけてない」状態と言われています。この時、子どもの脳は身体の変化についていこうと必死で、今までやってきた運動経験を思い出しながら感覚を取り戻そうとしています。これは普段よりも自覚しない運動ストレス負荷を感じている状態とも考えることができます。

こういった時期は、シンプルな運動や練習、これまで習得してきた内容の反復をすることが良いことだと、現時点では言われています。
逆に、伸び悩んでいるから新しいことを習得して、その場をなんとか抜け出そうともがくことは逆効果であることが多いです。

新しいことを覚えようとしたり、疲れで普段の動きができないのに動きを反復させてしまうと、今までの運動経験や感覚をより混乱させてしまうことに繋がります。
また、大人から動きのマイナスの変化を極端に指摘されたり、そのことを精神論で対処するような負荷がかかると、その子自身の動くことへの動機も削がれてしまうことにつながり、競技熱が冷めてしまうといった問題もスポーツ界では現在でも多々あるようです。

また、変化に気づきたからといって、その違和感を直そうと、変にこう動けばいいよと言葉をかけてしまうのも、その子自身の内観・動感の振り返りを阻む可能性もあるため、神経質に働きかけたりしないほうがいいこともあります。
ここが大人側の難しい部分であるとは思いますが、変化にきづき、負荷量をコントロールし、動く感覚を感じれるような運動をシンプルに環境設定しながら、楽しく見守ってあげることが、その時期を楽しみながら抜け出す、スポーツを長く続けるポイントにもなると思っています。

上記の③④⑤が、今までやってきた運動体験・内容をできるだけシンプルに反復して、感覚を確かめることを優先していくことが推奨されている理由です。(※1)

気づく・見守る難しさと大切さ


最近ある男の子の動きがこれまでと明らかに違うなと思う時期がありました。
そう感じたことをチームメイトの保護者の方に感じたことをお伝えすると、チーム活動時も動きが前とは違い本人もお母さんも気にして悩んでいるみたいです…ということがありました。後日、保護者の方ともお話しする機会があり、これまではスクール利用は不定期でしたが、動きの変化を感じて以降は毎週きていただけるように調整していただき、思春期不器用に対して感覚を取り戻す・身体をつなげる作業を行ったり、アドバイスを行うことができています。

今現在はスクール内で見られる動きは、以前と同様になってきているように感じていますが、引き続き成長期は無理をすることなく、競技を楽しみながら続けてもらえたらなと思いながら対応しています。

このように俯瞰してみることがフィジカルコーチ・理学療法士である僕の役目でもありますが、チームでその子を見ていない、その子の親ではないからこそ、第3者目線で関わることができると思っています。

どうしてもチームになると、人数や時間の問題や勝敗が結びつくため、ゆっくり見守るといったことが難しいケースがまだまだ多いのではないかと思います。
特に人数が少ないチームになると無理せざるを得ず、成長期に過度な運動ストレスや思春期不器用からくるストレスが重なり、怪我を繰り返してしまったり、悩んでしまったり、葛藤するというケースが多いように感じます。
そのような時期を過ぎして、成長期を過ぎた頃にはスポーツを辞めましたという子も整形外科時代に出会ってきました。

こういった現象も減らしたいと思ったことも病院を飛び出した利用の一つです。

このような現象に気づくとなんとかしたいと思う方が多いかもしれませんが、
見守ることと練習量の調整を大人側がコントールすることができると、その時期のスポーツ障害の発症予防や成長期以降の良好に競技スポーツの継続につながるのではないかと思っています。

親・チームのスタッフとなると難しい部分になるかと思いますので、
少しでも子供達の力になりたいと思っています。

有難いことに指導者の方にも、投稿を見ていただけているようですので、
どちらかというと指導者の方向けにこの章は思いを綴らせていただきました。

『思春期不器用』が出現する前にしておくといいこと


ここまでは起きてしまったことに対しての対応策を述べてきましたが、最後にそうなる以前に取り組んでおくといいことをまとめて終わりにしたいと思います。

BODYschoolにお子様を預けてくださっている保護者の方々は、ご存知かもしれない内容かもしれませんが最後まで書き進めていきます。

思春期不器用が出現する前にしておくといいことは、とにかくたくさんの運動経験を積んでおくことです。

参考『運動神経がよくなる本 中村和彦(山梨大学)著』

小学生までに上記のような基礎的な動きを経験・獲得しておくことが、その先々の運動パフォーマンスの向上にも非常に有利に働きます。また、思春期不器用の現象が起きている時期は、過去の運動経験を思い出しながら今現在の身体とのつながりを修正し直している時期です。ですので過去にいろんな動きを経験し、あらゆる運動感覚を持っていることがその時期の振れ幅を最小限にすることにつながります。
感覚が少ないと、少ない材料から今の身体と動きを繋げなければいけないため、幼少期からたくさん運動経験がたくさんある子と比較するとそうでない子ではどうしても差がうまれてしまう可能性が大きくなります。

これは特定スポーツを幼少期から行っている子は特に意識していただきたい部分です。チームでそのような機会をウォーミングアップ等で十分に行えればいいですが、時間的・人員的にも実施することが難しいのが現状ではないのかなと思います。

特定のスポーツとなると野球であれば、バッティングや投球・捕球の技術トレーニングに時間を多く割くことになりやすいです。
サッカーで言えば、ドリブル、パス、シュートなどの技術トレーニングに。
ゴールデンエイジ期に技術を高めておくことは非常に大切なことで、どうしても上手になるためにその競技に特化したことをトレーニングすることが優先的になってしまいがちですが、長い目で見ると競技に特化した以外の身体的な運動技術も同時に高めるような取り組みを行っておくことが、その先のスムーズな成長を後押しすることに繋がります。

また、まだ特定スポーツをされていない子でも、その先でのスポーツ活動や成長期以降の運動参加率を高めるためには幼少期からの運動経験がとても大切です。

終わりに


ここまで成長期に出現する、これまで動きが良かった子の動きがぎこちなくなる『思春期不器用』について、関わり方と対策をお伝えさせていただきました。

色々と書き記してきましたが、他のSNSでも思春期不器用の対処法を示しているものがありますが、学術的に効果が検証されているものが少ないため解決や予防に必ずしも繋がるかどうかは明らかではないと現時点では言われています。

ただ子供たちを見ている中で、ある程度の運動経験値があり、適切な環境設定で身体を動かし、ほどよく見守ることができれば動きは戻ってくることが多いと感じています。

大切なのはその時期にどう周りの人たちが関わり、子供をサポートできるかだと思います。
だからこそ保護者の方々のみに関わらず、より多くのスポーツに直接的にも間接的にも関わる大人の方に、もっと言えば子供にもそういった現象に直面した時の関わり方や考え方を少しでも認知していただけると、悩む子も少なくなり、長くスポーツを楽しめるのではないのかと思っています。


子供たちとの関わりを通して、施設内外を問わず、より多くの運動を経験していただき、その中で自信をつけながら子供たちが前向きに成長していけたらな…と、今と過去と少しその先を見据えながら今年の残りも子供たちと時間をともにしたいと思っています。


フィジカルコーチ/理学療法士
石田 將


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