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『グレイテスト・ショーマン』のバーのダンスが好きすぎる話

2017年に製作され、日本では2018年に公開されたミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』。とにかくストーリーがはちゃめちゃなため、好まない人もいるとは知っている。私は劇場で観て「もう観ないな」と思ったのに、YouTubeで好きなシーンだけ観ており、その頻度の高さから「これはブルーレイを買ったほうが良いのでは」と、重い腰を上げてブルーレイを買った。その後、ディズニープラスで配信が始まり、ソフトを持っているにもかかわらず、何度も観ている。

なかでも、バーでヒュー・ジャックマンがザック・エフロンを口説き落とす一連のダンスがたまらない。以下。

他の歌唱シーンでは観られないほどに画面が地味である。これは次にもあてはまる。ゼンデイヤとザック・エフロンのシーンである。以下。

ゼンデイヤとザック・エフロンのダンスに関しては、空中を使った大きい動きで魅せている。広い場所を存分に使っており、見ごたえがある。

一方、ヒュー・ジャックマンとザック・エフロンの「The Other Side」は、きらきらとした華やかさには欠ける。場所もそれほど広くないバーの中だけだし、動きに制限がかかっていることは間違いない。バーは全体的に薄暗い。その地味さを、ダンスと歌でカバーしているところが、まず、すごい。歌は別撮りとしても、ダンスは2人(バーテンダーいれて3人)の息があっていないと出来ない。彼らは、この高難易度のダンスを、「もう1回お願いします」と言われても同じように再現できるのだ。いくらそれが仕事とはいえ、いくら練習を重ねたからとはいえ、同じダンスを何度も出来るというのは素人の私から考えると途方も無いことである。カメラワークもコロコロ変わるし、一発で撮っているとは到底思えない。忘れがちだが、クリント・イーストウッドのような早撮りでもないかぎり、俳優およびスタッフは「同じことを何度もさせられる」仕事だと思う。

もう一度YouTubeを貼る。

8秒:グラスを置く音のタイミング
17秒〜:テーブルを叩く音から、バーテンダーの動きにかけて
26秒:投げたボトルを受け取るバーテンダー
45秒〜:投げたコインを受け取り、椅子を蹴るバーテンダー
1分18秒:腕を前に出すザック・エフロン
1分24秒:床を掃除するバーテンダー
1分31秒:柱を離してテーブルにつくときのザック・エフロンの手の動き
1分36秒:バーテンダーの手の動き
1分41〜:グラスを回収するバーテンダーの動きとザック・エフロン
2分19秒:3人全員が、肩や首に布(マフラーとか)をかけ、座る
3分10秒〜:指を鳴らし、2人の動きに合わせて踊るバーテンダー
3分28秒:ふらふらしていたのにきちっと前転するザック・エフロン
3分31秒:ザック・エフロンとヒュー・ジャックマンの右足の動き

以上が特に好きなところである。なかでも、3分10秒からのバーテンダーが一番好きだ。調べたところ、この役はおそらくDaniel 'Cloud' Camposという人が演じていて、このことをツイッターに書いたら、彼のファンの日本人からリプが来た。日本にファンがいるくらいの知名度と考えるとこれはすごい。

そう、私はこの映画の中で、このバーテンダーが一番好きなのだ。かりかりに痩せた体躯、手足の長さ、キレのある動き……セリフは一言もないしこのシーン以外での出番がないものの、存在感がはんぱない。また、不自然な場所に居るということもなく、彼の動きを追っていると、どこからどこへ移動して、そこからどのように動き出すかや、椅子などの物の動きが全部わかる。まあ当たり前のことではあるが、瞬間移動しないんだよね。この「当たり前のこと」がうまくいかないと、どんな映画もしらっとして観ることになるだろう。

『グレイテスト・ショーマン』は、けっして「よくできた」作品ではないと思う。ただそれは主に物語についてであって、役者の演技やダンスや歌とは関係がない。あの有名な「This Is Me」も、物語を追っていると「あれ、これって対バーナムの恨み節なんじゃ?」と思うのだが、別にいいんだ。1箇所でも気にいるところがあれば、その映画は鑑賞者にとって特別なものになりうる。カットの切り替わりの美しさや、ほんとうにどうでもいいようなところをCGで作成しているあたりなんかも私はすごく好きだ。以下。

小銭をこぼすところなんて別に普通に撮ればいいのにCG! 好き!

『グレイテスト・ショーマン』が好きだと言うと映画界隈ではなんとなくバカ扱いされる気もするのだが、まあいいんだ、私が、私の気持ちで、好きなものを好きだと言う、それが大事なんだと思う。


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