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復職前日、夜Q時
「仕事と恋愛は似ている」理論に則るなら、復職は復縁と似ていることになる。
実際そうだと思う。
「この人と離れよう」と決めたけれど、時間が経ったり状況が変わったり思うことがあったりで、「もう一度一緒にいよう」と決めること。
一度別れた相手ともう一度一緒にいることを選ぶのに必要なのは、「別れた原因となったことを変える」覚悟だ。
「一度だめだと思った相手のことを、時間の経過と共にもう一度好きになる」という心理は、場合によっては危うい。
たとえば、「DVが苦しくて別れたのに、時間が経ってやっぱり恋しくなったからまた付き合うことにした」としても、DVが治らなければ同じことの繰り返しになる。この場合、復縁するかしないかは冷静な視点(時に第三者の視点を借りて)で検討するべきだし、復縁するとしても、「DVが起こらない」という状況に変える必要がある。
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『映画の続編は大抵つまらない。続編をつくるなら、「前作はなかったことにするほど全くの別物の傑作をつくる」という覚悟が必要』と書いたのは、私の敬愛するひとりの作家だ。
あったことはなかったことにはならないが、それを乗り越えて別のことをつくりだすことはできる。
一度した判断がひっくり返ることなんて、人生ではよくあることだ。だから一旦離れることも、もう二度と触れないことも、もう一度触れたいと思うことも、全然間違いではない。その時抱いた感情がすべてだと思うから。
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仕事を恋人に例えるなら、私の場合、何が別れの原因だっただろう。緊張やプレッシャーが多いこと、若手ひとりの孤独感、仕事内容と文章に関わりたいというジレンマ。
でも彼のこともちゃんと好きだった。厳しいけれど私を成長させてくれる気がしたから。私のため、という言葉が嬉しかった。厳しい彼に選ばれた自分が好きだった。
でも「それはDVじゃない?」と言ってくれた友人がいた。そこでやっと、もしかしたら知らない間に、精神的DVを受けていたかもしれないと自覚した。私はつらいの感度がよくわからなくなることがある。どんなにつらくても耐えられてしまうモードに入ることがある。つらいと感じることがゆるされない気がしてしまう。そんな時に、つらいという感覚を大事にしてと言ってくれるひとがいてくれてよかったと思う。まだ、自分がつらいのかつらくないのかという判断基準はふわふわしていて、何もかもつらいような、何もつらくないような気がしてしまうけれど。
別部署への復職とはつまり、彼の好きだったところと別れる原因となったところ、その両方を一旦忘れ、新しく出会い直すことかもしれない。
そう考えたら、私は「別れた原因となったことを変える」覚悟を持って、会社と復縁できると思った。
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ここまで至れたのには、信頼できる人たちの支えや助言があったからだ。
支えとは実に色々なかたちがあるということを、私は知った。
言葉で支えてくれる人、行為で支えてくれる人、背中を押してくれる人、手を引いてくれる人、時に助言してくれる人、迷ったり泣いたりしてしまう弱さごと肯定してくれる人。
ありがとう。本当にありがとう。
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コメダで熟考したメッセージを上司に送り、夕方からシャワーを浴びた。
そして母親と電話をした。つらいことと向き合うのはどうしようもなくつらかったけど、復職前に一旦話したかったから。いつもながら沢山泣いてしまったけど、本当につらいことに目を向けて話せたら、少し心が楽になった気がした。幸せを願ってるよ、という言葉が、いつかちゃんと届けばいいと願っている。
入社式前日の夜を思い出す。久しぶりに目覚ましを6時台にセットする。上司へメッセージを送り、母親への電話をしたことで、不安に対し痛み止めではなく抗生剤を打てた気がした。とはいえ不安で落ち着かないので、アクエリアスを飲みながらさっきから呼吸を整えている。
怖いよ、今目の前に知り合いがいたら、誰それ構わず泣きつきたくなってしまうくらい怖くて仕方ないよ。でも怖いのは仕方ない。当たり前。まずはそれを受け入れる。それしかできないよ。でもそれならできるよ。
大切なのは、今の状況を落ち着いて受け止めて、そこで抱いた感情に素直になること。
人生の漂流なんて、2ヶ月で終わるわけがなかった。漂流はたぶん、穏やかにゆるやかにずっと続く。
岸辺を見つけて、流木につかまって、息継ぎをしながら生きていくのかもしれない。
明日の私が、今日より笑っていますように。
私の人生や文章と関わってくれたひとに、ありがとうがちゃんと伝わりますように。
今日は目覚ましを2つかけて寝ます。
おやすみなさい。
また明日。
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。