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「あのころの理髪店」


まちの散髪屋さん・美容院。
四角の看板、くるくる万華鏡。
いつから横文字の名前になったのかしら。
カットサロン・ビューティーハウス……


パーマ屋さん

「パーマ屋さんに行くわな」
月に一回、おばあちゃんが行く。
パーマ屋さんの中でカーラーを頭に、いっぱいつけられて。
「魔法のおかま」が頭にポッコリすっぽり入った。
おすまし、おばあちゃん。
動かないで座ってる。

お釜って、頭が良くなる機械かな?
オトナになるってタイヘンだ。
ちいさなわたしの不思議ハウス。
おばあちゃんに、ついてきたけど待っててもヒマだし先に帰る。


おばあちゃんの頭、ふんわり、くるくる、ウキウキ。
笑顔でパーマ屋さんから、ご帰還。
行く前と、ぜんぜん違う。


「トシとると、髪の毛がすくのうなるし、パーマネントせなアカンのや」

ちいさいわたしは、美容院も病院も区別がつかない。
でも、わかった。
あのころの美容院。
心がウキウキするところ


散髪屋さんのマンガ

「散髪屋さんに、行ってくる」
わたしは、お兄ちゃんに、くっついて行く。


いつも湯気がたっていて、模様がついた固い床。お風呂屋さんとおんなじだ。そう、タイルの床。


外に立ってる太い棒。
くるくる、ぴゅ~んと止まらない。
赤・白・青……赤・白・青……


これは何かわからなかったが、どうでもよかった。
だって、散髪屋さんの本棚は、マンガがいっぱい入ってたから。


ずっと読んでた「750 ナナハンライダー」
高校生になったら、2人でバイクに乗って喫茶店に行くんだね。


庖丁人味平ほうちょうにんあじへい」も、おもしろかった。
だって、料理で戦うんだもん。

小学生のわたしは、免許も資格もわからない。
でも、わかった。
あのころの散髪屋さん。
夢中になれるものをさがそう


美容院は縮図

わたしは、おとなになった。
パーマやトリートメントも、ヘアマニキュアも何でもやってみた。

美容師さんのカット。
床に落ちる黒い、かたまり。
落ちるごとに頭がスッと軽くなる。


アシスタントさんが、ホウキでササッと集めていった。
タイミングよく、手際よく。
シャンプーする人は、いつもあの人。
シャンプーしか、させてもらえない。


でも、わかった。
あのころの美容院。
どんな仕事も、下積みから


あのころの理髪店

まちの散髪屋さんも美容院も、いつの間にか看板を下ろしてしまった。

仕事の休みの日に美容院に予約を入れて、頭と心ををリセット。
また明日から頑張ろう。
美容院に次に行く日まで。
若いわたしの楽しみだった。


あれから……
わたしは、すっかり髪の毛も少なくなった。
いまなら、あの日のおばあちゃんの気持ちがよくわかる。
そんな歳になった。


カーテンが閉じられた美容院。
散髪屋さんで読んだマンガ単行本は、古本屋さんにあるかなぁ……


また読んでみたいなぁ。
若がえらなくても、いいから。


あのころの理髪店で。



毎週水曜日は
「たてもの」の日


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに


最後までお読みくださり、
ありがとうございます。

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