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エッセイ

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妖怪ゼニゲバ―

令和2年7月1日。 日本各地は妖怪ゼニゲバーに占領された。 「ジャスコン」、「ようかどう」、「コンビニ―」、「越後屋」などの日本を代表する選手の選手宣誓により始まった、妖怪ゼニゲバ―による日本占領。 「我こそは妖怪ゼニゲバ―なり!」 この報に拍手喝采し、小躍りしたものもいたかもしれない。 様子見を決め込んでいた小心者、はなから何も考えず流れに乗るだけの人。彼らにとってはまさに天の声、お告げ。この宣誓をきっかけに、小物の妖怪ゼニゲバ―があまねく日本に誕生した。 妖怪ゼニゲ

トイレよ、お前もか?

20年ほど前、語学留学をした。 初めての海外一人旅。 初めての乗り継ぎ。 不安もあったが、それよりもわくわくでいっぱいだった。 空港で学校が手配した車に乗り込み、これからしばらく住むことになるアパートメントに向かう。 間取りは、日本でいえば2LDK。 2ベッドルームに、1.5バスルームと呼ぶのだろうか。ホテルによくあるユニットバス、バスタブとトイレと洗面台がひとつになったものとは別に、独立したトイレがあった。 部屋の探検もそこそこに、荷物を降ろし身軽になったわたしは、

ごまかし

お弁当屋さんのバイトを辞めてから、それなりの季節が巡った。だから、もう話してもいいだろう。 バイトをしていたお弁当屋さんは、あるブランド鶏を売りにする鶏専門店だった。ランチのお弁当はワンコイン前後ということもあり、お昼時はいつも混雑する人気店。店の前には○○鶏を謳う大きなのぼりが立てられ、メニューにもしっかりとブランド鶏の名前が記載されている。お客さんは、それを信じて買っていく。そして、私も信じていた。 でも、働いて少したった頃、私は気がついてしまった。 ブラジル産の肉

カップラーメンの不具合

いつものように電気ケトルに水を入れ、スイッチを入れる。 しばらくすれば、「頑張ってお湯を沸かしていますので、今しばらくお待ちください」とでも主張するかのように、しゅんしゅんしゅんしゅんとにぎやかな音を立て始める。 スープは塩分の塊。 飲んじゃダメ。 血圧の敵です。 どうしてカップラーメンは、塩分を抑えられないのだろう。ラーメン自体が塩分が高いものなのか、それともカップラーメンの問題なのか、ラーメンにそこまで興味がないので調べたこともないが、塩分を抑えた商品を開発すればい

孤独なヒーロー

「並んでるんですけど」 ふいに険を含んだ言葉が、背中越しに飛んできた。 驚いて振り向くと、そこには福士蒼汰似の高校生くらいの若者の姿があった。すらっとしてなかなかのイケメンではあるが、そのことを自覚している感が体からにじみ出ており、少し鼻につく。 友人らしき人と二人並んで立っていたが、友人の方は「俺、知らねーっすよ」とばかりにそっぽを向いていたので、先程の言葉を発したのは福士蒼汰似の彼のようだ。 東京からそう遠くない観光地でお正月を迎え、宿の人におすすめされた神社へ初詣

いま、思うこと

感情は大切だが、感情に流されてはいけない。 すごい時間を生きていると思う。平和な世界しか知らず、平和について真剣に考えたことがなかった。平和という言葉もどこか他人事だった。ずっと続くものと思っていたから、与えられた平和な世界に感謝の気持ちを持つことすらなかった。 わけの分からないウィルスから始まり、教科書の中でしか知らなかった出来事が身近で起き、平和な時間は終わった。 心臓がずんとなった。 少なくとも、しばらくは平常心でいられなかった。でも、これは私の心の問題。誰かに

あいつを探せ

あいつが行方不明になった。 思い当たるところは全て探したが、どこにもその姿はない。「これにてごめん」とばかりに、忽然と姿をくらました。 一体どこへ。 ついさっきまで、確かにここにいたのに。 あいつが姿を消すことは、これが初めてではない。私をからかっているかのように姿を消し、見つけてごらんと私を試す。 思い当たるところを目を皿のようにして探しまわる私を、あいつはどこかからひっそりと見ている。逃げたところで二度と出番は訪れない、捨てられる運命だというのに。だからこそ、それを

ぼくの地球を守って

近所のパン屋が潰れた。 定休日だと思っていた。 次に通ったときも照明は消え暗いままだったが、たまたま同じ曜日に通りかかっただけだと思い気にもしていなかった。なぜなら、レジ袋有料になってからパン屋との縁は切れ、私とは交わらない世界になったから。 そんな中、ネットニュースで全店閉店の記事を読んだ。 行方知れずの社長に、残された52億の負債。感情を持っていく場がなく、やりきれない思いだけを抱えることになる、あまりに無責任な幕引き。借金の大半は銀行からの借り入れのようだが、倒産

今日も焼きそばを食べる

私は、今日も焼きそばを食べる。 秘伝はない。 隠し味も裏技もない、なんの秘密もない、ありきたりな焼きそばを。 みんなが大好きな卵の王道「目玉焼き」? 面倒くさい。 肉? 解凍していない、ましてや一人のお昼にお肉は贅沢。 天かす、紅ショウガ、青のり? ない。 冷蔵庫をあさり、出てきたキャベツ。お正月休暇でゆっくり休まれたことだろう、そろそろ私のために働いてもらおう。あとは、玉ねぎだけか……。 今日の焼きそばは、てんこもりキャベツと玉ねぎだ。 お昼の焼きそばは、たいてい

おいしいよ

白くて、つやつや。 ひと粒ひと粒が、光を受けてきらきら輝く。 主役なのに、脇役に徹することができる潔さ。どんなに悪者にされても、邪険に扱われても文句ひとつこぼさない。 変わらず、そこにいてくれる。 日本人としての心を育んでくれる。 白米が大好きだ。 とまらない。 脇役だった私の食事から、いつしか主役になっていた。白米があれば、おかずはどうでもよくはないが、以前ほど考えなくなった。日によっては、白米と、てんこもり具沢山のお味噌汁だけということもある。 生活が変わり、色々

みんなで考えよう

どうしたら日本人のための日本を取り戻すことができるのだろうか。 日本人がいるから、日本という国が存在する。 日本という国があるから、日本人が存在する。 国がなくなったら、そこにアイデンティティーは存在しない。日本人がいなくなった日本は、日本ではなくなる。多様性、共生を叫んでいる人たちは、どう考えているのだろうか。ユダヤ人のように国を追われた日本人の未来しか想像できない。 国土を失っても日本人でいられるのだろうか。 八百万の神々も存在し続けられるのだろうか。 信仰する人々

トイレとセルフレジ

セルフレジ。 便利だと思う。 だが、一つのレジに一つのセルフレジでは意味がない。せめてもう一台欲しい。 次の人が、パン一個だけのときの店員と客からのプレッシャーたるや。じっとり一挙手一投足見られている視線を感じてのお会計。とても気まずい。 何社くらいがセルフレジを作っているのだろう。このまま、それぞれの会社が他社と協調することなく独自性を強めて開発していけば、トイレと同じ道をたどってしまう。待っているのは、ただただ利用者が不便なカオス状態。 今は黎明期なので、様々なタイ

正社員にしたら負け 給料上げたら負け 外国人雇わないと負け レジ袋無料にしたら負け 個包装やめたら負け 袋詰めしやすいよう環境を整えたら負け 目が曇っていないと負け 忖度しないと負け ペンは剣より弱くないと負け 横へならえの勝ち

種違い

父親の一番下の弟だけ、種が違う。 幼い頃に会ったことがあるのだろうが、彼のことは記憶になかった。大人になり会ったとき、彼は、私にとって初対面と一緒だった。 道を外れた人。 息子二人は、ちんぴら。 それが晴れがましい席で彼らに対して抱いた、私の最初の感想だった。と同時に、種違いが頭をよぎった。 同じ兄弟でもこんなにも違うものか。一人だけ他の兄弟と似ていない。みんな小柄だが、ひとりだけ上背がある。他の兄弟は真面目だが、彼だけいきがっている。 そして何より、同じ環境で育