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【NOPEの解説と個人的解釈】鬼才ジョーダン・ピールに寄せて

Nope Nope, Nope ! (ない、ない、ない!)


鬼才Jordan Peeleが、またも奇妙なSFホラー映画を世に投擲した。

まず目に留まるのは、このタイトルである。コメディの王者であるJordanは、タイトルにユーモアでも込めたのだろうか?

なぜ、英語でハッキリとした拒否を示す"Nope"なのだろう?

もちろん、Spectacle(見世物)から目を逸らし、ハッキリと"No"と言う否定的な視線を穿つ"Nope"の意味もあるだろう。

しかし、それだけではないのだ。
Jordan PeeleやAngel役のBrandon Pereaは口をそろえてこうい言った。
これは"None of planet earth"の意なのだと。
"UFO"でもない、"UAP"(Unidentified Aerial Phenomenon)でもない}"None of Planet Earth"…。ちなみにUAPとは、かつて、米国政府がUFO騒動を収めるべく、国民的のattentionを逸らすために作られた造語である。
そして、今回、Jordanはそれを"NOPE"と表現した。
ある意味では"Alien"、ある意味では違うDimensionから現れた、得体は知れないが直視せずにはいられない「見世物」

これは、主人公のOJとEmerald (以下Em)が手にした黒人としての映画スターへの切符である"Spectacle"(見世物)が「世間に知られるまで」に名付けられた、彼らの中での全く新しい異物=見世物("NOPE")への向き合い方を描いた映画なのである。


①現代のSpectacle への固執と私達への影響


Jordan Peeleは、はっきりとNOPEについて、"Specatacle"が私達を蝕み呑み込んでいく様子から着想を得た、と下記のインタビューで語っている。

"This is a society of spectacle, and the idea of spectacle harms us in many ways. whether its something that we are so obsessed like when we give it too
much power it has a spectacular nature to it or it is because we use spectacle to distract ourselves form the truth. We have this very dark relationship with it." (僕たちは「見世物」(バズりとかsensationalとかそういった類の注意を惹くもの)の社会に生きているけど、この見世物は僕たちにとって害になることだらけなんなんだ。僕たちが見世物に囚われすぎるとそれがどんどん肥大化して収拾がつかなくなるし、僕たちは時に見世物を使って真実から目を逸らせようともする。つまり、見世物と僕たちの関係はすごく危険で闇に包まれているんだよ。)
"I think about "bottleneck" like we were in the traffic. When we were in traffic, there is an accident, and the traffic slows down. It is because we are sneaking a peak of that awful spectacle and its slowing everybody down, so that I latched on to that and I was like let's make a movie about that."(「ボトルネック」って言葉の例がそうなんだけど、例えば、交通渋滞に巻き込まれている時、みんながいったいどんな酷い事故(見世物)が起きたんだろうって、スピードを落として見ようとするよね。僕はそこから着想を得たんだ。このことについて映画を作ろうってね。)

Jordanの言う通り、この映画は、Specatcle (見世物)について問うた映画である。主人公は寡黙な青年OJと活発で夢見がちな妹のEmelaldであり、二人は謎の死を遂げた父親が叶えることのできなかった、「調教した馬を映画に出すことで映画業界で成功する」ために奮闘する。それとは、対称的にSpecatcleを食い物にする韓国人の男性がひたすら見世物へ引き込まれていく姿が描かれる。そしてそれは、下記二つの視点に分けられる。

▶視点①Specatcleへの「対峙」・・・OJとEm

冒頭のシーンでは、兄妹の父親の謎の死から6か月が経過しており、二人はせっかくCMの撮影に呼ばれるものの、父親の残した穴は大きく、「馬が暴れたから気に入らない」という理由で雑に追い出され、OJは生計を立てるために馬を売る決断をする。だがその夜、OJは遠くから聞こえてくる断末魔の叫びと高速で雲の間を動く円盤のような何かを目撃する。父親を殺したのはあの"UFO"かもしれない、と考えた二人は、その円盤状の何か(見世物)を撮影すれば、映画業界のスターダムを駆け上がることが出来ると確信し、命を懸けて撮影に取り組む。のちに解説するが、特にEmはOprah Winphelyのような黒人のスターになることに拘泥しており、なんとかしてSpecatcleを捉えようと奮闘する。Emの原動力はなんら消費主義に踊らされる現代人と変わらないが、主人公が兄妹であることに注目する必要がある。Emと対称的な性格のOJの洞察力と観察力は、消費主義に対する懐疑的な視点と第三者視点となり、二人の良さを活かして、二人で見世物に向き合うのである。だから二人は「呑み込まれ、消費される」のではなく、見世物と「対峙」することが出来る。

▶視点②Spectacle の「消費」・・・Jupe 

OJの馬の買い取り先は、かつて子役としてSitcomで活躍していたJupeという韓国人の男性である。彼は、1995年のSitcom"Gordy's Home! "の撮影中に発生した悲劇に巻き込まれた過去を持つサバイバーである。その「悲劇」とは、今まで従順でお茶目だった"Gordy"という名のチンパンジーが、風船の破裂音によって突然キレて出演者を襲ったというものであるが、その際に自分だけが助かったという「不幸中の幸い(最悪の奇跡)」から、Jupeは自分だけが奇跡に愛され、「見世物」を飼いならすことが出来ると思い込んでいる。そして、OJが売った馬を「円盤状の何か」=「見世物」に食べさせるというショーをHollywoodの隣のRaunchで開催し、自らが見世物を実演する側に回っていた。Spectacleをむやみに生み出し、人々を扇動しお金を稼ぐ、所謂現代の消費主義の権化=コンテンツクリエイターである。

NOPEでは、この二つの視点が対照的に描かれる。
OJとEmは、円盤状の何か(見世物)を何とかして撮影しようとするものの、その凶暴さと予測不可能さに何度も諦めようとする。
しかし、そこでOJは何度も "I've got a thing to take care of "と繰り返すのであり、(彼は父親の「責任感」を背中に背負っている)兄妹は立ち向かい続けることを決心する。後に説明するEmの行動力も、実際は黒人としての歴史に根付いている。
一方のJupeは子役時代の「奇跡」を生きる糧として、Gordyの撮影プロップがある部屋を貸し出してお金を稼いだり、自分の見世物のためにまるまるスタジオを作ったりと、自分が「見世物」側になっていく。そして、最悪の奇跡が起きるのである。彼が”Specatcle”と呼ぶショーが始まるや否や、"Lucky"と名付けられた、すぐに彼がAlienと呼ぶ円盤状の何かに食べられるはずであった馬が、逃げないのである。Jupeが「見世物」を見くびったことにより、その本質を見抜くことが出来ず、ある日突然、何か少しずれただけでそれが牙をむいたのである。(これは、飼いならされていたと思っていたGordyが突然キレたことと重なる。)そのため、すっかり見世物に魅せられたJupeとSpecatcleのために集まった観客たちは、「見世物」と目が合った瞬間、吞み込まれ、すっかり消費され「吐き出されて」しまう

しかし、OJはあることに気づく。
この円盤状の何かは、「目を合わせなければ襲ってこない」、と。

②「俺を分かったような目で見るな」ー Dominateの忌避


さて、なぜ我々は「見世物」を直視してはいけないのだろうか?著者もこれは考え込んでしまったが、下記のサイトに納得のいく考察を発見した。

"But OJ perceives its limitations. He realizes that the creature considers eye contact dominating, causing each of the victims to become the meal when they look into its eyes. So they have to avoid eye contact to escape from it."(OJはこの円盤状の何かにも、生物的な限界があるということに気づくのだ。OJはこの生き物が、自分と「目を合わせること」を自分を「支配しようとしている」と捉え、その瞬間見る物全てが「消費すべき対象」に変わるということに。だから、OJ達は決してアイコンタクトをしてはいけないのである。)

目を合わせる、それはSpectacleを見たい、という衝動、「円盤状の飛行物体」と言えば中にはエイリアンがいて…。といった好奇心と"Guity Pleasure"(背徳感から生まれるひそかな愉しみ)を掻き立て、それに心も体も蝕まれるということへの比喩である。つまり、円盤状の何かは、見る者の心持によって、その本性が暴かれるのである。「見世物」を直視しないなど、普通に考えれば、厭世的であり狂気の沙汰である。だから、Jupeはもちろんのこと、Jupe Parkで見世物を見ようとして吞み込まれるのが「普通」なのである。そこに世間に注目されるものの本質を見抜く穿った見方と、反逆的な、時代逆行的な何か強い意志がない限りは、見世物への対峙の仕方を変えることが出来ないのである。
それゆえ、私たちが「見世物」への向き合い方として、OJとEm側に回るのか、Jupe側に回るのかは、この映画を見て振り替えざるを得ない。私達の、普段の消費社会における振る舞いが、そのままこの映画の捉え方につながるのである。



③Alienは誰も飼い慣らせない


ここまで考察したところで、私たちは最終的にこの"NOPE"を、見世物を、そして"Jean J"を飼いならすことはできるのだろうか?

答えは否である。

考察に入る前に、ここでもう一つのインタビューの動画を見て欲しい。

このインタビューでは、Jordan Peeleの過去作"Get Out"では鹿が、"Us"ではウサギが、今回の"NOPE"ではチンパンジーと馬が印象的に描かれていることに、インタビュアーが着目し、Jordanにその意図を尋ねている。Jordanは動物ごとに込められた意味というよりは、「作中で描かれる動物は私たちが社会をどう扱っているかを移す鏡」であると答え、「私たちは生来悪い性を持っている」というメッセージの投影であるとする。おぼろげな記憶ではあるがJordanの処女作"Get Out"において、白人の彼女に鹿が跳ねられるシーンは、黒人と白人の力関係を現すとされており、今回の"NOPE"ではチンパンジーと馬が印象的に描かれ、テーマの主軸ともなる。(後で解説する。)

そして、今回動物は「消費社会」の投影となった。突然キレたチンパンジー、狂ったように走り出す馬、本性を隠していたNOPE。動物や生き物という立場を借りながら、それらは「見世物」としての存在と、それを私たちが本当に理解をし、共生することの難しさを語っている。

Gordyが突然キレ、人を襲ったのは、実際の事件に基づいているのは有名な話だが、ここでは敢えて触れない。 (気になる方は"Travis"という名のチンパンジーの事件を調べてほしい。ただ酷く痛ましい事件であるので、むやみに調べるのはおすすめしない。)そのGordyであるが、目が合った対象を襲ったことは前提として、襲ったのは全員白人である。そして、ステレオタイプのAsianであったJupeは襲われなかった。その理由として、側の青い靴が「重力に逆らって立っている」という「最悪の奇跡」に気を取られて目を合わせなかったからであるとか、テーブルクロス越しで目を直視しなかったからであるから等色々と説はあるが、個人的にはチンパンジーが同じ白人の中のAsianという、「見世物」(見られる対象)だったからである、という「おまけの夜」さんの解説が一番しっくりくる。

Gordyがキレたのと同時に、父親が亡くなった時期と同じくして、円盤状の何か(見世物)は人を襲い始める。おそらくこの6か月間で、Jupeは何度も円盤状の何か(Alien, NOPE)を呼び出し、「馬」を搾取していたのだろうが、彼はそのAlien(NOPE)の本質を見抜けなかった。Jupeは、幼い頃は自分が搾取の当事者であったが、その立場が逆転して見世物を繰り出す搾取する側になった途端に、Jupe事態も自ら繰り出した見世物に吞み込まれてしまう(搾取されてしまう)のである。

結局、私たちは黙って見世物を消費するだけではそれに呑み込まれてしまうし、本質を理解した気になるのではなく、それとの共生の仕方を見直す必要がある、という警鐘をJordanは鳴らしている。



④結局、Raceとは切っても切り離せない

ここで少し冒頭の映画史の話をしよう。Emeraldの、数ある映画の中でも最も印象的な登場とも言える、下記の台詞に注目してほしい。

"Did you know that the very first assembly of photographs to create a motion picture was a two-second clip of a Black man on a horse?"(世界で一番最初の動画を作るための連続写真は、馬に乗った黒人男性の2秒のクリップだったのよ。)

そしてこの台詞と共に、Emは「私がこの映像の総監督よ」と宣言する。続けて、19世紀にこの連続写真の撮影に成功したイギリスからの移民Eadweard Muybridge(エドワード・マイブリッジ)の名は知れ渡ったのにも関わらず、「映画史で世界初」のスタントマンだった黒人男性の名前は残っていない、と説明する。そして、その黒人男性は自分とOJの"Great great great grandfather"であった、と。

のちに、この連続写真にトマス・エジソンが感銘を受け、世界初のキネトスコープを発明することとなるのであるが、これほどの偉業に貢献した肝心の黒人の存在は消されているという着眼点が、この映画の肝となる。そしてこの言質は、冒頭に述べたEmeraldの「行動力」「Oprah Winphelyへの固執」にもつながる。Emeraldは、Specatcle(見世物)である円盤状の何かを捉えることで夢であった「世界的に有名になること」そして、「黒人として成功すること」を叶えようとするのである。

そして、この兄妹は幼少期から慣れ親しんできた「馬」(=黒人の映画史の象徴)を味方につけて戦い、現代の見世物に「確かな知識とプライドをもって」立ち向かい、消費されてしまうことを防ぐのである。

ちなみに、Emeraldのプライドと行動力を裏付けるには、もう一つストーリーがあり、彼女は父親に馬を任されなかった、という悲しい思い出を引きずっている。

"Emerald explains that she was promised a horse by that name, only to have her father take it for use by the family business." (エメラルドは、家族のビジネスのために、大好きだったJean Jacketと名付けた馬を貰えると期待していたのに、それを売られてしまった。)↓下記より引用

Emは、幼少期に、父親に初めて馬を任される約束が叶わなかったことをずっと引きずっており、「円盤状の何か」に思い出の対象として、その馬の名、"Jean Jacket"と名付ける。そのJean Jacketを「乗りこなす」=「見世物」に吞み込まれず、その「本性を世間に伝える」ことになる、実は映画史における新たな歴史を作ったのは、このEmeraldなのである。OJが昔から妹を「見ていた」ことで妹を支え続け、闘いにおいても自らJean Jを引き付けることで19世紀の連続写真の「無名のスタント」となり、Emeraldがその姿をはっきり映した、と言う意味では、兄妹の勝利と言える。

さて、ここまで黒人の映画史を踏まえて映画全体を考えると、冒頭に、私は2つの視点があると述べたが、実は3つある、と考えられると思っている。

「Specatcle(見世物)を作り出す者」の視点、

「ただ消費する(ことによって消費される)者」の視点、

それを良くも悪くも「変えていこうとする者」の視点である。

Jupeは「作り出す」「消費する」側、OJとEmは「変えていこうとする者」である。Angelも「変えていこうとする者」であり、見世物に魅せられたAntlerは最終的に消費する者になってしまった。

降り注ぐ絶望と狂気と恐怖の中で、最後まで兄妹が生き残った (OJについては最後に考察したい)のは、「黒人の映画史」に名を刻み、歴史を作る存在となる必要があったからなのではないか、と私は思う。

ここまで見てくると、映画の細かい設定に全て説明がつく。

個人的な考察①:1.Angelの短いセリフ "Is it worth it?"がすべてを物語る

今にもAngelとEmeraldが家ごとJean Jに吸い込まれてしまいそうな時、Angelが自分に言い聞かせるように ”This is worth it, right?"(俺たちって意味あることしてるんだよな?命を懸けるまでの価値があることをしてるんだよな?)とEmeraldに聞く。私はここでハッとしてしまった。人の命を巻き込んで、自らの命を削りながら逃げもせず、立ち向かい続ける。それは、何のために?だが、Angelの問いに対する、Emeraldの答えはもちろん"YES"である。兄妹がこのSpecatcle (見世物)をしっかりとフィルムに納める、ことはもはや金持ちになる以上の、「映画史を覆す」意味を持っているからである。

ちなみに、Angelが最後に助かった理由は、彼のインタビューにその理由が隠されているのではないかと思ったりもしている。

このインタビューでもそうだが、彼は重ね重ねJordanが自分のためにスクリプトを全て書き直した、と興奮しながら説明をし、「自分は日々の業務に飽き飽きしていて、何かが起きることを期待している、(裏のある)キャラクターを意識して演じた」と言っている。つまり、見世物のようなキラキラしたもの、とは少し遠ざかっていた(("Alien"ated")、それに彼は劇中で4年付き合った女優に振られたばかりである)人物が、「雲が動かない」ことに一番最初に気づいたり、機転を利かせてカメラを設置したりするのである。彼は、俗物となるのではなく、その一歩離れた視点により、消費される者と一線を介したのである。

2. Antlerが「お前たちはspectacleに値しない」と言いながら呑み込まれてしまう

サブ・キャラクターのAntlerは、いわゆるオカルト・UFOマニアの「白人の」写真家である。始めは「黒人の夢見がちな兄妹」に見向きもしなかった白人が、見世物が現れたとたんに、協力をし出す。そして最後には、しっかりJean Jの姿が撮影できたのにも関わらず、「自分がより良い見世物をとらえる」ためにspectacleにconsume(消費されて)されてしまうのである。

後に吐き出されたのは、フィルム…?しかし、彼の姿はないことになっている。まるで黒人のジョッキーのように。皮肉なものである。


個人的な考察②: 2.OJは生きているのか?Jordan Peeleのエンターテインメント性から読みとく

OJが生きているのかという謎は、各解説動画、インタビュー、またブログやニュースにて物議をかもしているが、あらかた「生きている」説が有力らしい。私も彼は生きているのではないかと思う。

彼が生きている理由は、Alienに追いかけられる描写がないからだとか、乗っていた馬の名がLuckyだったからだとか色々と説があるらしいが、私は、Jordan Peeleの生来のエンターテインメント性から、生きていると言いたい。

上記の記事にて、Jordanは、この映画は"Big Risk"であった、と言っている。

“All I know is that I need to start with a big risk. I need to start with something that I’m not supposed to do, something I don’t know if I can do yet. And then the project that comes from that is somewhat aspirational. With Get Out, it started with this notion of ‘I have to entertain, even if I have no money to do it.’ And so it has to be about the journey that I’m taking the audience on. That’s become what people expect from my movies, and so it’s been very important to preserve that sense of mystery.” (僕は今回、大きな懸けにでなきゃけないって知ってたんだ。何か自分がすべて気ではないこと、自分ができるって確証がないものに挑戦しないと、ってね。それからこのプロジェクトが野心的なものに変わっていったんだ。"Get Out"を撮影した時も、お金はないけど、「僕はみんなを愉しませたい」という気持ちから始まったんだ。だから、僕の映画は見てくれるみんなの気持ちを掴んでいくプロセスじゃなきゃいけない。そうしていくうちに、見てくれる人たちは僕の映画にそれを期待するようになるし、そこに「ミステリアスな要素」を常に持ち続けることは、とっても重要なんだ。)

Jordanは、もちろんRaceとは切っても切り離せないし、そのメッセージも映画史も、Spectacleに対する私達への問いも全て加味したうえで、この映画は、純粋なEntertainmentなのである。私たちが、OJが生きていたらどう思うか?それを何周も先に考えて、生きている、というHappy Ending(=黒人の映画史への刻印、完全なる勝利)に仕立て上げたのではないか、と思っている。彼のコメディはどこかダークで、どこかいつも明るいのである。見終わってから嫌な気分で終わったことなど、一度もない。

読者の皆様にも、Jordanのコメディの世界観を味わっていただくために、ここにいくつかおすすめのコメディshort clipを貼っておこう。

⑤Jordan Peeleのコメディとエンターテインメント性


① "Racist Suburbs"

数あるコメディで、最も現在のJordanの映画の作風に近い。


② "That One friend who makes everything awkward"

このコメディには、消費社会についての彼の考えが既に見て取れる。

③ "Is this guy Jordan's real father?

非常に風刺が効いていて、共感できる。

 

⑥Jordan Peeleの世界観:NOPEをどう捉えるか?

最後に、Jordan Peeleが、"Key&Peele"という、世界一有名といってもいいコメディDuoで名を確立した、生粋のコメディアンであることから、NOPEという映画をどう捉えたらよいのか、について少し触れたい。

これは、ホラー映画なのか?

YES.

*ちなみに、しっかり怖い。そもそもグロいし、印象的な音や空間の使い方、「当たり前のものを怖く描く作風」は非常に巧妙である。

これは、SF映画なのか?

YES.

これは、現代風刺なのか?

YES.

この映画を、どう捉えるのが正解なのかは、個人の感覚によるのかもしれない。純粋にオカルト好き、SF好き、はたまた純粋にJordanの過去作やコメディが好き…。どんな理由であれ、この映画は、見る物がどれだけ深く考えたいか、何も考えずに楽しみたいのか、によって大分捉え方が変わってくるとはっきり言える。

ただ、何かしらのこのある意味Jordan Peeleの「見世物」に私達の身体は反応するはずである。

もしかしたら、Jordanはこの映画で、私達をしっかり楽しませてくれるとともに、私たちが現代に溢れ発展しすぎた「見世物」に対して、どの立場に立つのか?その視点への再考を、私達に訴えかけているのかもしれない。


何と言っても、この映画は"None of planet earth"、(この地球のものではない)なのであり、「初めてそれを見る者」の印象によって語られ方が変わるのであるから。


▶参考文献(後に推敲予定)

トプ画

・その他記事

・https://www.nytimes.com/2022/07/22/movies/nope-horse-in-motion-eadweard-muybridge.html

・https://collider.com/nope-alien-jean-jacket-explained/

・https://www.mixedarticle.com/jean-jacket-in-nope-movie

・https://www.hitc.com/en-gb/2022/07/25/who-is-jean-jacket-in-jordan-peeles-nope-ufo-inspiration-explained/

・https://collider.com/nope-deconstructs-what-it-means-to-be-alien/

・動画

・https://youtu.be/I-KJ-BkuTJE

・https://youtu.be/A26P1TuPugs

・https://youtu.be/__SNN6xpFx4

・https://www.youtube.com/watch?v=xEBeLPraxnw


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