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母と父、30年の仲だけど

「ねえこれやっておいて、って言ったじゃん!!」

母は自分がイライラしているときや、父のいつもの悪い癖を見たときに強く父を非難する。父はおだやかな人でおまけに嫌なことはけろっと忘れてしまう性格のため、ばつが悪そうにちょっと笑って黙り込む。

母と父は今年で結婚生活27年目だ。母は父をよく非難するが、仲はそこまで悪いわけではない。結婚とは忍耐、とどこかで聞いたが、24歳の私にはどんなものなのか到底わかるはずもない。お互いが好きで、子どもを二人も作って家庭を持つことに合意をしたほどの仲が、27年も続くと、惰性に変わってしまうのだろうか。今となって母は些細なことで腹が立つと声を荒げている。人を怒鳴ることは、人を傷つける。その場にいた周囲の者たちの気分を悪くする。人を怒鳴ることでいいことなんて一つもない。いったん深呼吸をすれば、少し声のトーンを落とすことくらいできる。だが私は、お母さんやめなよ、とかもっと優しく言いなよ、とは言えない。30年近く一緒にいて、27年間夫婦でいて、暗黙の了解とか、信頼とか、そういうのがあるのかもしれない。私にはわからないことが多すぎる。だけど、私はこう思う。

お母さん、お父さんがまだ好きなのかな。

お父さんがもし明日死んだら、今日お父さんに怒ったことを後悔しない?

自分が大切に思うその目の前の人が、明日死んだら、今日自分がその人にしたよくないこと、いったこと、全部思い出して悲しくなったりしないかな?

一緒に生活していると、母が父のことを気にかけていることは、良く伝わってくる。だけど、やはり態度や行動だけでは伝わりきらないことがある。言葉は時に人を傷つけ、時に救う。気分屋で短気な母だが、27年分の愛情を、感謝を、どうやって父に伝えているのだろう。もし私が時々聞く強い言葉が父の中に残ってしまっているとしたら?

時には素直になって、言葉で伝えなくては。

お母さん、きっとできる。一緒にやろう。

私は、私がお母さんにできることも必死になって考えるからさ。

人が人に与える影響を、つい考えさせられるこの頃である。

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