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子どもたちを「香り」から守る

どうもしろやぎ保育書房です(動画解説はこちら

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今日は、香り、について。皆さんは、良い香り、が好きではないでしょうか。

良い香りは心地よいだけではなく、
例えば、レモンの香りは集中力を高めてくれるし、ラベンダーの香りにはリラックスの効果があります。
しかし、このようなハーブや植物由来の香りではない、人工的に作られた「香料」というものには注意を払う必要があります。
特に、今問題視されているのが、香りが強すぎる柔軟剤です。
ここ10年で柔軟剤がブームになり、良い香りがする柔軟剤を使って洗濯する家庭が増えました。

香りが強すぎる柔軟剤の第1の問題点は「匂いが強すぎる事」です。

人間には「馴化」と呼ばれる、匂いに適応していく能力があると言われています。
自分の匂いを嗅ぎ過ぎていると、もう自分の匂いなんてわからなくなるじゃないですか。

あと、たまに、街でものすごく強い香水の匂いを放っている方もいますよね。
あれは、もう自分で自分の匂いに慣れちゃって、自分の匂いが分からなくなっちゃってるんですね。慣れちゃうと、匂いがしてないんじゃないか、と思い、より強い匂いを求めていくんです。
柔軟剤でも、少しずつ匂いの強いものを選び、変えていく、という方が出てきています。
そして、そんな匂いの強すぎる柔軟剤で洗った服を、毎日子どもたちが着ている、ということに現代の課題があります。
東海大学副学長で医学部長 坂部貢(さかべこう)医学博士は、このように指摘します。

「においの強すぎるものを子どもが反復して使うと、脳の発育や正常な発達に影響を与える場合がある」『エデュカーレno.91』汐見稔幸・責任編集

保育の世界では「子どもの五感の育ちを大切にしよう」とよく言われます。
しかし、そういうのであれば、この強すぎる匂いから子どもたちを守る、ということも私たちは十分に考えていく必要があるのではないでしょうか。


そして、香りが強すぎる柔軟剤の第2の問題点は「日常的に化学物質を吸引してしまうこと」です

この柔軟剤に使われている人工的な香料ですが、洗ってすすいでも、そして干して乾燥させても、まだ匂いが残っています。
これは、水に溶けずらい「有機溶剤」を用いているためです。柔軟剤の香料は水に溶けず、衣類に残り、ゆっくりと蒸気に変わって拡散されます。

また、長く匂いを保つために、マイクロカプセルと呼ばれる技術も登場しました。
このマイクロカプセルとは、マイクロプラスチックの1種です。
小さな小さなプラスチックの中に香料を閉じ込めて、このカプセルが衣擦れ等で割れることにより香料が放出されます。
カプセルが割れるたびに香料が放出されるから、匂いが長続きする、というわけです。

このように、香りを長く続かせるための技術がこめられた柔軟剤ですが、
水に溶けずらい有機溶剤というものは、基本的に毒性が強い事が指摘されています。
また、マイクロカプセルは、マイクロプラスチックということで、海洋汚染や人体への影響も懸念されます。

大人と子どもは飲み薬の量や回数を分けるのが当然です。
また、子どもに添加物の少ない食事を用意する事に力を入れている家庭もいらっしゃるかと思います。
しかし、このように薬や食事を調整していても、空気中にある人工の香料は調整ができません。大人も子どもも関係なく、みんなが等しく吸収していくことになります。

岡田幹治さん(元・朝日新聞社ワシントン特派員)は、

「香料の中にはアレルギーの原因、喘息を誘発するものが含まれている」『香害ーそのニオイから身を守るには』岡田幹治著

と指摘します。
市販の柔軟剤の成分表には「香料」とだけ書かれ、約3000種類以上ある香料の、何が何種類使われているのかは書かれていないことも多いです。

私たちが「良い香りだから」と使っている柔軟剤でも、
その中に、毒性の強い有機溶剤。人体への影響が懸念されるマイクロプラスチック。そして子どもたちのアレルギーや喘息を引き起こす香料、が含まれている可能性があることを忘れてはいけません。


もう十分に怖いのですが、
香りが強すぎる柔軟剤の第3の最後の問題点は、香りによる害「香害」です。

いま深刻な社会問題になっているのが、人工的な化学物質によって引き起こされる体調不良。いわゆる化学物質過敏症です。

みなさんも、匂いが強すぎる香水、制汗剤、ヘアスプレーを吸って気分が悪くなった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それの比じゃない。
一度この化学物質過敏症が発症すると、ほんの少しの化学物質を吸引しただけで、
頭痛や吐き気、めまい、咳等の症状が表れます。
 化学物質過敏症になると、公共交通機関を使うときには防毒マスクをつけなければ乗車も出来ません。
 毒ガスから守るマスクをつけていることで、好奇の目で見られることも多いです。
 また、誰かの柔軟剤の香料が自分の衣服についてしまうので、電車のシートにも座れません。
 外食や買い物、仕事や勉強、生活における様々な事をする事さえ簡単ではなくなるのです。
 この化学物質過敏症が原因で、仕事を辞めたり、学校に通えなくなったりした方もいると言います。

 近畿大学の東賢一准教授らの調査(2012)では、
 この化学物質過敏症の方は全国に約100万人いると言われています。
(RKB熊本毎日放送、2020/12/02放送)

 この化学物質過敏症は、柔軟剤が登場した10年前に誕生し、今も年々増え続けていることから、柔軟剤に含まれている香りが、大きな要因になっている、と指摘する専門家が多いです。
 花粉症の症状と同じく、
「一度発症するとごく微量で反応し」
「誰でも発症する可能性があり、突然発症する」
そして「一度発症すると感知する方法はない」と言われています。
 そして、化学物質過敏症については、専門家やお医者さんが少なく、発症のメカニズムがわからず、まだまだ科学的根拠が乏しい現状です。
 そのため企業が成分を見直したり、国が規制に乗り出したり、こういった流れがまだまだ起きずらいようです。


 私たち保育者にできることは、出来る限り子どもたちを強い香りから守ることではないでしょうか。
 たとえば、自分の服の洗剤や柔軟剤を見直したり、制汗剤を無香料にしたり、トイレの芳香剤を変えて見たり。
 そして、強すぎる柔軟剤を使いがちな保護者に情報提供をしてみたり。
 とこのように、考えてみると香りを守るためにできる事は、結構たくさんあるのではないかな、と思います。

 みなさんには、子ども達の安心安全、そして健康な身体づくりの為に、「強すぎる香りを見直す」ということをおススメします。


本日の参考文献は『エデュカーレno.91』
汐見稔幸責任編集、臨床育児保育研究会発行でした。

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