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数枚の写真【毒親・第7話】

小1の半ば頃から殆ど帰宅していなかった母が、刃傷沙汰の事があってから毎日帰ってくるようになった。

帰ってくるといっても、真夜中に帰ってきて寝て、その日の夕方に出て行く。


僕はなるべく母と同じ空間にいたくなかったので、毎日スーパーに寄って買い物して時間をつぶした。


放課後は友達と遊びたかったけど、17時過ぎに母が出勤するタイミングで帰宅して、家事の合間に宿題して…

とにかく母に気持ちよく仕事にいってもらうように、

なるべく母と顔を合わさないように、

母とトラブルにならないように気を遣った。



夜中に帰ってくるので、寝る前には必ず「護身用バット」が玄関に1本ある事を確認して、もう1本は寝床に必ず置いて寝た。


母が帰ってくると、どんなに眠くても必ず目が覚めた。


母の寝息が聞こえるまで、刃傷沙汰の記憶が脳裏を巡って眠れなかった。


そんな日々を過ごしながらも何事もなく小2になった。


まもなく、また母が外泊して数日家を空けるようになった。


小1の時は家に誰もいない事が寂しかったが、刃傷沙汰があってからは独りで家に放置されているほうが心が休まる事がわかった。


でも何日間かしたら帰ってくるので、いつ帰ってくるのかとビクビクしながら毎日過ごした。


ある日、買い物するためのお金が無くなってきたのでタンスを漁っていた。


すると写真が数枚出てきた。


愛人と写っている写真…

母の下着姿の写真…


気持ち悪くて吐きそうになった...

同時に見た事がバレたら、また刃傷沙汰になりかねないと危機感を覚えた。


なるべく元の状態に戻した。

そして、いつ帰るのかわからない母に対して怯える日々を過ごした。

財布に残った僅かなお金で、毎日パンを食べて過ごしていた。

2、3日して母が帰ってきた。


夜中だったが、扉に鍵を差し込む音で目が覚めた。

寝床の傍に金属バットがあるのを確認しながら、

無機質な感じで「おかえり。」と言った。

母は少し上機嫌な声色で「ただいま。」と返してきた。


何か良い事があったような感じだけど油断は出来ない。

写真を見たやろ?なんて逆上するかもしれない。

僕はもう、金属バットを握りしめる寸前だ。


「あれ?写真みた?」


気付かれた…

もう人生終わった…


母は写真を持って小走りにやってきた。


もうダメだ…

絶望の淵に陥りながらも、どうやったら母に勝てるのか…

残酷なほど冷静に考えていた。





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