お父さんと一緒に暮らさないか?【毒親・第3話】

小学1年生の終わりごろ

母が勤め先のラウンジの仕事が忙しく、数日家を空けていた時の事だった。

スーパーの弁当を食べながら、テレビを観ていると家の鍵がガチャっと開く音がした。

母が仕事から帰ってきたのだと思っていると、懐かしい声がした。

「志郎、元気か?」

ふと玄関に目をやると父がいた。

寂しがり屋の弟が父の足にしがみついていた。



僕が弁当を食べているのを見て、父は言った。

「お母さん、御飯をちゃんと作ってくれているのか?」

「学校には休まず通えているのか?」

いろいろ聞かれたけど、あまりに突然すぎて返事が出来ない。


最後に父はこう言った。

「お父さんと一緒に暮らさないか?」


僕は迷った…

母から「女の人つくって出て行ったお父さんを憎め!」と言われてきたから。


でも、母が仕事で数日家を空けるようになって

学校から帰った後は一人で過ごす日々が続いていて、とても寂しかった。


それから母が男の人と一緒に写っている写真を見つけてしまった事…

母は店のお客さんだと言ったけど、子供ながらにそれは正しい事じゃないと不審に思っていた。


「向こうの家には、弟も、向こうのお兄ちゃんもお姉ちゃんもいる。」

「もう志郎が寂しい思いをする事はない。」

「御飯もちゃんと料理したものを、好きなものを食べられるぞ。」

そう言う父の言葉に幼い僕の心は揺らいで、父について行った。

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