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木造構造設計のお約束

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木構造の特殊なルールを、気がついた順に書き連ねていきます。
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#構造計算

耐震等級3を信じるな

耐震等級3を信じるな

おはようございます。DJしろなまずです。
私の事務所では、構造計算で耐震等級3を取得することが多いのですが、別にお客様に強く推奨しているわけではありません。取得に関してはお客様の任意です。ただ事前に無断で構造計算してしまう癖があるので、できあがったら耐震等級3をクリアした建物だった、なんてことはよくあります。

しかし、この耐震等級3はくせ者です。そもそも「建築基準法(耐震等級1)の1.5倍の強さ

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二日目 詳細入力と計算テクニック ~夏休みにHOUSE-ST1で木造構造計算をマスターしよう~

二日目 詳細入力と計算テクニック ~夏休みにHOUSE-ST1で木造構造計算をマスターしよう~

 はい。モデルはきちんと出来ましたか?似たような形でも梁が繋がっていなかったり、ズレているだけで計算できません。拡大して見たりして確実に入力できているか?確認してみてください。

 では、2日目です。昨日入れたものは、ほぼ意匠設計者でもわかる内容だったと思います。ここからが本番です。構造計算では、建物をできるだけ実状にあった重量にする必要があります。それを本日やっていきます。そして基礎以外の計算を

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耐震等級3は本当に安心か?

耐震等級3は本当に安心か?

 ネット上では、構造屋さんを中心に木造住宅には耐震等級3が必要!という意見が多いです。私も耐震性を上げるのは賛成で、耐震等級3を取得することは、良いことだと思っています。そして耐震等級3相当といって、ただの壁量計算の壁量を1.5倍にした、耐震等級3ですらないものはなくなって欲しいと思っています。しかし次の3点で疑義があります。

・果たして耐震等級3という指標が適切か?複数の強度が違う指標があるの

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新築木造の壁量計算の変化 2025年改正を見据えて(2)

新築木造の壁量計算の変化 2025年改正を見据えて(2)

新築木造の壁量計算の変化 2025年改正を見据えて(1)
新築木造の壁量計算の変化 2025年改正を見据えて(3)

うだうだ言っても仕方が無いので、簡単なモデルで、
①通常の壁量計算(軽い屋根)
②ZEH等の壁量計算案
③構造計算(通常の軽い屋根)
④太陽光パネルなどを載っけた構造計算

を簡単に検討してみました。動画でも解説しています。

まあ、面積によっても違いますが、今回見る限り、比較的妥

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不整形の建物が多いからこそ、木造は構造計算すべき

不整形の建物が多いからこそ、木造は構造計算すべき

 私は、木造住宅は必ずしも構造計算は必要ないと思っています。しかし近年、複雑な建物が増えてきて、壁量計算では安全を確保できないケースも増えています。そこで上記の動画を作りました。

 プレカットの普及に伴い、技術がそれほどなくても上棟は可能になり、設計事務所や、施工会社の手間も減りました。しかし良いことばかりではありません。プレカットの仕口だと、柱は短ほぞで抜けやすいし、複雑な仕口もできません。基

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構造設計者が木造壁量計算の基準を暗記していない5つの理由

構造設計者が木造壁量計算の基準を暗記していない5つの理由

構造設計者と話していると、壁量計算知らない、という方が意外と多くいます。まあどんなものかは知っていても、方法を知らないとか、やったことがないとか。そんなのけしからん!という人がいるかもしれません。ここで構造設計者が木造壁量計算を知らない5つの理由を考えてみたいと思います。

その1 そもそも木造はやらない

 これが多いですね。そもそも構造設計者は、大きめな建物の構造計算・構造設計するのが主流でし

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手計算とHOUSE-ST1とKIZUKURIで簡単なモデルを構造計算し比較してみたら意外な結果に・・・地震力編

手計算とHOUSE-ST1とKIZUKURIで簡単なモデルを構造計算し比較してみたら意外な結果に・・・地震力編

ソフト毎に機能の差こそあれ、原則は同じ計算をしています。それは手計算も同様です。ただ複雑だったりすると「モデル化」の作業で差がでてきます。また設計者によって考え方も違うので、同じ建物でも同じ結果になるとは限りません。今回は簡単な木造2階建てモデルを、手計算と、HOUSE-ST1とKIZUKURIで構造計算してみた結果の比較です。使用したモデルは「建築士試験の知識でマスターする木造構造計算」のモデル

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個性的な危ない壁量計算 5つの事例

個性的な危ない壁量計算 5つの事例

 私はいろんな方の壁量計算を見て来ています。建築基準法は「最低の基準」を定めているのだから、最低限壁量計算を行っていればその基準はクリアしているはずなのですが、中には個性的なもの、あぶないなと思う物があります。

その1 壁量計算の基準のギリギリに合わせて設計してくる物

 まさに芸術的に、基準に合わせてきています。まあそんなところに神経使わなくてもいいと思いますが。そのために配置などが結構アンバ

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フロッキン狭小壁

フロッキン狭小壁

 木造住宅を設計していると、耐力壁が邪魔で開口部(窓)を広く取れないなと悩む事が多いです。ビルトインガレージも同様です。木造の耐力壁は基本的に90㎝(面材なら60㎝)を基本としているので、結構壁が大きくなります。狭小住宅ならなおのことです。

 そこで、フロッキン狭小壁の登場です。ダイドーハントと栗山百造の狭小耐力壁製品で、比較的簡易に木造住宅に組み込むことができます。柱芯間の寸法は350㎜が可能

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プレカット図よりも構造計算すると梁サイズが大きくなるのはナゼ?

プレカット図よりも構造計算すると梁サイズが大きくなるのはナゼ?

木造2階建ては、基本的に構造計算していません。本来なら設計者(=建築士)が伏図まで書いて設計するのが筋なのですが、現在はプレカットという便利なものがあって、間取り等を送ると伏図を作ってくれます。

悪しき風習で若手建築士のなかでは、伏図が書けないどころかチェックもできない方もいます。分業とはいうものの悲しいものです。

さて、我々もプレカットを先に出して貰うことは多いのですが、その図面に書かれてい

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木造構造設計のお約束 その2

木造構造設計のお約束 その2

今日も、木構造ならではのお約束的なルールを書いていきます。

まず、ルート1なのに偏心率が要求されます。ルートとは、これも構造計算的な用語ですが、計算のやり方のことで、基本はルート1、ルート2、ルート3があります。数字が大きいほど複雑かつ精緻になってきます。RC造やS造のルート1は、偏心率は要求されません。簡易な計算です。ただ木造では、構造計算では偏心率が要求されます。しかもルート2以降は0.15

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