泣いちゃう人、と、それに怒る人

 「大の大人が人前で泣くな」みたいな主張、すごい。

 「大」と「人」が違う読み方で二回出てる……のもすごいと言えばすごいけどそこじゃなくて。

 なんか、「その人が人前でない場所(トイレとか、自室とか)で泣いた、氷山の水面下の部分」を一切合切無視してる感じがすごい。自分の見える世界しか存在してないと思ってそうな感じ。

 それに対して怒ることは正当だと思ってそうなところもすごい。怒りも悲しみも同じ感情なのに、お前の涙はキモい、俺が怒って大声をあげるのは問題ないみたいな態度。

 まず生理現象にそこまで目くじら立てられるのがすごい。こういう奴の祖先が女性の生理のことを「穢れ」とか呼んだのかな。

 もっとすごいと思うのは、「泣けば許されると思ってんのか!」みたいなセリフ。思ってませんが。以上。

 このセリフは、相手の涙が自分のためにあるという発想が根底にあるから本当にすごい。「こいつが泣いているのは俺に媚びてるから」って、挨拶してくれたからあの子は俺のことが好き、レベルの勘違いだろ。自意識過剰とすら思う。

 少なくとも私は、自分以外の人間のために感情を消費することを好まない(相手ありきの感情が苦手。怒るとか憎むとか愛するとか)ので、泣けば許されると云々みたいな言葉が昔から理解できない。

 落涙とは祈りだと思う。救いを求めるそれとはちょっと違って、自分の中にある悲しみをただ想うだけの営み。

 理解できなくても、無関心でいてほしい。イスラムっぽい服装をした人がある一方向を向いて手を合わせていても、気にもとめないように。

 でもなー言う側の立場も全くわからないわけじゃないんだよなー。泣かれたら怒りにくくなるのは事実としてあるだろうし。

 私は感情がキャパオーバーしたら泣いて、あなたはそれでも変わらずに怒り続けて、世界がその一連の流れを全部許してくれたらいいのだけれど。でも客観的に、泣いてる人間に怒鳴る人の絵面がよろしくないよな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?